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悪役令嬢と精霊の祭壇

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「えっ?グリード様の妹君ですか?」

 びっくりして、問いかけると、聖女様は曖昧な微笑みを浮かべた。

 金の瞳に緩やかな金の髪、グリード様と同じ色彩の、でもグリード様よりも幼い少女ー
 16歳と聞いた。グリード様が30歳と聞いたから、ずいぶんと歳の離れた妹さんだ。

「私は聖女に認定されたときに家とも親兄弟とも離され、ただの聖女となりましたので、聖女のお役目を終えるまでは、兄とは呼べませんが」

「そうなのですね。お役目はいつまで?」

「次の聖女様が現れるまでです。私の前の聖女様は3年だったそうですが、私は現在3年目ですので、少なくとも4年は・・・」

 そうか。今年の魔力検査は終わってるから、来年の新入生に聖女が現れなければ、また1年後を待つことになるのか。

 私たちは今、聖女様の私室にお邪魔している。
 表向きは、魔法省トップであるグリード様の聖女様へのご機嫌伺い兼、最近の精霊騒動への報告だ。
 応接室で会うと教主様が訪れる可能性があるので、私室へと招かれた。

 聖女様の家族であるということで、グリード様が私室へ訪れることは度々あるらしく疑われることはなかった。

 どうやら、この日、教主が王宮へと出かけるらしい。
 それを待って、祭壇へと向かう手筈になっている。

「アイリス様は・・・アイリス様とお呼びしても?」

「もちろんです」

「多くの神様方のお力を宿しておいでなのですね」

 さすがは聖女様だ。あっさりと私が普通の人間でないことに気づかれた。

「聖女様、彼女は聖女ではないのですか?」

 グリード様が尋ねられる。・・・自分の妹なのに、名前ですら呼べないなんて。

「聖女ではありません。アイリス様の持つお力は、私たち聖女とは別のものです」

「そうですか」

 グリード様は多分、私に聖女の資格が有れば、妹さんを解放できるのにと思われたのだと思う。
 私はそれを責めるつもりはない。誰でも、赤の他人より自分の身内を大切に思うのは当たり前だ。

 結界の維持については、詳しく聖女様にお聞きしないと術式とかわからないから断言はできないけど、私ができないこともない気がする。
 ただ、私は囚われるつもりもないし、聖女になるつもりもない。

 大体、私は聖女という理からは外れている。聖女が短い周期で代替わりするのは、その結界維持の大変さもあるが、聖女は純潔であることを求められるからだ。
 そのあたりを聖女に力を与えている神様がどう考えているのかは知らないが、婚期を逃さない程度には代替わりしているようだ。

 その理からいくと、私は聖女にはなれない。逆に、力を知られた場合、代替わりする必要のない『道具』として永遠にこき使われる可能性がある。

 だけど、グリード様とも親しくなった身としては、できることなら聖女様、いやグリード様の妹さんを解放してあげたいとは思う。
 教会のあと、王宮の精霊を解放したら、女神様に相談してみよう。
 おそらく、向こうからコンタクトを取ってくるはずだから。
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