悪役令嬢に転生かと思ったら違ったので定食屋開いたら第一王子が常連に名乗りを上げてきた

咲桜りおな

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本編

山菜の天ぷらと混ぜごはん

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 オンジを先頭に森の中へと入って行く。山菜採りに行く場所はだいたい決まっていて、この季節ならここ……という場所があるらしい。今はそこへと向かって歩いている。森の中は全く人の手が入っていない訳ではなかった。山菜採りに向かう道は人の手によって幾分か木々が切り開かれていて、獣道の様になっていた。

 途中、スライムに何体か遭遇するも大柄な男が手に持っていた大きな棍棒であっという間に倒してくれた。彼は元々、旅の傭兵をしていたらしい。棍棒の他にも背には剣を背負っている。心強い仲間が居てくれた事に少し安堵する。

「あともう少し歩けば、山のふもとへ着きます。そこにレジーが居る筈です」

 案内されるがまま、転ばない様に獣道を皆でひたすら進む。すると、レジーらしき姿が視界に入って来た。

「レジー! 何してるんだ!」

 オンジの声に驚いてこちらを振り向いたレジーは、手に持っていた籠を落しそうになる。

「さ……山菜を……」
「魔物に襲われたばかりで何を考えているんだ!」
「……ご……ごめんなさい」

 わたしたちの姿に、恐らくこれほど大事になるとは思っていなかったのだろう。レジーは戸惑いながらもオンジへと謝る。

「とにかく無事で良かった、帰るぞレジー」
「……はい」

 しょぼんと項垂れてたレジーをオンジは背に背負う。山菜の入った籠は仲間の一人が持ってくれた様だ。籠の中は一生懸命採取したのか、沢山の山菜が入っていた。

「レジーちゃん、お母さんの為に帰ったら一緒にこの山菜で料理作りましょうか」
「え、お姉ちゃんお料理出来るの?」
「こう見えて料理屋さんやってるのよ」
「本当? わたしにも作れる?」
「ええ、一緒にやればレジーちゃんにも作れるわよ」
「わぁ! ありがとうお姉ちゃん」

 勝手に森へ入った事は褒められた事ではないけど、お母さんを大切に想う気持ちは分からないでもない。勿論オンジから「二度と一人で勝手に森へ入るな」と絞られていたけどね。

◆◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◆

 村へと無事に戻って来て、早速レジーと一緒に採れたての山菜を使った料理を作る事にした。籠の中にあるのは、タラの芽とコシアブラだった。タラの芽とコシアブラ、それからこの村の特産品のサツマイモを使って天ぷらに、そしてコシアブラをの簡単混ぜご飯を作った。

 初めての揚げ物にレジーは興味津々で、鍋の淵からそーっと油の中に入れる事を教えると最初は怖がりながらも何度か挑戦する内にあっという間に上手く入れれる様になった。

 そして混ぜご飯の方は鍋にお湯を沸かして少し塩を入れ、ほんの一分間ほど茹で上げたら細かく切り刻み……炊きあがったご飯に混ぜ込む。最後に塩で味を調えれば完成だ。素材を生かした美味しい混ぜご飯が出来た。

 実はこの村では米を栽培しているらしく、昼食としておにぎりが出て来て驚いたのだ。さすがゲームのシナリオに出て来る王太子妃の試練の舞台だなぁ……と変に感心してしまった。日本を彷彿させる仕様はここでも健在の様だ。

「お母さん、レジーが作ったの。食べて……」

 熱々の天ぷら盛りと、ほかほかの混ぜご飯をレジーが母親の元へと運んで行った。暫くして、空になった器の乗ったトレーを嬉しそうに持って来た。

「お母さんが全部食べてくれた! 凄い!」
「良かったわね」

 勿論山菜は薬ではないので、これで元気一杯に回復! とはいかないだろうけど、毎日栄養のある食事を続ければきっと元気になるだろう。レジーからこの近くで採れる山菜の種類を聞き、出来うる限りの調理方法を教えた。山菜料理だけでなく、この村で採れる作物を使った料理も幾つか一緒に教える。

「お姉ちゃん物知りなんだねー」

 一生懸命メモを取りながら、レジーが呟いた。

「料理が好きなだけよ、他に特に特技も無いしね」

 わたしは自分の作った料理を食べた人が笑顔を見せてくれるだけで嬉しい。例え自分が作らなくても、こうして教えた料理を誰かが作って幸せな気分になってくれるだけでも充分だった。そう考えると、定食屋に携われたのはとても幸運だな、と思う。
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