初めてあなたの隣に座ったのは、舞う桜に人々がかまうことができない平日の朝

小春佳代

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舞うイチョウの葉に人々はかまうことができない。
 座ろうとした助手席にイチョウの葉が舞い落ちる。
「……今日から、電車で行くね」
 あなたは微かに驚いた後に、ほんの少しだけ寂しそうに微笑んだ。
「いつまでもおじさんの相手なんかしてらんないもんな」
「そんなのじゃないけど」
「好きな人でもできたのかな」
 その瞬間、ドアから少し離れた私の足元でイチョウの葉が音をたてる。
 何かにヒビが入った、そんな音を。
「好きな人は、いないよ」

 今年初めて舞う雪に人々は少し空を見上げる。
 私はあなたを懐かしむ。
 ずっと隣で季節を感じてきたのに、雪だけは一緒に見ることができなかったな。
 でも「好き」じゃなかったよ。
「好き」じゃないから。
 だから。
 せめて。
 雪だけでも一緒に。
 本当は、もう少し一緒に。

 静かに降り続く雪に、私の想いも続いていた。
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