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11.王と初めての謁見
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「ヘダーヤト様」
大広間に居た誰かがぽつりと呟いた。ファルリンはそれをきいて、あの時の魔術師が実はとても身分の高い人物であったことを知った。
「この魔法陣、僕が描いたんだ。古代魔法じゃ無くてオリジナルの魔法」
ヘダーヤトは、魔法陣の中心で右足で二回地面を蹴りつけると、魔法陣が消えた。しかし、已然としてファルリン以外の試験者は髪色が乳白色に輝いている。
「この魔法は、宮廷で許可されていない魔法道具や魔法を使った場合その人物の髪色を乳白色に光らせるものなんだよ」
ヘダーヤトは、話しながらゆっくりとファルリンの方へ近づいてくる。
「この少女以外は、宮廷で許可されていない魔法道具もしくは、魔法を使用しているってこと」
「あ、あら、私は貴き身分ですから、護身用の魔法道具を身につけていますわ。他のどなたかが持っているような物ではありませんの」
ファルリンに居丈高な姿勢を取っていたマハスティがヘダーヤトに反論をした。
ヘダーヤトは、ため息をついて首を振った。
「あのね、宮廷に許可されていない魔法道具を身につけているなんて、そんなの『王様を殺しに来たテロリストです!』って言っているようなものだよ。陛下は許可無い魔法道具を宮廷内で身につけていることを禁じている。貴き身分なら当然、知っているはずだろう?」
ヘダーヤトは少女に言い含めるように説明するが、まったく少女は聞き入れようとしない。それどころか、陛下が直々にそんなことを言っているのか知る権利があると言い出した。
「そもそも、そのような薄汚い娘を陛下のお側に侍らせるだ何てもっての他ですわ!私のような美しく、教養もある者がなるべきです」
ついにマハスティはファルリンを指でさしながら、自分の正当性を主張し始めた。宮廷で認められていない魔法道具を所持しているという話をうまくすり替えている。
「もうよい、そこまでにせよ」
「陛下!」
マハスティが嬉しそうな声を上げて、上を見上げた。大広間は大きな吹き抜けになっている。中二階は回廊になっていて、そこに王族が使用する特別席が用意されている。今は御簾が降り、誰がいるのかは分からない。
「陛下、聞いてくださいませ。私こそ相応しいのに、そこの薄汚い小娘がよいと、このヘボ魔術師がいうのです!」
ファルリンは、マハスティの人を罵る言葉の巧みさに関心した。ヘダーヤトは、魔術師には見えるが「優秀な」とか「偉大な」といった魔術師には見えない。ただ、実際はとても優れた魔術師なのだろうと、ファルリンは推測していた。
古代魔法ではない魔法を作り出して、自在に扱っている魔法使いなんて、神話でも、伝承でも聞いたことがない。
マハスティは瞳から大粒の月のように輝く涙をはらはらとこぼして、床に膝をつき、人の哀れを誘うような媚態をしている。床に、小さな宝石のついた貫頭衣の裾が広がって、きらきら光っていた。まさに、名前の通りに月のように美しい。
「そなたの主張はわかった。では、王の妃の力を使ってみよ。宿しているのならば可能であろう?」
「王の妃の力でございますか?やだ、陛下、そんなのおとぎ話でございましょう。王の痣に力があるなんて、神話、おとぎ話、子供の信じる空想です」
冗談がお上手ですね、とマハスティはとびきりのはにかんだ笑顔を見せる。
「まったく話にならん。では、……ひとり髪色が光っていない者がいるな」
御簾の中はこちらの様子が丸見えのようだ。ファルリンは慌てて、王族に対する最敬礼をした。
「名を名乗ることを許す」
「ラフシャーンの子ファルリンと申します」
ファルリンは、顔を床に向けたまま名前を名乗った。王への直答が許されるのは、身分の低い者にとってみれば奇跡のような出来事だ。緊張で声が震える。
「ファルリン、王の痣の力を使ってみせよ」
さきほどまで泣き崩れていたマハスティが、鬼の形相でファルリンを睨み付けた。
「承知しました。王の盾の力をお見せします。そのために王の兵士をお貸しください」
「いいだろう。見事、俺の兵士に勝ってみせよ」
あらかじめこうなることを王は予想していたのか、すぐに王宮に勤める兵士達が大広間に入ってきた。人数は四人。どれも王宮のお抱え兵士である揃いの制服を着ていて、使い込まれた剣を腰に帯びていた。
対するファルリンは、王宮に入る際に武器防具の類いはすべて預けてある。丸腰の状態だ。
「王の盾というのであれば武器も防具も無い状態で勝ってみせよ」
兵士の一人がファルリンに槍を渡そうとしたのを、ジャハーンダールは止めた。ファルリンは頷き、兵士達から距離を取った。
兵士達はファルリンを取り囲もうと四方に移動した。兵士たちが、丸腰であるファルリンに一斉に襲い掛かる。
