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第三章 第四の女
末章.魔王リザネ
しおりを挟む静まり返った魔王城、謁見の間に複数の足音が響く。
玉座に座る魔王リザネは一行を見据えるとフンと笑った。
ターシェはリザネの乳首から口を離し、足音の方を見た。
「あ"っ…?! え"っ…?!」
冷たい目でターシェを見て舌なめずりするソフィアを見て、ターシェはガタガタと震える。
必死に目を泳がせ数秒で思案した結果、ターシェは親指を握りしめてグーを作るとリザネに殴り掛かった。
「ということだ魔王!! 死ねェ!!! グッフゥ!!!!」
激しい雷に打たれ、ターシェはきりもみしながらソフィアたちを飛び越えて入口の上の壁に激突してずり落ちた。
一行はそれを目で追い、冷たい目で黒焦げでサムズアップするターシェを確認すると何事も無かったかのように魔王に視線を戻した。
「よく来た…勇者とその一行よ。余の想像より少し早くはあるのじゃが…まあよい。古の定めに従い死合おうぞ…!」
誰よりも早くココアが飛び掛かる。
高温のブレスを吐き出すと、玉座ごと閃光の海に沈めた。
「ほう…ダークドラゴンの眷属か…。筋は悪くはないが経験が浅いな…」
リザネはマントの煤を払い、涼しそうに言う。
「行くぞリリカ!」
「わかった!合わせる!」
アリスンが叫ぶと音速の勢いで踏み込み間合いを詰める。
同時にリリカの詠唱した氷の刃がリザネに迫る。
リザネは右手でアリスンの剣を掴み、左手で氷の刃を掴むと腕だけの勢いでそれらを放り投げた。
アリスンは空中で一回転し姿勢を正して着地する。
「大魔法使いリリカ…そして白き騎士アリスンか…面白い余の配下にしてやってもよいぞ」
アリスンは鼻で笑って剣を構え直す。
半歩横にずれると死角からヒマリが飛び掛かった。
「奥義を使ってみます…!」
ヒマリがアリスンの前に出て剣を構える。
大上段に構えた剣は風を纏い、光の軌跡を纏っていた。
「セェェェェッッ!!!!」
轟音とともにリザネにヒマリが斬りかかる。
リザネは閃きの元に大きく横に飛んで躱した。
リザネが先程までいた空間は抉れたように消し飛んでいた。
「ん…?! 流石は勇者ヒマリじゃ… 受けていれば余も無事ではなかったやもしれん」
隙をついて後ろを取ったソフィアはリザネのスカートを掴んでずり下げようと試みたが、手を掴まれ阻まれた。
「何をしておる、聖女ソフィア……ん? おぬしどこかで??」
リザネが目を凝らしてソフィアの顔を見る。
ソフィアは目を泳がせながら、顎をしゃくらせて呟いた。
「い……いやぁ~。 オラ(↑)は魔王なんて知らねぇズラぁ~… 嬢ちゃんエロいケツしとるズラなぁ~…」
「すごいしゃくれておる…。 パーヘス…? お主、魔四柱パーヘスじゃろ!!! ん…?! これはどういう事じゃ? なぜ余に牙を剥いておるのじゃ?!」
「い、いいいいいやぁ~、パーヘス(↑)なんて知らねぇズラぁ~…」
ソフィアは限界まで顎をしゃくらせてプルプルし、冷や汗を滝の様に垂らしながら、視線を逸らして後ずさる。
リザネも混乱のあまり、既に戦闘の構えを解いていた。
「あ、あああああアリスン、今です殺っちゃいなさい!!! ひ、ヒヒヒヒマリちゃんも!!! リリカ!!! 何をしている!!! 殺れェ!!!」
指示を受けてアリスンはおどおどと剣を構える。
リリカは既に汚い物を見る目でソフィアを見て腕を組んでいた。
ヒマリも疑いの目でリザネとソフィアを見比べる。
ココアが不安そうな目でソフィアを見ると、ソフィアは観念したように顎を引っ込めた。
「いや、違うんですよぉ。ちょっとした気の迷いと言うか、若気の至りというかぁ~…
…そう…あれは…遠い春の日の事でした…私一人
がいけないというのではなく…
…あの春の日差しの暖かさが…私をそうさせたのかもしれませんネ…」
チラチラと皆の反応を伺いながら、か細い声でソフィアは呟いた。
第三章 四人目の女 了
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