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5 あの日、あの神殿で
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しおりを挟むサクヤは厳しい眼差しをする。
「……ええ。これは、ツカサ様が管理しなければならないものです。ですから私が出てきました。ツカサ様には無断で来ましたが。……良いのですか? 巫女殿は、龍神殿の巫女であり、榊殿とは婚約をされておいででは……」
サクヤの心配に、巫女はなんとか動く首を、軽く横に振った。
「私は、人間です。龍神様の声を届けるために神殿に在ることをゆるされてきましたが、本質は人なのです。神格にも、人間にも、どちらにも傾くことは出来ます。だから、中立でいなければならないのです。……榊様に、龍神様に、お別れを言えないのは淋しく辛いです……ですが、私の罪は私のものです。瘴気の神殿への侵入をゆるし、あまつさえ取り込まれてしまった……私も、代償を払わねばなりません」
次の自分に託す。これはもはや賭けだ。
次の自分が榊の近くに存在できるかはわからないし、そもそも生まれ変われるかもわからない。
この身に浴び過ぎた瘴気がある限り、巫女は眠って浄化を続けなければならないのだ。
「……承知しました。では、私一人の胸に留め、巫女殿をお送りしましょう」
サクヤが、凛とした声で言い切った。
「ありがとう、ございます……。サクヤ様、一度でも貴女様のお声が聞けてよかった。どうぞ、ツカサ様と、お幸せに……」
「巫女殿も、いつか必ず、榊殿と……」
「……はい」
巫女の姿が光に包まれ消えていく。
サクヤは瞑目し、巫女の魂が迷わず黄泉路(よみじ)を歩けるよう、祈った。
そして幾年の彼方でも、榊の傍近くに、生まれられるように……。
END.
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