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二 優しさをもらった気がした。
side流夜2
しおりを挟む愛子も暇な奴ではなく、むしろかなり忙しい方の仕事をしているので、今日明日でまた行動を起こすことはないだろう。
明日、学校で隙を見て話す時間を作るか。
……あ、そう言えば。
愛子を介して自分の連絡先は把握しているようだが、華取の携帯番号なんかは知らなかった。
……学校に届けてあるのを確認すればすぐわかることだけど、なんだかそういうルートは使いたくない気がする。
やはり今日のうちに連絡を取る方法だけでも作っておくか……そう考えながら箸を動かしていると、在義さんが口を開いた。
「そう言えば、流夜くんはうちに来るの初めてだったか?」
「はい。お誘いはいただいてましたけど……」
今日みたいに夜遅くまで手伝ったときなんかに、「ご飯を食べていきなさい」と言われたことはある。
本署から在義さんの家までは、車を使えば割かし近い。
俺は、在義さんに娘がいることを知っていたから断っていた。
教職についたのをきっかけに住み始めた場所が華取家と近くなだけに、どこから自分の本業がばれるかわからなかったからだ。
まだ、自分が警察に関わっていることが学校側にばれるわけにはいかないからだ。
……用心していたのに、愛子の所為で今日その苦労が水の泡になった。
だが、華取も口外するような奴ではないだろうから、そこは安心している。
「可愛い娘だろう」
「………そうですね」
唐突にこの人は……と、少し疲れた声が出てしまった。
在義さんから振ったこの手の話を、否定なんかしようものならどんな目に遭うかわからない。
かと言って、積極的に賛同したところで睨まれそうな気がする。
在義さんの親バカは警察内では有名だった。
いつも写真を持ち歩いているけど、惚れられたら困るとか言って男性職員には絶対に写真を見せないとか。
そのため、華取宅に呼ばれて咲桜を見た人は、その容姿や性格について訊かれても、口を噤まないといけないという暗黙の了解があるそうだ。
まあ、俺は内部の人間ではないし、教師として華取のことは把握していたわけだが。
しかし改めて華取を見て、在義さんが親バカになる理由がなんとなく納得出来た感じだ。
たまに攻撃的に物騒な言動をとるけど、基本的によく笑うし愛らしい。
料理も上手。これは在義さんが自慢したくなるのも肯ける。
学校でも目立つ方ではないけど、それは面差しに年齢よりも大分落ち着きがみられるからだと思う。
高校生くらいは派手な容姿の方が、人気があると言うか、注目されやすいからだ。
「……あの子には苦労ばかりかけたからね」
ふと響く在義さんの声は沈んでいた。
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