11 / 32
1
10
しおりを挟む
+++
「この先」
訪(おと)なうことは龍生にも報告した上で、流夜は在義に同行していた。
今日、この病院を訪れること、降渡と吹雪は知っている。
後から探られるのも嫌だし、二人を経由して咲桜の耳に入るのも嫌だった。
話すなら、自分から。そう思って、事前に話しておいた。
降渡から、かなり強めに背中を叩かれた。
吹雪には、「そう。頑張れ」と言われた。
吹雪に応援されるなんて、自分はそんな危うい顔でもしていたのか。
ちらっと、先を歩く在義を見る。
「あ、在義さん?」
「なんだ?」
「あの……怒ってます?」
「……は?」
ものすごく胡乱、かつ挑発的な瞳で睨まれた。
完全に怒っていらっしゃる。やばい。逃げたい。在義から。
「怒ってないわけないだろう。ここに来るといつもイライラするよ」
「そ、そうですか……。すみません、俺が頼んでしまったから――」
「言って置くが」
在義は足を停めて振り返った。
完全に、『公人としての華取在義』の顔。
――そして、『華取在義個人』の瞳で流夜を見る。
うわあ……一番キケンな時の在義に逢ってしまった……。
流夜、本気で逃げ出したくなった。このカオと瞳が苦手なのは弟も一緒だった。
「今の君に、私は被害者遺族という立ち位置を強いるしかない。しかし、本来なら許されない場所まで君を導いているのは、君が『私』の娘の婚約者だったからだ」
「……どちらでいるかを、選べと?」
「後者であることを心掛けなさい。……君には少し大変な場所になるだろう」
「………」
『彼女』を、華取桃子としてしか見るな、と。
大変であることは、承知の上だ。
「この先」
訪(おと)なうことは龍生にも報告した上で、流夜は在義に同行していた。
今日、この病院を訪れること、降渡と吹雪は知っている。
後から探られるのも嫌だし、二人を経由して咲桜の耳に入るのも嫌だった。
話すなら、自分から。そう思って、事前に話しておいた。
降渡から、かなり強めに背中を叩かれた。
吹雪には、「そう。頑張れ」と言われた。
吹雪に応援されるなんて、自分はそんな危うい顔でもしていたのか。
ちらっと、先を歩く在義を見る。
「あ、在義さん?」
「なんだ?」
「あの……怒ってます?」
「……は?」
ものすごく胡乱、かつ挑発的な瞳で睨まれた。
完全に怒っていらっしゃる。やばい。逃げたい。在義から。
「怒ってないわけないだろう。ここに来るといつもイライラするよ」
「そ、そうですか……。すみません、俺が頼んでしまったから――」
「言って置くが」
在義は足を停めて振り返った。
完全に、『公人としての華取在義』の顔。
――そして、『華取在義個人』の瞳で流夜を見る。
うわあ……一番キケンな時の在義に逢ってしまった……。
流夜、本気で逃げ出したくなった。このカオと瞳が苦手なのは弟も一緒だった。
「今の君に、私は被害者遺族という立ち位置を強いるしかない。しかし、本来なら許されない場所まで君を導いているのは、君が『私』の娘の婚約者だったからだ」
「……どちらでいるかを、選べと?」
「後者であることを心掛けなさい。……君には少し大変な場所になるだろう」
「………」
『彼女』を、華取桃子としてしか見るな、と。
大変であることは、承知の上だ。
0
あなたにおすすめの小説
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
烏の王と宵の花嫁
水川サキ
キャラ文芸
吸血鬼の末裔として生まれた華族の娘、月夜は家族から虐げられ孤独に生きていた。
唯一の慰めは、年に一度届く〈からす〉からの手紙。
その送り主は太陽の化身と称される上級華族、縁樹だった。
ある日、姉の縁談相手を誤って傷つけた月夜は、父に遊郭へ売られそうになり屋敷を脱出するが、陽の下で倒れてしまう。
死を覚悟した瞬間〈からす〉の正体である縁樹が現れ、互いの思惑から契約結婚を結ぶことになる。
※初出2024年7月
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】あやかし団地 管理人見習い日誌
双月ねむる
キャラ文芸
就活全滅で「自分には社会性がない」と思い込む凛は、遠縁の親戚に紹介され、昭和レトロな巨大団地・さくらヶ丘第一団地の『管理人見習い』として住み込みで働くことに。しかしその団地には、中庭の「靴鳴らし」、エレベーター表示盤に棲む狐など、団地限定あやかし達が当たり前のように暮らしていた。
最初は逃げ腰の凛だったが、すねた空き部屋や、ベランダの風鈴が告げるSOSなど、人とあやかしのトラブルに巻き込まれながら、少しずつ『共同体』に関わる勇気を取り戻していく。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
ヤクザに医官はおりません
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした
会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。
シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。
無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。
反社会組織の集まりか!
ヤ◯ザに見初められたら逃げられない?
勘違いから始まる異文化交流のお話です。
※もちろんフィクションです。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる