完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな

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第二章

満月の夜③

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「……っ、なんだ今のは」

 先程の眩い光のせいなのかキンキンする頭を押さえながらアルスト殿下が閉じていた瞳を開けると、同じ様にタクトとスクトが頭を振っていた。檻の中に入れられていた筈だったのが、何が起きたのか柵が粉々に砕けている。よく見ると手枷も消えており、自由を取り戻していた。

「……はへっ?」

 素っ頓狂な声が聞こえて視線をやると、さっき迄怪しさ全開でほくそ笑んでいたバハム伯爵が何やら呆然とした様子で錬成陣の上に立っているのが見える。手のひらに乗せた賢者の石を見て不思議そうに首を傾げた。その様子を不審に思ったのか、ロナルドと呼ばれていた召使いの男が主人へと声を掛けた。

「旦那様?」
「おわっ!? ……え……なにここ……」

 周りをキョロキョロと見渡したバハム伯爵の視線が、砕け落ちた檻から抜け出したアルスト達で止まった。

「嘘……アル様だ……それにタクスクコンビまで居る!!」

 急に興奮した様子でアルスト達の傍までやって来たバハム伯爵に困惑する三人。そしてそこへ大きな扉が開かれたと同時に、アーサー殿下及び近衛騎士団の面々を引き連れたあたしがなだれ込んだ。向かい合うアルスト殿下達とバハム伯爵の姿を見て、すかさず近衛騎士団達がバハム伯爵へと剣を向ける。

「きゃっ!? えっ、えっ、何!? や、やめてっ」

 なよなよとした仕草で自身の身体を庇い、青ざめた顔で懇願するバハム伯爵にその場の誰もが戸惑いを隠せない。あたしも何だか弱弱しい姿のバハム伯爵の姿にどう対処して良いか躊躇する。

「あっ! ね、ねえっ! あなたヒロインでしょ!? 助けてっ」
「……え。わたし?」

 話を振られたミンスロッティ様はアタフタしてアルスト殿下とアスチルゼフィラ様に視線で助けを求めた。アスチルゼフィラ様も困惑しながらアルスト殿下を見、アルスト殿下はというと何やら難しい顔をしながら額に手を当てて考え込んでいた。

「……取り敢えず、捕らえろ。そして、アスチルゼフィラ嬢とパチェット嬢を残して後は少し離れてくれ」
「アル!? おれは残るぞ、お前を護らないといけない」
「大丈夫だから、お前はティアナ達を頼む。少し話をするだけだ」
「タクトお兄様、殿下の言う通りに致しましょう」

 何か考えあっての事なのだろう。あたしは渋るタクトお兄様を促して皆と広間の端の方へと移動した。

「プリズムガード」

 アルスト殿下が呪文を唱えた途端、キラキラとした光の壁が殿下達の周りを囲い透明な壁が出現した。光の屈折を利用して周りと一時的に遮断する光魔法だ。一種のバリケードの様なものの一つだ。これで壁の内側と外側の両方の物音なども聞こえなくなる。生活魔法としても楽器の演奏の練習などする際に使われる事もある割とポピュラーな魔法だ。

 あの中で何を話しているのかは正直気にはなるけど、今は殿下の指示通りに大人しく待っているしかないだろう。
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