悪役令嬢は執事様と恋愛したい

みおな

文字の大きさ
76 / 101

悪役令嬢と聖女《グリード視点》

しおりを挟む
 ミチェランティス皇国の神殿は、王都中央に位置している。
 真っ白なその建物は全ての民が訪れ、祈りを捧げる教会と、その奥、聖女と呼ばれる者や教主などの限られた人間のみが立ち入れる神殿で構成されていた。

 今回の目的地は、神殿の最奥にある祭殿だ。そこに入れるのは、聖女と教主のみ。
 教主にアイリス嬢の存在を知らせずに祭殿へ向かわせるには、聖女の協力なくしては無理だった。

 現聖女は16歳の少女だ。3年前に聖女になった。
 聖女は国の要。国に悪意の持つ魔物が攻め入らないよう結界を張り続ける。
 人々の怪我を癒したりする光の魔法持ちは、多くはなくとも何人も存在するが、聖女は常に1人だ。新しい聖女が誕生するときは、前聖女が力を失う時である。

 3年前、学園に入学する際の魔力検査で、水晶が虹色に輝き、聖女と認定された。
 それ以来、元の名は封印され、聖女と呼ばれる存在になった。
 再び、その名を名乗れるのは、新たな聖女が現れたときだ。
 家も家族も友人も、自由さえも全て奪われて、ただ国のために祈る存在、それが聖女なのだ。

 もちろん、聖女の役を終えた後は、多くの褒賞を与えられ、王族の降嫁と同じ扱いを受ける。
 それが1年後なのか10年後なのかはわからないというだけだ。

 アイリス嬢は聖女ではない。
ライナスに聞いたところによると、その光は全てが混じり合ったような複雑なものだったそうだ。
 そんな色を見たことは1度たりともないし、ライナスもないと言っていた。

 アイリス嬢に会い、精霊の森に赴いた時、初めてその理由が分かった気がした。

 彼女は聖女などではない。それよりももっと複雑な、そんな大きな力を秘めている。

 この存在を知られれば、国や教会に囚われ、一生飼い殺しにされる。
 そして、それを防ぐために、目の前の青年はこの国を滅ぼそうとするだろう。

 ライナスから、アイリス嬢が隣国の高位貴族であること、そして隣国国王もアイリス嬢をえらく気にかけていることを聞いた。アイリス嬢に何かあれば、間違いなく戦争になる。
 そして何より、目の前の青年の手によってこの国は滅ぶだろう。
 そう思わせる力を、彼が秘めていることに、俺もライナスも気づいていた。

 もしも、アイリス嬢が力を貸してくれれば、聖女を解放できるかもしれない。
 だが、他国の、まだ14歳の少女にそれを強いることはできない。
 もう3年も聖女の任に就いている少女を救うために、他の人間に苦痛を強いてはいけない。
 たとえそれが、最愛の妹だったとしてもー

しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた

22時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。

香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。 皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。 さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。 しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。 それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?

桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。 だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。 「もう!どうしてなのよ!!」 クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!? 天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?

虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
伯爵家である私の家には両親を亡くして一緒に暮らす同い年の従妹のカサンドラがいる。当主である父はカサンドラばかりを溺愛し、何故か実の娘である私を虐げる。その為に母も、使用人も、屋敷に出入りする人達までもが皆私を馬鹿にし、時には罠を這って陥れ、その度に私は叱責される。どんなに自分の仕業では無いと訴えても、謝罪しても許されないなら、いっそ本当の悪女になることにした。その矢先に私の婚約者候補を名乗る人物が現れて、話は思わぬ方向へ・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

悪役令嬢になったようなので、婚約者の為に身を引きます!!!

夕香里
恋愛
王子に婚約破棄され牢屋行き。 挙句の果てには獄中死になることを思い出した悪役令嬢のアタナシアは、家族と王子のために自分の心に蓋をして身を引くことにした。 だが、アタナシアに甦った記憶と少しずつ違う部分が出始めて……? 酷い結末を迎えるくらいなら自分から身を引こうと決めたアタナシアと王子の話。 ※小説家になろうでも投稿しています

処理中です...