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エミリア、美少女と出会う
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「久しぶりですわ!」
馬車から降りると賑やかな街の活気がエミリアを包み込んだ。専属侍女になったばかりのビバリーと一緒に王都にある街へと来ていた。エミリア達の少し後ろには我が公爵家の護衛も付いて来ている。
更にはサッパリどこに居るのか分からないが、王家から派遣された兵士も護衛として居る筈だ。こちらは、エミリアがイアンの婚約者に決定した時から付けられている。
未来の王太子妃に何かあってはいけないから、という事らしい。所詮……貴族や王族にプライベートなんてあったもんじゃないのだ。
(前世の開放感ある生活が懐かしいですわ)
「まずは雑貨屋さんから探してみましょうか、お嬢様」
ビバリーの提案に素直に頷いてお気に入りの雑貨屋さんへ向かう事にした。
今日こうやって街へと来たのには訳がある。あれからパトリックに会いに行く度に、毎回趣向を凝らしたお菓子を用意してもてなしてくれてるので何かお返しをしたいなと思ったのだ。
(とにかくパトリックだけでも味方に付けなくては! 断罪なんて拒否ですわ)
何を贈ろうか悩んだ末、思い付いたのは本に挟む栞だった。本の虫なパトリックだから使わない事はないだろう。
王都の街は結構広くて雑貨屋も数軒あるのだが、どの店を覗いて見てもありきたりというか――気に入る栞が見つからなかった。
困ったなと四軒目の雑貨屋から外に出た時、斜め向い側に見えた店のショーウィンドウに思わず視線が釘付けになった。
「うわぁ……なにこれ」
そこは魔道具や魔導書などを売っている魔法アイテム専門の店だった。通りに面した小さ目のショーウィンドウには分厚い魔導書が置かれており、その本のページがキラキラと光を帯びながら勝手にペラペラとめくれている。
「魔法? すごーい」
吸い込まれる様にショーウィンドウに夢中になっていると、店の中から一人の可愛らしい子供が顔を出した。魔導士さながらのローブ姿で頭からフードを被っている。
「中に入った方が近くで見れますよ」
アドバイスに従いビバリーと一緒に店の中へと入ってみた。少し暗めの照明に照らされた店内は所狭しと魔道具が陳列されており、ワクワク感に心躍った。
「もしかして魔道具を見るの初めてですか?」
さっきの子がエミリアの横に来て再び声を掛けて来た。
(見た感じ同年代かしら。お店のお手伝い?)
「家には幾つかあるんですけど、こんな面白い魔道具は初めて見ましたわ」
「そうなんですね、これは最近人気の商品で。本の栞なんですけど」
そう言いながら本の横に置いてある半透明のプレートを手に取る。するとキラキラとした光が消えると共にめくれていたページが止まった。
「この栞でこうやって本の表紙をなぞってから置くと……」
再び本のページがめくれ始め、キラキラとした光も戻る。
「わぁ」
「さっきみたいになって、インテリアとしても使えます。そして栞として使う場合は」
今度は本のページを開いた状態で本編文章をなぞってから本を閉じて置き
「オープン」
と小さく唱えると本がふわっと浮き上がり宙を飛んで来た。店員さん? はそれを右手を開いて手のひらの上で受け取ると左手に持った栞で本の表紙をトントン、と叩いた。それを合図に閉じていた本のページが自動的にめくれて本のページが開く。
「本棚にしまった状態でもこれがあれば、わざわざ取りに行かなくても手元まで本が来てくれるから便利ですよ」
「凄いですわ! わたくし、それが欲しいですわ」
早速ビバリーに購入をお願いして、プレゼント用にラッピングも頼んだ。ラッピングが終わるのを待つ間、近くにある他の魔道具を眺めていた。
「気に入った物が見つかって良かったですね」
いつの間にか横に戻って来たローブ姿の子がニコリと微笑みながら話し掛けて来た。ラッピングは奥に居る別の店員さんがしてくれているらしい。
「ええ、気に入りすぎてわたくしの分まで買ってしまいましたわ」
「それは良かったです、実はあの魔道具は私が発案したんですよ」
「まぁ、それは凄いですわね。あ……申し遅れましたわ、わたくしレナード公爵家のエミリア・レナードと申します」
「ご丁寧にありがとう御座います。私はこの店を経営しておりますフラッフィー伯爵家のフランシスカ・フラッフィーと申します」
フランシスカは被っていたフードを外し挨拶を返してくれた。
(なんっ……て、美少女ですの!?)
