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5 鬼人
side真紅6
しおりを挟む『期日が迫って母上の術の効力が切れているか、真紅の内側から力があふれているか……俺には、後者のように思える。今はまだ母上の結界の膜があるから抑えられているけど、真紅から霊力の波動が視える。誕生日を迎える前にも、真紅には何らか、霊的な影響があるかもしれない』
そのときはまだ心のうちでは、そんなこと、と笑えた。
笑えなくなったのは、病院を出て夕陽を見た時だ。
一気に甦った来た、置いて来た記憶。
私を襲ったものを、私ははっきり見ていた。
いや、視ていた。
今だから理解出来るモノ。
闇色の――あれは翼? を背にして、刀を私に向けて来た、ヒトの形をしたなにか。
私は逃げようとしなかった。
逃げても、四方八方を囲まれていると気づいていた。
何も視えていないはずだ。
今までおばけや幽霊なんて見たことはなくて、黒藤さんも、私は見鬼の力ですら封じられていると言っていた。
たぶん、視えていたことに、あの夜と同じ夕陽を見て、気づいたのかもしれない。
けれど、黎と帰っているときは何も視えなかった。
その理由はわからないけど……。
私の身のうちから、あふれるものがある。
今まで閉じ込められていたモノ。無理に鍵をかけていたから、飛び出そうと暴れている。
身に添わない、大きすぎる力。
なにがきっかけ? それとも、リミットが迫っているから?
黎。
……逢えてももう、謝れもしないかもしれない。
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