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第一章
アルストSide マカロン
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今日は愛しのティアナ嬢との初めての二人きりのお茶会だ。これからは婚約者として毎月一回、こうしてお茶会を設けて互いの距離を縮めていく事となる。ビバ、お茶会! ビバ、婚約者! 毎日でも会いたいのだけど今は我慢だ仕方ない。
「殿下、ローゼン公爵令嬢が到着されました」
俺の専属従者であるデペッシュが部屋迄迎えに来た。デペッシュの言葉に思わず頬が緩んでしまう。今日もきっとティアナ嬢は可愛いだろうな。
あのキラキラと輝く深いコバルトブルーの瞳に俺を映してくれるだろうか。サラサラとしたスカイブルー色の長い髪に触れてみたいけど、チャンスはあるだろうか。この間は陶器のように美しい頬を運良く少しだけ、ほんの少しだけど触れる事が出来た。ティアナ嬢は驚いていた様子だが、それがまた小動物の様で可愛くて可愛くて。思い出すだけでも身悶えしてしまいそうだ。
「殿下……顔がヤバイ事になってますよ。はい、元に戻して」
デペッシュが冷めた様な瞳でこちらを見る。ヤバイ顔ってなんだ、失礼な。
「で、ちゃんと指示した様にスイーツは用意出来てるのか?」
「はい、王都で人気のスイーツ店からマカロンを取り寄せてあります。ストロベリー、オレンジ、マスカット、ブルーベリー、キャラメル、チョコレートの6種類の味を用意しております」
うんうん、それだけ色んな味があればティアナ嬢も喜んでくれるだろう。デペッシュを引き連れて東の庭園へと向かう。整備の行き届いた低木の隙間からコッソリと池のほとりにあるガゼボの様子を伺う。
空色の頭がチラリと見えた。あぁ、ティアナ嬢だ。
今日は髪をハーフアップにしていて、この間よりは少しラフな装いだ。レモン色のワンピースがとても似合っている。可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い。
姿を見ただけでこんなに興奮してしまう。ティアナ嬢は魔法使いなのかもしれないな。俺のハートを鷲掴みにして離さない魔法。なんて素敵な魔法なんだ。あんなキュートな魔法使いはティアナ嬢しか居ない。可愛すぎて意識が遠くなりそうだ。
「殿下……ご令嬢を覗きながら、鼻息荒く身悶えするのをおやめ下さい。変態ですか」
「誰が変態だ、さっきから失礼だな」
「そんな事はともかく。ほら、ご令嬢がお待ちかねですよ。早く行きましょう」
「あぁ、そうだな。待たせるのは悪い」
俺は身なりをサッと整えてティアナ嬢の待つガゼボまで早足で近付いた。
「やぁ、よく来てくれたねティアナ嬢」
「アルスト殿下。お招き頂きありがとう御座います」
ティアナ嬢は俺の姿に気付くと椅子から立ち上がり、優雅なカーテシーを見せてくれた。空色の髪がふわっと揺れる。さ、触りたい!
「気にせず座ってくれ。婚約者同士なのだから気取らなくて構わない」
「はい、ありがとう御座います」
手際良くティーセットがメイドの手によって並べられていく。テーブルの真ん中にはデペッシュに用意させたカラフルなマカロンが置かれた。それに気付いたティアナ嬢は目を輝かせて魅入っている。うんうん、狙い通りだ!
「ふふ。今日は(君みたいに)可愛いマカロンを用意してみたよ。ティアナ嬢の口に合うと良いのだが」
そう言ってなるべく優しく映るように笑みを向けると、ティアナ嬢は少し顔を赤らめた。おぉ、なかなか良い反応じゃないか。この調子で少しずつでも俺の事を好きになって貰わなければ!
