3 / 3
三
しおりを挟む
舞うイチョウの葉に人々はかまうことができない。
座ろうとした助手席にイチョウの葉が舞い落ちる。
「……今日から、電車で行くね」
あなたは微かに驚いた後に、ほんの少しだけ寂しそうに微笑んだ。
「いつまでもおじさんの相手なんかしてらんないもんな」
「そんなのじゃないけど」
「好きな人でもできたのかな」
その瞬間、ドアから少し離れた私の足元でイチョウの葉が音をたてる。
何かにヒビが入った、そんな音を。
「好きな人は、いないよ」
今年初めて舞う雪に人々は少し空を見上げる。
私はあなたを懐かしむ。
ずっと隣で季節を感じてきたのに、雪だけは一緒に見ることができなかったな。
でも「好き」じゃなかったよ。
「好き」じゃないから。
だから。
せめて。
雪だけでも一緒に。
本当は、もう少し一緒に。
静かに降り続く雪に、私の想いも続いていた。
座ろうとした助手席にイチョウの葉が舞い落ちる。
「……今日から、電車で行くね」
あなたは微かに驚いた後に、ほんの少しだけ寂しそうに微笑んだ。
「いつまでもおじさんの相手なんかしてらんないもんな」
「そんなのじゃないけど」
「好きな人でもできたのかな」
その瞬間、ドアから少し離れた私の足元でイチョウの葉が音をたてる。
何かにヒビが入った、そんな音を。
「好きな人は、いないよ」
今年初めて舞う雪に人々は少し空を見上げる。
私はあなたを懐かしむ。
ずっと隣で季節を感じてきたのに、雪だけは一緒に見ることができなかったな。
でも「好き」じゃなかったよ。
「好き」じゃないから。
だから。
せめて。
雪だけでも一緒に。
本当は、もう少し一緒に。
静かに降り続く雪に、私の想いも続いていた。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
愚か者は幸せを捨てた
矢野りと
恋愛
相思相愛で結ばれた二人がある日、分かれることになった。夫を愛しているサラは別れを拒んだが、夫であるマキタは非情な手段でサラとの婚姻関係そのものをなかったことにしてしまった。
だがそれは男の本意ではなかった…。
魅了の呪縛から解き放たれた男が我に返った時、そこに幸せはなかった。
最愛の人を失った男が必死に幸せを取り戻そうとするが…。
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
不機嫌な侯爵様に、その献身は届かない
翠月 瑠々奈
恋愛
サルコベリア侯爵夫人は、夫の言動に違和感を覚え始める。
始めは夜会での振る舞いからだった。
それがさらに明らかになっていく。
機嫌が悪ければ、それを周りに隠さず察して動いてもらおうとし、愚痴を言ったら同調してもらおうとするのは、まるで子どものよう。
おまけに自分より格下だと思えば強気に出る。
そんな夫から、とある仕事を押し付けられたところ──?
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
彼女よりも幼馴染を溺愛して優先の彼と結婚するか悩む
佐藤 美奈
恋愛
公爵家の広大な庭園。その奥まった一角に佇む白いガゼボで、私はひとり思い悩んでいた。
私の名はニーナ・フォン・ローゼンベルク。名門ローゼンベルク家の令嬢として、若き騎士アンドレ・フォン・ヴァルシュタインとの婚約がすでに決まっている。けれど、その婚約に心からの喜びを感じることができずにいた。
理由はただ一つ。彼の幼馴染であるキャンディ・フォン・リエーヌ子爵令嬢の存在。
アンドレは、彼女がすべてであるかのように振る舞い、いついかなる時も彼女の望みを最優先にする。婚約者である私の気持ちなど、まるで見えていないかのように。
そして、アンドレはようやく自分の至らなさに気づくこととなった。
失われたニーナの心を取り戻すため、彼は様々なイベントであらゆる方法を試みることを決意する。その思いは、ただ一つ、彼女の笑顔を再び見ることに他ならなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる