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15.ファルリンの実力
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最初に切り込んだのはモラードだった。近衛騎士団で鍛えあげた肉体で曲刀を振り下ろす。体重をかけての重い一撃を、ファルリンは受けることなく後ろに飛び退いた。モラードは舌打ちをして、さらにファルリンに切りつける。すべてを避けて、ファルリンは、後方へ飛び退いた。
「卑怯だぞ。逃げるのか」
(あんな重い一撃受けられるわけないでしょ)
ファルリンは、モラードの挑発には乗らず、剣を構えたまま口の中で呪文を唱え始める。
(日の光、焼け付く太陽の煌めき、一点に集まれ)
何の呪文を使うのか悟られないように、声の大きさは最小限にし、ファルリンはモラードとの距離をつめた。モラードは切り込む好機ととらえ、大股でファルリンとの距離をつめ、剣を大きく振りかぶる。
その瞬間、モラードの目の前が眩しく光る。思わず目を瞑ったモラードの無防備な横っ腹をファルリンは、蹴り飛ばした。
地面に転がったモラードの首筋にファルリンは剣先をつきつけた。
「私の勝ちです」
ファルリンは高らかに宣言をした。あっという間の展開に、アーラードとピルーズ以外の近衛騎士たちは唖然としていた。
「すごい、見事な戦い方だね。とっても実践向き。貴女がモラードの剣を受けていたら、重くてひとたまりも無かったはず。避けることを選ぶなんて慣れている証拠だ」
ピルーズが、文句を言いたそうなモラードを制してファルリンを讃えた。
「モラードだって、王の盾相手なんだから、魔法ぐらい普通に使うって思ったでしょ?俺だって使うんだから」
ピルーズは、転がったモラードが起き上がるのを手伝い背中についた埃を払ってやりながら言った。ピルーズは、ムードメーカーのようでモラードのぎすぎすしていた雰囲気がピルーズによって、和らいでいった。
「ま、そうだな。今回は俺の油断だ。あんたはこの近衛騎士団の一員だ」
「ファルリンです」
「よろしくな、ファルリン」
「なんか、青春って感じだね-」
のんびりとした声が、ファルリンとモラードの会話に割り込んできた。どこから見ていたのかヘダーヤトがメフルダードを連れて訓練場にきていた。ヘダーヤトの後ろにいるメフルダードは、ファルリンが今朝会ったときよりも、すこぶる機嫌が悪そうだった。
「ヘダーヤト、何かあったのか?」
近衛騎士団長のアーラードが、滅多に訓練場に顔を出さないヘダーヤトの登場に緊急事態かと緊張して聞き返す。
「今度の合同訓練なんだけど、魔術師団側のメンバーの変更を伝えに来たのと、三人の王の痣が力を合わせたらどういう作用があるのか確認したくてね」
「合同訓練のメンバーはどう変わるんだ?」
「僕と、このメフルダードだ」
「わかった。こちらは変更なしだ」
ヘダーヤトとアーラードは、王の痣の持ち主三人の力を合わせて使うと、どのようなことが起きるのか、この場所を使っても大丈夫なのかと色々と話をつめはじめた。
メフルダードは、すばやくファルリンの隣に行った。
「機嫌良さそうですね」
「そういうメフルダード様は、機嫌が悪そうです」
「……メフルダード、と呼んでください」
「はい、メフルダード」
あまりに素直に返事をするファルリンに、ジャハーンダールは騙されやすそうなタイプだ、と少し心配になる。
「困ったことがあれば僕になんでも言ってくださいね」
言葉はファルリンに向けてだが、ジャハーンダールは素早く近衛騎士達を見回す。分かりやすく牽制をしているのだ。
(この従順な性格を利用して、良からぬことを吹き込まれても困るしな)
「ピルーズ、ファルリン、こちらに」
アーラードに呼ばれて、ファルリンはメフルダードに一礼してアーラードとヘダーヤトの待っている方へ駆けていく。近衛騎士団の貫頭衣の裾が、ジャハーンダールを誘うようにひらりと揺れた。
ファルリンは、ヘダーヤトに言われるがままにヘダーヤトが地面に描いた魔法陣の上に立った。
「王の槍であるピルーズと王の魔術師である僕、そしてファルリンの三人で魔法が使えるはずなんだ」
ヘダーヤトは、執務をしながら王宮の書庫に通いかつて王の痣を宿す物達が使えた魔法を調べていた。
特に、目をつけたのは城壁の防御力を上げる魔法だ。
「王の盾がいるから、城壁の防御力を上げることができるはずだ」
ピルーズも魔法陣の上に立ち、ヘダーヤトが古代語で呪文を唱え始める。ヘダーヤトの目が、わずかに金色に煌く。魔法陣が乳白色に光りだし、それに合わせてファルリンの気分も高揚する。
ヘダーヤトが、呪文を唱え終わると魔法陣から光の線が一直線に空へ伸びて消えた。
「呪文はひとまず成功したみたいだね。効果は後で確認するとしよう」
邪魔したね、とヘダーヤトはメフルダードを連れて訓練場を後にした。
「卑怯だぞ。逃げるのか」
(あんな重い一撃受けられるわけないでしょ)
ファルリンは、モラードの挑発には乗らず、剣を構えたまま口の中で呪文を唱え始める。
(日の光、焼け付く太陽の煌めき、一点に集まれ)
何の呪文を使うのか悟られないように、声の大きさは最小限にし、ファルリンはモラードとの距離をつめた。モラードは切り込む好機ととらえ、大股でファルリンとの距離をつめ、剣を大きく振りかぶる。
その瞬間、モラードの目の前が眩しく光る。思わず目を瞑ったモラードの無防備な横っ腹をファルリンは、蹴り飛ばした。
地面に転がったモラードの首筋にファルリンは剣先をつきつけた。
「私の勝ちです」
ファルリンは高らかに宣言をした。あっという間の展開に、アーラードとピルーズ以外の近衛騎士たちは唖然としていた。
「すごい、見事な戦い方だね。とっても実践向き。貴女がモラードの剣を受けていたら、重くてひとたまりも無かったはず。避けることを選ぶなんて慣れている証拠だ」
ピルーズが、文句を言いたそうなモラードを制してファルリンを讃えた。
「モラードだって、王の盾相手なんだから、魔法ぐらい普通に使うって思ったでしょ?俺だって使うんだから」
ピルーズは、転がったモラードが起き上がるのを手伝い背中についた埃を払ってやりながら言った。ピルーズは、ムードメーカーのようでモラードのぎすぎすしていた雰囲気がピルーズによって、和らいでいった。
「ま、そうだな。今回は俺の油断だ。あんたはこの近衛騎士団の一員だ」
「ファルリンです」
「よろしくな、ファルリン」
「なんか、青春って感じだね-」
のんびりとした声が、ファルリンとモラードの会話に割り込んできた。どこから見ていたのかヘダーヤトがメフルダードを連れて訓練場にきていた。ヘダーヤトの後ろにいるメフルダードは、ファルリンが今朝会ったときよりも、すこぶる機嫌が悪そうだった。
「ヘダーヤト、何かあったのか?」
近衛騎士団長のアーラードが、滅多に訓練場に顔を出さないヘダーヤトの登場に緊急事態かと緊張して聞き返す。
「今度の合同訓練なんだけど、魔術師団側のメンバーの変更を伝えに来たのと、三人の王の痣が力を合わせたらどういう作用があるのか確認したくてね」
「合同訓練のメンバーはどう変わるんだ?」
「僕と、このメフルダードだ」
「わかった。こちらは変更なしだ」
ヘダーヤトとアーラードは、王の痣の持ち主三人の力を合わせて使うと、どのようなことが起きるのか、この場所を使っても大丈夫なのかと色々と話をつめはじめた。
メフルダードは、すばやくファルリンの隣に行った。
「機嫌良さそうですね」
「そういうメフルダード様は、機嫌が悪そうです」
「……メフルダード、と呼んでください」
「はい、メフルダード」
あまりに素直に返事をするファルリンに、ジャハーンダールは騙されやすそうなタイプだ、と少し心配になる。
「困ったことがあれば僕になんでも言ってくださいね」
言葉はファルリンに向けてだが、ジャハーンダールは素早く近衛騎士達を見回す。分かりやすく牽制をしているのだ。
(この従順な性格を利用して、良からぬことを吹き込まれても困るしな)
「ピルーズ、ファルリン、こちらに」
アーラードに呼ばれて、ファルリンはメフルダードに一礼してアーラードとヘダーヤトの待っている方へ駆けていく。近衛騎士団の貫頭衣の裾が、ジャハーンダールを誘うようにひらりと揺れた。
ファルリンは、ヘダーヤトに言われるがままにヘダーヤトが地面に描いた魔法陣の上に立った。
「王の槍であるピルーズと王の魔術師である僕、そしてファルリンの三人で魔法が使えるはずなんだ」
ヘダーヤトは、執務をしながら王宮の書庫に通いかつて王の痣を宿す物達が使えた魔法を調べていた。
特に、目をつけたのは城壁の防御力を上げる魔法だ。
「王の盾がいるから、城壁の防御力を上げることができるはずだ」
ピルーズも魔法陣の上に立ち、ヘダーヤトが古代語で呪文を唱え始める。ヘダーヤトの目が、わずかに金色に煌く。魔法陣が乳白色に光りだし、それに合わせてファルリンの気分も高揚する。
ヘダーヤトが、呪文を唱え終わると魔法陣から光の線が一直線に空へ伸びて消えた。
「呪文はひとまず成功したみたいだね。効果は後で確認するとしよう」
邪魔したね、とヘダーヤトはメフルダードを連れて訓練場を後にした。
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