ファルリンは、それをいとも簡単に避けると、兵士のうちの一人の懐に入り、踏み込んで鳩尾を殴る。体重の軽いファルリンの一撃ではたいした威力はないだろうとそのまま受けると、一瞬、息の詰まるような衝撃の後後方へ吹き飛んだ。
大広間に居た誰かがぽつりと呟いた。ファルリンはそれをきいて、あの時の魔術師が実はとても身分の高い人物であったことを知った。
「この魔法陣、僕が描いたんだ。古代魔法じゃ無くてオリジナルの魔法」
ヘダーヤトは、魔法陣の中心で右足で二回地面を蹴りつけると、魔法陣が消えた。しかし、已然としてファルリン以外の試験者は髪色が乳白色に輝いている。
「この魔法は、宮廷で許可されていない魔法道具や魔法を使った場合その人物の髪色を乳白色に光らせるものなんだよ」
ヘダーヤトは、話しながらゆっくりとファルリンの方へ近づいてくる。
「この少女以外は、宮廷で許可されていない魔法道具もしくは、魔法を使用しているってこと」
「あ、あら、私は貴き身分ですから、護身用の魔法道具を身につけていますわ。他のどなたかが持っているような物ではありませんの」
ファルリンに居丈高な姿勢を取っていたマハスティがヘダーヤトに反論をした。
ヘダーヤトは、ため息をついて首を振った。
「あのね、宮廷に許可されていない魔法道具を身につけているなんて、そんなの『王様を殺しに来たテロリストです!』って言っているようなものだよ。陛下は許可無い魔法道具を宮廷内で身につけていることを禁じている。貴き身分なら当然、知っているはずだろう?」
ヘダーヤトは少女に言い含めるように説明するが、まったく少女は聞き入れようとしない。それどころか、陛下が直々にそんなことを言っているのか知る権利があると言い出した。
「そもそも、そのような薄汚い娘を陛下のお側に侍らせるだ何てもっての他ですわ!私のような美しく、教養もある者がなるべきです」
ついにマハスティはファルリンを指でさしながら、自分の正当性を主張し始めた。宮廷で認められていない魔法道具を所持しているという話をうまくすり替えている。
「もうよい、そこまでにせよ」
「陛下!」
マハスティが嬉しそうな声を上げて、上を見上げた。大広間は大きな吹き抜けになっている。中二階は回廊になっていて、そこに王族が使用する特別席が用意されている。今は御簾が降り、誰がいるのかは分からない。
「陛下、聞いてくださいませ。私こそ相応しいのに、そこの薄汚い小娘がよいと、このヘボ魔術師がいうのです!」
ファルリンは、マハスティの人を罵る言葉の巧みさに関心した。ヘダーヤトは、魔術師には見えるが「優秀な」とか「偉大な」といった魔術師には見えない。ただ、実際はとても優れた魔術師なのだろうと、ファルリンは推測していた。
古代魔法ではない魔法を作り出して、自在に扱っている魔法使いなんて、神話でも、伝承でも聞いたことがない。
マハスティは瞳から大粒の月のように輝く涙をはらはらとこぼして、床に膝をつき、人の哀れを誘うような媚態をしている。床に、小さな宝石のついた貫頭衣の裾が広がって、きらきら光っていた。まさに、名前の通りに月のように美しい。
「そなたの主張はわかった。では、王の妃の力を使ってみよ。宿しているのならば可能であろう?」
「王の妃の力でございますか?やだ、陛下、そんなのおとぎ話でございましょう。王の痣に力があるなんて、神話、おとぎ話、子供の信じる空想です」
冗談がお上手ですね、とマハスティはとびきりのはにかんだ笑顔を見せる。
「まったく話にならん。では、……ひとり髪色が光っていない者がいるな」
御簾の中はこちらの様子が丸見えのようだ。ファルリンは慌てて、王族に対する最敬礼をした。
「名を名乗ることを許す」
「ラフシャーンの子ファルリンと申します」
ファルリンは、顔を床に向けたまま名前を名乗った。王への直答が許されるのは、身分の低い者にとってみれば奇跡のような出来事だ。緊張で声が震える。
「ファルリン、王の痣の力を使ってみせよ」
さきほどまで泣き崩れていたマハスティが、鬼の形相でファルリンを睨み付けた。
「承知しました。王の盾の力をお見せします。そのために王の兵士をお貸しください」
「いいだろう。見事、俺の兵士に勝ってみせよ」
あらかじめこうなることを王は予想していたのか、すぐに王宮に勤める兵士達が大広間に入ってきた。人数は四人。どれも王宮のお抱え兵士である揃いの制服を着ていて、使い込まれた剣を腰に帯びていた。
対するファルリンは、王宮に入る際に武器防具の類いはすべて預けてある。丸腰の状態だ。
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兵士達はファルリンを取り囲もうと四方に移動した。兵士たちが、丸腰であるファルリンに一斉に襲い掛かる。
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