陽華の吸血鬼➁【完】

桜月真澄

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3 企み

side真紅3

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「……えっ? 黎⁉」

現れたのは黒ちゃんではなく、呆気に取られた顔の黎だった。

「えっ、どうしたのっ? あ、私はママと紅緒様を待ってるんだけど――」

「……俺も紅亜様を待っている……はずなんだが……」

「え」

「………紅亜様に、今日ここへ来ないと後悔すると言われて」

「ママが呼び出したの? ダブルブッキング?」

黎もママを待っている? 状況がわからずにぽかんとしてしまった私を見て、黎はスマートフォンを取り出した。

「ちょっと待ってろ。紅亜様に訊く」

「え、あ、うん?」

黎がこっちへ来いと手招くので、隣に立ってスマートフォンに耳を近づけてみた。

『はーい。黎くん、真紅ちゃんとは逢えた?』

「逢えたというか、今隣にいますが……真紅がいるとは聞いていませんが」

「私も黎がママと待ち合わせしてるとか聞いてないよ?」

思わず私も言った。電話の向こうのママがあまりにあっけらかんとしているから。

『真紅ちゃん、今日はママも紅緒も合流しないから、二人でお出かけでもしてきたら?』

「「はっ?」」

私と黎の声が重なると、ママはくすくすと笑った。

『ここのところ、家のことでいっぱいだったでしょ。たまの息抜きよ。黎く――

『姉様! なんてことをなさるんですか! 真紅を黎明のと一緒にいさせるなんて!』

『恋人同士なんだから一緒にいてもいいでしょー?』

『わたくしは認めていません! まだ審査中です!』

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