「さぁ、遠慮せず食べてくれ。はいっ、あーん」
手前にあったピンク色のマカロンを摘み上げ、ティアナ嬢の魅惑の口元へと近付ける。あぁ、触りたい。
「へ?」
素っ頓狂な可愛い声を漏らし、ティアナ嬢は俺の顔と差し出しているマカロンを何度も交互に見返す。どんどん顔が真っ赤に染まって行くのがこれまた可愛くて堪らない。
「口をあけて。はい、あーん」
「あ、あの、自分で食べれま…す⁉︎」
困って開いた唇にマカロンを咥えさせた。ふふっ……固まってるよ。可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い! 嬉しすぎて自然に笑顔が漏れ出てしまう。抵抗するのを諦めたのか、素直にマカロンを一口食べ始めるティアナ嬢。
それだけで甘酸っぱい気持ちで一杯になる。ティアナ嬢の歯形が付いたイチゴ味のマカロン。本当はハンカチに包んでポケットにしまいたい。でもさすがにソレをすると後でデペッシュに取り上げられそうだから、ここは諦めよう。
マカロンをポイッと自分の口に放り込み、次の行動へと移る。
「!?」
「うん、程よい甘酸っぱさが美味しいね」
王子スマイルを振り撒きながら今度はマスカット味のマカロンを手に取る。
「で、殿下! ここからは自分で食べますから。いえ、自分で食べたいですわ。それはもう、全力で」
何故か必死に訴えるティアナ嬢だが、大丈夫だよ。このマカロンは俺が食べる為のものだから安心して。ティアナ嬢の小さくて可愛らしい手を取って、その上にグリーンのマカロンを乗せる。
「うん、だから次だけは君から私に食べさせてくれるかな?」
「は?」
あは、またキョドってる。本当に可愛いな~俺の婚約者殿は。
「それとも次も、その次も、ずーっと私が君に食べさせてあげた方が良い? それはそれで大歓迎だけど」
「ひぇええっ! それはお断り致しますわ」
よし! あと一踏ん張りだ。背後からデペッシュの冷たい視線が突き刺さる気がするが気にしない。
「あーん、って言って」
「なっ!」
「ほら、早く早く」
「……あ、あーーん、ですわ殿下」
パクリ、と差し出されたマカロンを口にする。めちゃくちゃ幸せだー! ティアナ嬢と甘い逢瀬を楽しんでいると、聞き慣れた足音が近付いてくるのが分かった。
「……デートの邪魔をするなんて野暮だと思わないかい? タクト」
振り向かずに背後に居る親友に声を掛ける。
「大事な妹を魔の手から救う為なら気にしません」
「殿下、ローゼン公爵令嬢が到着されました」
俺の専属従者であるデペッシュが部屋迄迎えに来た。デペッシュの言葉に思わず頬が緩んでしまう。今日もきっとティアナ嬢は可愛いだろうな。
あのキラキラと輝く深いコバルトブルーの瞳に俺を映してくれるだろうか。サラサラとしたスカイブルー色の長い髪に触れてみたいけど、チャンスはあるだろうか。この間は陶器のように美しい頬を運良く少しだけ、ほんの少しだけど触れる事が出来た。ティアナ嬢は驚いていた様子だが、それがまた小動物の様で可愛くて可愛くて。思い出すだけでも身悶えしてしまいそうだ。
「殿下……顔がヤバイ事になってますよ。はい、元に戻して」
デペッシュが冷めた様な瞳でこちらを見る。ヤバイ顔ってなんだ、失礼な。
「で、ちゃんと指示した様にスイーツは用意出来てるのか?」
「はい、王都で人気のスイーツ店からマカロンを取り寄せてあります。ストロベリー、オレンジ、マスカット、ブルーベリー、キャラメル、チョコレートの6種類の味を用意しております」
うんうん、それだけ色んな味があればティアナ嬢も喜んでくれるだろう。デペッシュを引き連れて東の庭園へと向かう。整備の行き届いた低木の隙間からコッソリと池のほとりにあるガゼボの様子を伺う。
空色の頭がチラリと見えた。あぁ、ティアナ嬢だ。
今日は髪をハーフアップにしていて、この間よりは少しラフな装いだ。レモン色のワンピースがとても似合っている。可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い。
姿を見ただけでこんなに興奮してしまう。ティアナ嬢は魔法使いなのかもしれないな。俺のハートを鷲掴みにして離さない魔法。なんて素敵な魔法なんだ。あんなキュートな魔法使いはティアナ嬢しか居ない。可愛すぎて意識が遠くなりそうだ。
「殿下……ご令嬢を覗きながら、鼻息荒く身悶えするのをおやめ下さい。変態ですか」
「誰が変態だ、さっきから失礼だな」
「そんな事はともかく。ほら、ご令嬢がお待ちかねですよ。早く行きましょう」
「あぁ、そうだな。待たせるのは悪い」
俺は身なりをサッと整えてティアナ嬢の待つガゼボまで早足で近付いた。
「やぁ、よく来てくれたねティアナ嬢」
「アルスト殿下。お招き頂きありがとう御座います」
ティアナ嬢は俺の姿に気付くと椅子から立ち上がり、優雅なカーテシーを見せてくれた。空色の髪がふわっと揺れる。さ、触りたい!
「気にせず座ってくれ。婚約者同士なのだから気取らなくて構わない」
「はい、ありがとう御座います」
手際良くティーセットがメイドの手によって並べられていく。テーブルの真ん中にはデペッシュに用意させたカラフルなマカロンが置かれた。それに気付いたティアナ嬢は目を輝かせて魅入っている。うんうん、狙い通りだ!
「ふふ。今日は(君みたいに)可愛いマカロンを用意してみたよ。ティアナ嬢の口に合うと良いのだが」
そう言ってなるべく優しく映るように笑みを向けると、ティアナ嬢は少し顔を赤らめた。おぉ、なかなか良い反応じゃないか。この調子で少しずつでも俺の事を好きになって貰わなければ!
「さぁ、遠慮せず食べてくれ。はいっ、あーん」
手前にあったピンク色のマカロンを摘み上げ、ティアナ嬢の魅惑の口元へと近付ける。あぁ、触りたい。
「へ?」
素っ頓狂な可愛い声を漏らし、ティアナ嬢は俺の顔と差し出しているマカロンを何度も交互に見返す。どんどん顔が真っ赤に染まって行くのがこれまた可愛くて堪らない。
「口をあけて。はい、あーん」
「あ、あの、自分で食べれま…す⁉︎」
困って開いた唇にマカロンを咥えさせた。ふふっ……固まってるよ。可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い! 嬉しすぎて自然に笑顔が漏れ出てしまう。抵抗するのを諦めたのか、素直にマカロンを一口食べ始めるティアナ嬢。
それだけで甘酸っぱい気持ちで一杯になる。ティアナ嬢の歯形が付いたイチゴ味のマカロン。本当はハンカチに包んでポケットにしまいたい。でもさすがにソレをすると後でデペッシュに取り上げられそうだから、ここは諦めよう。
マカロンをポイッと自分の口に放り込み、次の行動へと移る。
「!?」
「うん、程よい甘酸っぱさが美味しいね」
王子スマイルを振り撒きながら今度はマスカット味のマカロンを手に取る。
「で、殿下! ここからは自分で食べますから。いえ、自分で食べたいですわ。それはもう、全力で」
何故か必死に訴えるティアナ嬢だが、大丈夫だよ。このマカロンは俺が食べる為のものだから安心して。ティアナ嬢の小さくて可愛らしい手を取って、その上にグリーンのマカロンを乗せる。
「うん、だから次だけは君から私に食べさせてくれるかな?」
「は?」
あは、またキョドってる。本当に可愛いな~俺の婚約者殿は。
「それとも次も、その次も、ずーっと私が君に食べさせてあげた方が良い? それはそれで大歓迎だけど」
「ひぇええっ! それはお断り致しますわ」
よし! あと一踏ん張りだ。背後からデペッシュの冷たい視線が突き刺さる気がするが気にしない。
「あーん、って言って」
「なっ!」
「ほら、早く早く」
「……あ、あーーん、ですわ殿下」
パクリ、と差し出されたマカロンを口にする。めちゃくちゃ幸せだー! ティアナ嬢と甘い逢瀬を楽しんでいると、聞き慣れた足音が近付いてくるのが分かった。
「……デートの邪魔をするなんて野暮だと思わないかい? タクト」
振り向かずに背後に居る親友に声を掛ける。
「大事な妹を魔の手から救う為なら気にしません」
応援ありがとうございます!
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