フードから出て来たフランシスカの姿は息を呑む程美しい姿だった。透けるような真っ白な髪を襟元で三つ編みにしてゆるやかに垂らし、整った顔立ちはどこか儚げで。深い海の様な蒼い瞳が印象的だ。
「時々こうして店にも来てるので、見掛けたら気軽に声を掛けて下さいね」
「勿論ですわ! 是非、仲良くして下さいませ」
話を聞いてみると一つ歳上で六歳だという。家格的にも伯爵家なら友人として付き合っても許される範囲だろう。
まだ特別仲良しな令嬢は出来ていないので、突然現れた新たな友人に嬉しくて仕方がなかった。
ラッピングを終えた包みを抱えて戻って来たビバリーと共に店の外へと出る。フランシスカも一緒に店の外まで出て来て、エミリア達を見送りしてくれた。
互いに手を振り合って別れを告げようとしていた時――エミリア達を急な突風が襲った。砂埃が舞い思わず目を閉じた途端、身体がフワッと持ち上がった。
――いや、正しくは誰かの腕によって抱き抱えられた。
「どっちだ!?」
「分からん! どっちも連れて行け!!」
巻き上がる砂埃の中でそんな声が聞こえて来るが息も出来ないくらいの突風な上に、地に付かなくなった両足が不安を煽りパニックになる。
(何!? 何が起こってるの!?)
気が付いた時には移動魔法でも使ったのか急に静かな場所へと来ており、冷たい床に転がされた。
「けほっ、ゴホッ! ケホケホケホケホ……」
口の中に入り込んだ砂にむせ返している間にエミリアの両手両足は縛られてしまい、咳き込んだ苦しさで目に涙が滲んだ。
かすかにフランシスカの咳き込む声も聞こえて来て、声のする方へと顔を向けると同じようにロープで拘束されたフランシスカが近くの床に転がっていた。
「暫く大人しくしていろ」
中年の男がそう言い残しガシャン! と牢の扉を閉めて鍵を掛け、もう一人と何処かへ姿を消してしまった。
「…………な、に……ここ」
床に転がった状態で周りを見渡す。何処かの地下牢だろうか。というか、これって……
「誘拐……!?」
「……そのようですね」
互いに転がったまま視線を合わせ、驚きの展開に驚愕するのだった。
馬車から降りると賑やかな街の活気がエミリアを包み込んだ。専属侍女になったばかりのビバリーと一緒に王都にある街へと来ていた。エミリア達の少し後ろには我が公爵家の護衛も付いて来ている。
更にはサッパリどこに居るのか分からないが、王家から派遣された兵士も護衛として居る筈だ。こちらは、エミリアがイアンの婚約者に決定した時から付けられている。
未来の王太子妃に何かあってはいけないから、という事らしい。所詮……貴族や王族にプライベートなんてあったもんじゃないのだ。
(前世の開放感ある生活が懐かしいですわ)
「まずは雑貨屋さんから探してみましょうか、お嬢様」
ビバリーの提案に素直に頷いてお気に入りの雑貨屋さんへ向かう事にした。
今日こうやって街へと来たのには訳がある。あれからパトリックに会いに行く度に、毎回趣向を凝らしたお菓子を用意してもてなしてくれてるので何かお返しをしたいなと思ったのだ。
(とにかくパトリックだけでも味方に付けなくては! 断罪なんて拒否ですわ)
何を贈ろうか悩んだ末、思い付いたのは本に挟む栞だった。本の虫なパトリックだから使わない事はないだろう。
王都の街は結構広くて雑貨屋も数軒あるのだが、どの店を覗いて見てもありきたりというか――気に入る栞が見つからなかった。
困ったなと四軒目の雑貨屋から外に出た時、斜め向い側に見えた店のショーウィンドウに思わず視線が釘付けになった。
「うわぁ……なにこれ」
そこは魔道具や魔導書などを売っている魔法アイテム専門の店だった。通りに面した小さ目のショーウィンドウには分厚い魔導書が置かれており、その本のページがキラキラと光を帯びながら勝手にペラペラとめくれている。
「魔法? すごーい」
吸い込まれる様にショーウィンドウに夢中になっていると、店の中から一人の可愛らしい子供が顔を出した。魔導士さながらのローブ姿で頭からフードを被っている。
「中に入った方が近くで見れますよ」
アドバイスに従いビバリーと一緒に店の中へと入ってみた。少し暗めの照明に照らされた店内は所狭しと魔道具が陳列されており、ワクワク感に心躍った。
「もしかして魔道具を見るの初めてですか?」
さっきの子がエミリアの横に来て再び声を掛けて来た。
(見た感じ同年代かしら。お店のお手伝い?)
「家には幾つかあるんですけど、こんな面白い魔道具は初めて見ましたわ」
「そうなんですね、これは最近人気の商品で。本の栞なんですけど」
そう言いながら本の横に置いてある半透明のプレートを手に取る。するとキラキラとした光が消えると共にめくれていたページが止まった。
「この栞でこうやって本の表紙をなぞってから置くと……」
再び本のページがめくれ始め、キラキラとした光も戻る。
「わぁ」
「さっきみたいになって、インテリアとしても使えます。そして栞として使う場合は」
今度は本のページを開いた状態で本編文章をなぞってから本を閉じて置き
「オープン」
と小さく唱えると本がふわっと浮き上がり宙を飛んで来た。店員さん? はそれを右手を開いて手のひらの上で受け取ると左手に持った栞で本の表紙をトントン、と叩いた。それを合図に閉じていた本のページが自動的にめくれて本のページが開く。
「本棚にしまった状態でもこれがあれば、わざわざ取りに行かなくても手元まで本が来てくれるから便利ですよ」
「凄いですわ! わたくし、それが欲しいですわ」
早速ビバリーに購入をお願いして、プレゼント用にラッピングも頼んだ。ラッピングが終わるのを待つ間、近くにある他の魔道具を眺めていた。
「気に入った物が見つかって良かったですね」
いつの間にか横に戻って来たローブ姿の子がニコリと微笑みながら話し掛けて来た。ラッピングは奥に居る別の店員さんがしてくれているらしい。
「ええ、気に入りすぎてわたくしの分まで買ってしまいましたわ」
「それは良かったです、実はあの魔道具は私が発案したんですよ」
「まぁ、それは凄いですわね。あ……申し遅れましたわ、わたくしレナード公爵家のエミリア・レナードと申します」
「ご丁寧にありがとう御座います。私はこの店を経営しておりますフラッフィー伯爵家のフランシスカ・フラッフィーと申します」
フランシスカは被っていたフードを外し挨拶を返してくれた。
(なんっ……て、美少女ですの!?)
フードから出て来たフランシスカの姿は息を呑む程美しい姿だった。透けるような真っ白な髪を襟元で三つ編みにしてゆるやかに垂らし、整った顔立ちはどこか儚げで。深い海の様な蒼い瞳が印象的だ。
「時々こうして店にも来てるので、見掛けたら気軽に声を掛けて下さいね」
「勿論ですわ! 是非、仲良くして下さいませ」
話を聞いてみると一つ歳上で六歳だという。家格的にも伯爵家なら友人として付き合っても許される範囲だろう。
まだ特別仲良しな令嬢は出来ていないので、突然現れた新たな友人に嬉しくて仕方がなかった。
ラッピングを終えた包みを抱えて戻って来たビバリーと共に店の外へと出る。フランシスカも一緒に店の外まで出て来て、エミリア達を見送りしてくれた。
互いに手を振り合って別れを告げようとしていた時――エミリア達を急な突風が襲った。砂埃が舞い思わず目を閉じた途端、身体がフワッと持ち上がった。
――いや、正しくは誰かの腕によって抱き抱えられた。
「どっちだ!?」
「分からん! どっちも連れて行け!!」
巻き上がる砂埃の中でそんな声が聞こえて来るが息も出来ないくらいの突風な上に、地に付かなくなった両足が不安を煽りパニックになる。
(何!? 何が起こってるの!?)
気が付いた時には移動魔法でも使ったのか急に静かな場所へと来ており、冷たい床に転がされた。
「けほっ、ゴホッ! ケホケホケホケホ……」
口の中に入り込んだ砂にむせ返している間にエミリアの両手両足は縛られてしまい、咳き込んだ苦しさで目に涙が滲んだ。
かすかにフランシスカの咳き込む声も聞こえて来て、声のする方へと顔を向けると同じようにロープで拘束されたフランシスカが近くの床に転がっていた。
「暫く大人しくしていろ」
中年の男がそう言い残しガシャン! と牢の扉を閉めて鍵を掛け、もう一人と何処かへ姿を消してしまった。
「…………な、に……ここ」
床に転がった状態で周りを見渡す。何処かの地下牢だろうか。というか、これって……
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