18 / 30
エメラルドの習作
18.エーミルの保護者
しおりを挟む
アパートの住人専用の入り口を開けて、階段を駆け上がる。二階の扉を開けると、ディナーの準備をしているマリアと視線が合った。
「どうしたの?ナオ」
手にしていた皿をテーブルに置いて、マリアが小首をかしげた。
「知らない人がずっと後を付けてきたの」
私は後ろ手で扉を閉じる。ここまで着いてきていないと思うけれど、やっぱり心配だ。
「ここまで来れば大丈夫よ。スミスさんもいるし、私も、エーミルもいるわ」
マリアとエーミルの強さは、この間の元彼襲撃事件の時に思い知ったけれど、なんでスミスさん……?
「スミスさんは……ふふっ……ああ見えて、とても頼りになる人なのよ」
マリアは意味深に笑って、キッチンに戻った。マリアの戻ったキッチンから、クリーミーな香りがする。今日のディナーは期待できそう。
私がすっかり安心して、上の階にある自分の部屋に一旦荷物を置きに戻ろうと、二階の扉を開けた。扉を開けた先に、人が立っていた。
見たことある……!私をつけてきた人だ。
うそ、着いてきたの!
私は部屋にもう一度入り、マリアに向かって言った。
「大変!ついてきちゃった」
私の言葉を聞いて、マリアがキッチンから飛び出してきて、私を背後に追いやる。彼女の手にはヘラが握られていて、短剣のように構えている。
「なんだ、マリア、随分な出迎えだな」
私の後をつけてきた男性は、マリアの存在を認めると、大げさに肩をすくめた。
え?え??
「ジェームズ……ナオをつけ回したの?スコットランド・ヤードに通報するわよ」
マリアはヘラを指揮棒のように振って、怒っている。
「ファミリアのマリアと弟のエーミルが一緒に生活している相手と知ってね。どんな人物か調査を」
彼は、気取った口調でマリアを諫めている。英語の発音から、とても教養がありそうだ。マリアはため息をついて、背後でぼんやり事の成り行きを見ていた私の方へ振り返った。
「ナオ、紹介するわ。エーミルの兄で保護者のジェームズ。ジェームズ、こちらはルームメイトのナオよ」
エーミルの兄?え?父親では無くて?ジェームズは、四十台に見える。エーミルの父親の方が納得がいく。しかも、兄っていうことは、あれなの?トカゲもどきなの?
「正真正銘の兄弟よ。ジェームズもドラゴンなの」
「ファミリアって何?」
エーミルは、ジェームズの弟。マリアのことは、ファミリア、と言っていた。
「我ら竜族とパートナーの誓いをした者のことだ」
「パートナー……?結婚してるって言うこと?」
「違うわ。仲間とか相棒っていうほうがニュアンス的には近いわ。お互いの能力を共有しあえるの」
「能力……?」
「お互いがお互いの欠点を補い合える、というほうがわかりやすいかしら?私は竜族の力に影響されるし、ジェームズも魔女の力に影響されている」
分かったような、分からないような。
「エーミルはどこだ?イートン校に連れ帰らなければ」
「ここにいるよ」
ダイニングルームで騒いでいたからか、不機嫌そうな表情で、エーミルが立っている。マリアの部屋から出てきたようだ。
「人間に誘拐されるとか、油断のしすぎだ」
え?エーミルって、誘拐されていたの?
