あたし、魔女だよ?【完】

桜月真澄

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2 天瀬

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(……俺は祓魔師の家だけど、永久子の家に対して何かするわけじゃない……でも、隠してる。隠さなくちゃいけない)

和仁の家は、表立って祓魔師を名乗っているわけではない。いわゆる裏家業というやつだ。

裏家業が、その世界のトップだ。

天瀬家は祖父当主を頂点に、次期当主の和仁の父、そしてその後継者候補として和仁がある。

父が当主を継いだ時、次期当主が決められるが、それに一番近いのは現状和仁だった。

祓魔師の家に生まれ、生れながらに和仁には定められた道がある。

和仁は祖父に反抗しながらも、一人で家を出ようとはしないし祓魔師修行を放棄することもない。

和仁が高校に進学するというとき、祖父は学校に行くよりも家で仕事をした方がいいと言い出した。

だが和仁が、「成人したら家の仕事一本に集中する。表も裏も、俺が継ぐことに異論はない。大学まで行かせてほしいとは言わない。だけど高校だけは行きたい」と主張して、両親が和仁の味方についたため、一族会議が開かれた。

議題は、「和仁の進学問題について」だ。

結果、祖父以外の全員が和仁の進学に賛成した。

むしろ、「今の時世、若様に進学の意思があり金銭的な問題もないのだから高校くらいは行っていいだろう」と、反対に祖父が怒られることになった。

そのときはこっそりほくそ笑んだ和仁だ。

――和仁は、いずれ天瀬家を継いでいくのは自分認識してである可能性が高いと認識している。

それに異を唱えられるほどの失態と職務放棄はしないと決めていた。

……そう決めて進学した高校で隣の席になったのが、夢宮永久子だった。

そして永久子が、まさかの自称魔女。

異国の血が入っているとなれば、何かしらの異邦の妖異の血を継いでいる可能性が高い。

メドゥーサ、ヴァンパイア、サキュバス……土着(どちゃく)したその国特有の妖異はごまんとある。

和仁の力をもってすればそこを解析することも出来るが、したところでどうしようというのだ。

人とあやかしの混血を退治ることは天瀬の仕事ではない。

人に害をなすあやかしを祓うのが、祓魔師の仕事だ。

永久子はごく普通の人間として生きている。

天瀬の出番ではないが、夢宮家からしたら天瀬は天敵だろう。

――知られたら嫌われるのは、きっと自分の方だ。

「……永久子の家がそういう家で、何か家業的なものってあるの?」

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