朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】

桜月真澄

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五 じゃあ、もらおうか。

side流夜4

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「華取が知ってるって言っていた。在義さんの友達だから、家にも来るって。お前は知ってたのか?」


「いや? 在義さんに娘がいるのは知ってたけど、詳しいことは。そっちは? ガッコの生徒だったんだろ?」


「一応認識してはいたけど、バラす気もなかったから関わらないようにしてた。だから愛子が連れてきたのが華取とか……あいつは俺を辞めさせたいのか」


チッと思いっきり悪態をつく俺を、降渡は当然のように笑う。


「そりゃそうだろ。愛子がお前を警察機構に入れたいのは公然の事実じゃん。どこから足元掬われるかわかんねーぞ?」


「……気を付けても意味ねえんだよな、あいつは……」


歩く地雷原とあだ名されるキャリア警察官。


長年の愛子との付き合いで、それは身に染みていた。


愛子の傍で本心からニコニコしていることが出来るなんて、吹雪くらいのものだ。


「本当に――憧れちまったら終わりだな。邪道優等生と正道不良。いいコンビじゃねえか。越えるけど」


「当然」







駐車スペースは三台ほどの駐車場に停まった。喫茶店《白(シロ)》の駐車場だ。


街角の喫茶店は、カウンター席が九つと、テーブル席が五つ。


扉には猫の首輪についているような、大振りの鈴がある。


鳴ると奥の方からガタイのいい強面で壮年の男性が出てきた。時間も遅いからか、他に客はいなかった。


「おう、来たのか」


「久しぶりー、龍さん」


「降渡に連れて来られた。なにかあったの?」


降渡が先を歩いて、一番奥まったカウンター席につく。


店主・二宮龍生(にのみや りゅうせい)さんはカウンターの中だ。


元ノンキャリ刑事の、現ここの店主。


「なにかあったじゃねえよ。お前、在義の娘と婚約したんだって?」


「!」


ガクン、とカウンターについていた肘が折れた。


……なんで知っている。俺は顔をあげられないまま問う。


「……龍さん、どこでそれを……」


「在義が絡んできた」


龍さんはさらっと言った。まさかの在義さん発信源だと⁉ なんか、裏切られた気分になった。

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