ジェームズの言葉に、私はエーミルとマリアの顔を見た。
「誘拐じゃ無い。僕の意思でついていったんだ」
「なおさら悪い。竜族の血を採取されただろう」
「兄弟げんかは、よそでやって」
マリアは手を叩いて、二人の言い合いを止めた。
「ジェームズ、せっかくだからディナーを食べていって」
「えー?ジェームズも一緒なの?」
エーミルが嫌がると、マリアがひと睨みして黙らせる。エーミルは、マリアの嫌がることはしないので、口をとがらせたまま、沈黙した。
マリアは、キッチンに戻ってしまったので、私はこの居心地の悪いダイニングルームから、自分の部屋へと向かった。
「どうしたの?ナオ」
手にしていた皿をテーブルに置いて、マリアが小首をかしげた。
「知らない人がずっと後を付けてきたの」
私は後ろ手で扉を閉じる。ここまで着いてきていないと思うけれど、やっぱり心配だ。
「ここまで来れば大丈夫よ。スミスさんもいるし、私も、エーミルもいるわ」
マリアとエーミルの強さは、この間の元彼襲撃事件の時に思い知ったけれど、なんでスミスさん……?
「スミスさんは……ふふっ……ああ見えて、とても頼りになる人なのよ」
マリアは意味深に笑って、キッチンに戻った。マリアの戻ったキッチンから、クリーミーな香りがする。今日のディナーは期待できそう。
私がすっかり安心して、上の階にある自分の部屋に一旦荷物を置きに戻ろうと、二階の扉を開けた。扉を開けた先に、人が立っていた。
見たことある……!私をつけてきた人だ。
うそ、着いてきたの!
私は部屋にもう一度入り、マリアに向かって言った。
「大変!ついてきちゃった」
私の言葉を聞いて、マリアがキッチンから飛び出してきて、私を背後に追いやる。彼女の手にはヘラが握られていて、短剣のように構えている。
「なんだ、マリア、随分な出迎えだな」
私の後をつけてきた男性は、マリアの存在を認めると、大げさに肩をすくめた。
え?え??
「ジェームズ……ナオをつけ回したの?スコットランド・ヤードに通報するわよ」
マリアはヘラを指揮棒のように振って、怒っている。
「ファミリアのマリアと弟のエーミルが一緒に生活している相手と知ってね。どんな人物か調査を」
彼は、気取った口調でマリアを諫めている。英語の発音から、とても教養がありそうだ。マリアはため息をついて、背後でぼんやり事の成り行きを見ていた私の方へ振り返った。
「ナオ、紹介するわ。エーミルの兄で保護者のジェームズ。ジェームズ、こちらはルームメイトのナオよ」
エーミルの兄?え?父親では無くて?ジェームズは、四十台に見える。エーミルの父親の方が納得がいく。しかも、兄っていうことは、あれなの?トカゲもどきなの?
「正真正銘の兄弟よ。ジェームズもドラゴンなの」
「ファミリアって何?」
エーミルは、ジェームズの弟。マリアのことは、ファミリア、と言っていた。
「我ら竜族とパートナーの誓いをした者のことだ」
「パートナー……?結婚してるって言うこと?」
「違うわ。仲間とか相棒っていうほうがニュアンス的には近いわ。お互いの能力を共有しあえるの」
「能力……?」
「お互いがお互いの欠点を補い合える、というほうがわかりやすいかしら?私は竜族の力に影響されるし、ジェームズも魔女の力に影響されている」
分かったような、分からないような。
「エーミルはどこだ?イートン校に連れ帰らなければ」
「ここにいるよ」
ダイニングルームで騒いでいたからか、不機嫌そうな表情で、エーミルが立っている。マリアの部屋から出てきたようだ。
「人間に誘拐されるとか、油断のしすぎだ」
え?エーミルって、誘拐されていたの?
ジェームズの言葉に、私はエーミルとマリアの顔を見た。
「誘拐じゃ無い。僕の意思でついていったんだ」
「なおさら悪い。竜族の血を採取されただろう」
「兄弟げんかは、よそでやって」
マリアは手を叩いて、二人の言い合いを止めた。
「ジェームズ、せっかくだからディナーを食べていって」
「えー?ジェームズも一緒なの?」
エーミルが嫌がると、マリアがひと睨みして黙らせる。エーミルは、マリアの嫌がることはしないので、口をとがらせたまま、沈黙した。
マリアは、キッチンに戻ってしまったので、私はこの居心地の悪いダイニングルームから、自分の部屋へと向かった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
95
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる