それつけたの、俺だよ?-六花の恋5ー【完】

桜月真澄

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一 休日は図書館で

side千波5

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今更だけど、わたしはこの男の子を知らない。

あっさり話しかけてきたり、普通に会話したり、軟派っぽい人だったら離れたい……。男の子に免疫ないし……。

男の子は、一度大きく目を見開いた。

「あ、いきなり声かけたから? 間違えてないよ。ずっと上見てるけど近くに台がなかったから、必要なのあったら取ってあげようと思っただけ」

あ、そういうこと? 確かに高い場所のを取るとき用の移動式階段、近くにはなかった……。

じゃあただの気が利く人?

「でしたか。お手数おかけしまた」

わたしが軽く頭を下げると、男の子は困ったように顔をくしゃりとさせた。

「こっちこそいきなり失礼だった。ごめんね。あと、いつまでも知らない人はいやだから……俺は藍田玲哉(あいだ れいや)っていいます。高一」

「同い年でしたか。てっきり年上かと……。坂野千波です」

名乗ると、藍田くんはじっとわたしを見て来た。あ、いつもの来るかな。最近ではからかわれる前にアザのこと、先手を打って自虐ネタにしてるから――

「この――」

「千波ちゃん」

「……へ?」

「て、呼んでもいい?」

にっこりと首を傾げて言う男の子。

自分の左頬をさしていた指が行き場を失ってしまった。

や、やっぱり軟派な人か……! すっと自分の顔が真顔になるのがわかった。

「すみません、わたし男の人と親しくする気ないので、これで失礼します」

「ちょ――」

素早く頭を下げて、適当に本を五、六冊引き抜いて踵を返した。

こういう人とは関わらないのが一番だ。

からかわれなくても、男の人と話すの得意じゃないし。

……そんな感じでわたしは逃げた。はずなのに。

「………」

自習席で本を開くわたしの隣に、藍田くんがいた。

そして何故かわたしをガン見してくる。

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