完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな

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第二章

ぷにぷに。

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 週末、アルスト殿下がタクトお兄様を訪ねていらっしゃいました。勿論あたしも同席させて頂いています。

「これで一先ずは様子見だな」
「あぁ、すぐには動かないだろうが……いずれ、アーサーに接触してくるだろう」

 ――ぷにぷにぷにぷにぷに。

「ダッペラー商会の方はスクトが今、話をしに行っているからここも大丈夫だろうしな」
「あぁ、元々ダッペラーとバーベンスは対立しているからな。向こうにとったら渡りに船だろう」

 ――ぷにぷにぷにぷにぷに。さすさす……ぷにぷにぷにぷに。

「まさかアルスト殿下まで協力して頂けるとは思っておりませんでした。ロメリアンヌの為にありがとう御座います」
「いや、丁度バーベンスはどうにかしないといけないと思っていた所だったからね。いいキッカケを貰えたよ」

 ――ぷにぷにさすさす……ぷにぷにさすさす。

「…………アル」
「ん、どうしたタクト」
「その、ティアナの腕をぷにぷにしたり擦ったりするのいい加減やめろっ!」
「えーなんで?」

 タクトお兄様が向かいのソファーからこちらを指差して叫ぶと、アルスト殿下はさも不思議そうに首を傾げる。殿下はあたしを定位置である膝の上に乗せた状態で、袖から出ている二の腕を優しく揉んだり撫でたりしているのですが……。

「その前に膝からも下ろせ! おれの前で堂々となにしてんだ」
「なにって、ティアナを愛でているだけだが。それの何が問題なんだ」

 言い合う二人の間で、あたしは熱い顔を冷ますようにコッソリと紅茶を口に含む。最近のアルスト殿下は、あたしの二の腕を触るのがマイブームらしくてよくこうして“ぷにぷに”とされるのです。そんな新しい行動にあたしもまだ慣れていなくて、胸がバクバクしてしまう。

「おれの前でするな!」
「ほぉ……じゃあ、早速ティアナの部屋で二人きりになって思いっきり堪能……」
「待て待て、それはそれでダメだ! 二人っきりになんてしたら何をするか分からん」
「ではどこで“ぷにぷに”しろと言うのだ。学園の教室か!? 城の入口か!? 街のど真ん中か!?」
「そんな目立つ所でしようとするなっ!」

 そうです、そんな所でされたら恥ずかし過ぎて困ります。

「いいかタクト! ティアナのこの腕を見てみろ! これを見て“ぷにぷに”せずにどうしろと言うのだ。男ならぷにってなんぼだ」

 あまりのぷにぷに宣言ぶりにタクトお兄様とあたしは返す言葉が見付からず、唖然として殿下を見るしか出来ず……。そこへ部屋の隅に控えていた殿下付き従者のデペッシュがツカツカと歩み寄って来たと思ったら、すかさず殿下の頭に手套が振り下ろされ――。

「どんだけ変態ですかっ!!」
「いっ……痛いじゃないかデペッシュ!」
「ドン引きされてるじゃないですか、少しは変態を抑えるとか出来ませんか」
「ティアナに触れているのに!? この溢れ出る愛がハリケーンのように押し寄せて来るのにか!? これでも抑えているのだぞ、まだ婚姻前だからな」

 婚姻したらどうなってしまうのでしょうか、あたし……。頬を引きつらせつつ殿下のお顔を見上げるあたし。……あぁ、溢れる愛を語って下さる殿下の今日のお顔も素晴らしく素敵です。ぷにぷにの大切さを力説されているお顔もなんてカッコ良いのでしょう。

「……タクトお兄様」
「ん、なんだティアナ」
「もう、ぷにぷにくらい平気ですわ。それくらいで負けていては、この先がきっと大変なのですわ」
「え……ええっ? ……そ、そうかな……うーん」

 なんだか納得のいっていないタクトお兄様。

「そうだぞタクト。これくらいで負けていたら、お前に未来はないぞ。潔く受け入れろ」
「…………うーん?」

 益々よく分からなくなってきたらしく、腕を組みながら頭をひねるタクトお兄様。あたしも何の未来が無いと言うのか、分からないのですけどね。

「ちょっ、タクト様。殿下のペースに乗っちゃいけませんよ、気をしっかりと持って下さい」
「……へ?」

 タクトお兄様が頭を悩ませている間に、殿下はあたしを横抱きにしたままサッと立ち上がって「じゃあ、そういう事で」と応接間を出られた。そしてそのままあたしの私室へと向かわれ、正気に戻られたタクトお兄様が部屋へ駈け込んで来られるまでの暫しの間二人っきりのぷにぷにタイムを堪能されたのだった。
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