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第三章 第四の女
10-1.日葵の見た夢
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けたたましく鳴り響く目覚ましの音に、ヒマリは目を覚ました。
反射的にそれを止め、なんだか懐かしく感じる自分のベッドの感触にうっとりと脱力する。
「日葵! いつまで寝てるの!」
階下から聞こえる母親の声に日葵は上体を起こす。
棚の上のデジタル時計が示す時間はは7時を回った所だった。
(あ、朝ご飯食べて学校行きゃなきゃ!)
日葵は当たり前の日常を思い出し、ベッドから抜け出した。
学校に向けて、5年間通いなれた通学路を歩く間、妙な違和感が日葵に付きまとっていた。
「でさ、信じらんないっしょ?!」
「…アホでしょ」
「え、アホはひどくない…?」
知らない中学生の三人組が楽しそうに談笑しながら横切る。
そのうちの一人と、日葵は目が合って立ち止まった。
「どうしたリリカー! 行くぞー!」
「なんでもないってー!」
駆け出した中学生は角を曲がって直ぐに見えなくなった。
奇妙な感覚に、日葵は首を傾げる。
そこから、学校はすぐそこだった。
「私は合気道のほうを応援してたけどなぁ…」
「え、空手かっこいいだろ! 稲妻見えないのか?!」
教室に入ると友達の雪乃と珊瑚が流行りの漫画について話していた。
あのキャラがカッコいいとか、あのシーンが好きとか、昨日もしていた筈の会話がなんだか暖かい。
「おはよう、日葵!」
「おはよう日葵ちゃん」
昨日見たはずの二人の顔がどうも懐かしく思えて堪らない。
「…おはよ」
「え、なんで泣いてんだ?」
「…なんかあった?」
意味も分からず溢れ出した涙を、日葵は眠いだけとごまかした。
雪乃が差し出してくれたティッシュで目じりを拭き、今日はなんかおかしいなと頭を捻る。
「はい、おはようございます。席についてくださーい」
担任のソフィア先生が入ってくる。
優しくて奇麗な、誰からも愛される先生だ。
変わらない先生の姿に、どこか日葵は安心した。
「…あら、雪乃ちゃん体調悪いの?」
「え、なんで分かったんですか? 確かに…今朝からちょっと頭痛が…」
雪乃の顔を見たソフィアがつぶやく様に言うと、雪乃は驚きの表情を作った。
「ううん、ちょっと顔色が悪かったから。無理しないでね」
横目に見ても、雪乃の顔に違いは日葵には分からない。
それは幼馴染の珊瑚も同じようで、感心した表情をしていた。
やっぱり…、すごいな、ソフィア先生。
教室のあちこちから、ソフィア先生の観察眼を称える声が上がった。
日葵はなんだか自分の事の様に嬉しくなった。
今日の学校はなんだかよく分からないけど楽しくてしょうがなかった。
帰り際、ソフィア先生と目が合うと、先生は日葵に優しく微笑んだ。
その顔があまりにも奇麗で、日葵は赤面する。
「日葵ちゃん…ソフィア先生が好きなの?」
雪乃の囁きに、日葵はビクッと反応する。
「え…! 何言ってるの…女の子同士じゃん」
「今日…なんかずっと見てたもん…」
雪乃の指摘に、そんなことないよと誤魔化して歩き出す。
後ろから背中を叩かれ、日葵は振り返った。
「鐘まで遊ぶぞ!」
珊瑚の屈託のない笑顔に、日葵は釣られて笑った。
途中道ですれ違った、車椅子の女の子を押していた金髪の高校生を見て、日葵は立ち止まった。
それに気が付き、高校生も日葵を見つめる。
「どうしたのアリスン」
「…ん? …いや。なんだろう」
「…ふふ。変なアリスン」
高校生はニコッと日葵に微笑むと、日葵達とは反対方向に進んで行った。
「知り合いかー?」
珊瑚の問いに日葵はかぶりをふった。
いつも行っている公園は、学校と家の間ぐらいにあった。
ブランコへと駆け出す珊瑚を見ながら、日葵は思い出したように鞄から水筒を取り出した。
そういえば、今日は一口も飲んでいなかった。
せっかく母親が毎朝用意してくれた麦茶だ。
日葵は水筒に口に付けて、ぐいっと飲み込む。
「…! …ぅっ…?」
嗅いだことのある独特の匂いに日葵は顔をしかめた。
(なんだっけ、この匂い)
日葵は目を閉じて、深い思案に耽った。
反射的にそれを止め、なんだか懐かしく感じる自分のベッドの感触にうっとりと脱力する。
「日葵! いつまで寝てるの!」
階下から聞こえる母親の声に日葵は上体を起こす。
棚の上のデジタル時計が示す時間はは7時を回った所だった。
(あ、朝ご飯食べて学校行きゃなきゃ!)
日葵は当たり前の日常を思い出し、ベッドから抜け出した。
学校に向けて、5年間通いなれた通学路を歩く間、妙な違和感が日葵に付きまとっていた。
「でさ、信じらんないっしょ?!」
「…アホでしょ」
「え、アホはひどくない…?」
知らない中学生の三人組が楽しそうに談笑しながら横切る。
そのうちの一人と、日葵は目が合って立ち止まった。
「どうしたリリカー! 行くぞー!」
「なんでもないってー!」
駆け出した中学生は角を曲がって直ぐに見えなくなった。
奇妙な感覚に、日葵は首を傾げる。
そこから、学校はすぐそこだった。
「私は合気道のほうを応援してたけどなぁ…」
「え、空手かっこいいだろ! 稲妻見えないのか?!」
教室に入ると友達の雪乃と珊瑚が流行りの漫画について話していた。
あのキャラがカッコいいとか、あのシーンが好きとか、昨日もしていた筈の会話がなんだか暖かい。
「おはよう、日葵!」
「おはよう日葵ちゃん」
昨日見たはずの二人の顔がどうも懐かしく思えて堪らない。
「…おはよ」
「え、なんで泣いてんだ?」
「…なんかあった?」
意味も分からず溢れ出した涙を、日葵は眠いだけとごまかした。
雪乃が差し出してくれたティッシュで目じりを拭き、今日はなんかおかしいなと頭を捻る。
「はい、おはようございます。席についてくださーい」
担任のソフィア先生が入ってくる。
優しくて奇麗な、誰からも愛される先生だ。
変わらない先生の姿に、どこか日葵は安心した。
「…あら、雪乃ちゃん体調悪いの?」
「え、なんで分かったんですか? 確かに…今朝からちょっと頭痛が…」
雪乃の顔を見たソフィアがつぶやく様に言うと、雪乃は驚きの表情を作った。
「ううん、ちょっと顔色が悪かったから。無理しないでね」
横目に見ても、雪乃の顔に違いは日葵には分からない。
それは幼馴染の珊瑚も同じようで、感心した表情をしていた。
やっぱり…、すごいな、ソフィア先生。
教室のあちこちから、ソフィア先生の観察眼を称える声が上がった。
日葵はなんだか自分の事の様に嬉しくなった。
今日の学校はなんだかよく分からないけど楽しくてしょうがなかった。
帰り際、ソフィア先生と目が合うと、先生は日葵に優しく微笑んだ。
その顔があまりにも奇麗で、日葵は赤面する。
「日葵ちゃん…ソフィア先生が好きなの?」
雪乃の囁きに、日葵はビクッと反応する。
「え…! 何言ってるの…女の子同士じゃん」
「今日…なんかずっと見てたもん…」
雪乃の指摘に、そんなことないよと誤魔化して歩き出す。
後ろから背中を叩かれ、日葵は振り返った。
「鐘まで遊ぶぞ!」
珊瑚の屈託のない笑顔に、日葵は釣られて笑った。
途中道ですれ違った、車椅子の女の子を押していた金髪の高校生を見て、日葵は立ち止まった。
それに気が付き、高校生も日葵を見つめる。
「どうしたのアリスン」
「…ん? …いや。なんだろう」
「…ふふ。変なアリスン」
高校生はニコッと日葵に微笑むと、日葵達とは反対方向に進んで行った。
「知り合いかー?」
珊瑚の問いに日葵はかぶりをふった。
いつも行っている公園は、学校と家の間ぐらいにあった。
ブランコへと駆け出す珊瑚を見ながら、日葵は思い出したように鞄から水筒を取り出した。
そういえば、今日は一口も飲んでいなかった。
せっかく母親が毎朝用意してくれた麦茶だ。
日葵は水筒に口に付けて、ぐいっと飲み込む。
「…! …ぅっ…?」
嗅いだことのある独特の匂いに日葵は顔をしかめた。
(なんだっけ、この匂い)
日葵は目を閉じて、深い思案に耽った。
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