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3 企み
side真紅6
しおりを挟む「最初に逢ったときが、あれだったしねえ」
最初の黎は、吸血鬼だった。
今は鬼性(きしょう)を失った黎と、反対に陰陽師としての力を取り戻した私。
こうして、並んで歩けるなんて思っていなかった。
「……思い出させて申し訳ないけど、真紅を襲った奴のこと、黒藤たちは何か言ってたか?」
「烏天狗、だって。やっぱり私の力目当てだったみたい。私はまだ接触してないけど、白ちゃんと黒ちゃんが応対してくれて――」
「うん?」
「……烏天狗、全部が黒ちゃんの配下に下ったんだって……」
「……相変わらずだな、黒藤は」
私は片手で額を押さえた。
烏天狗は妖異の中でも高位の妖だと聞いた。
その総てを、黒ちゃんは降伏させたのだ。
黒ちゃんの力は桁違いだ。しかし、配下となっただけで、式に下ったわけではない。
黒ちゃんの式は、無月さんたち三基だけだ。
「黎は黒ちゃんのこと、どのくらい知ってるの?」
「黒藤か? 本家筋の奴のくせに放浪癖があるとか、正統後継者のくせに家のことは投げたとか。小埜は分家だから、宗家(そうけ)の噂程度に黒藤のことは聞いていた。小埜のじいさんのこと訪ねてきたことがあって、それ以来顔見知りだな。深くは知らないし、親しいわけでもない」
黎の言葉を聞いて、ふーむと頭の中でうなった。
ということは、黎は白ちゃんのこと――本当は女性だということ――は、もちろん知らないのだろう。
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