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六 私今ものすごくドキドキしてます。
side咲桜1
しおりを挟むび、びっくりした……! 私はキッチンのへりに手を突いて、心臓のあたりを押さえて呼吸を整えようと必死だった。
なんで今のタイミングでかはわからないけど、大きく心臓が脈打った。今もドクドク叫んでいる。うわーっ、なんなの! 私死ぬの⁉
先生が言った言葉の意味なんて、私の保護者が在義父さんだから逆らわない方がいい、とかそういう意味だよっ。……それでも顔が熱くなるのはなんで!
ちらりと後ろを見遣ると、先生は私が渡したスポーツドリンクのボトルを揺らして眺めている。珍しいものでも見ているような感じだ。って言うか余裕だな! 人の心臓壊しかけておいて!
「ここも遙音に聞いたのか?」
「あ、はい」
平静、平静、平穏無事、平安時代。一人だけ動揺しているのを知られたくなくて、先生の方は向かずに出来るだけ落ち着いた声を出すよう心掛けた。
「放課後、先輩が私のとこに来たんです。笑満が委員会の用事でいなくて、私だけ話すことになって……頼はまだ寝てたし。先生の知り合いなら連絡先交換しようよって。それで、なんか私がお弁当作ってること知ってたみたいで。どうせだったら作りに行った方が早くないか、とか、先生風邪ひいてるみたいだから、とか言われまして。お邪魔しました」
連絡なしの来訪だったから、と最後の言葉と一緒に先生の方に頭を下げると、突然背中を向けられた。
……あれ? 怒らしちゃった? まずいこと言っちゃったかな?
「あのー、本当ご飯作ったらすぐ帰るので……」
そんなに嫌だったかな……。
そう思ったとき、外で轟音が響いた。突然のことに私の肩が跳ねた。
雷だ。合わせるように、強い雨が風に吹かれて窓を叩き出した。
「降ってきたか……」
先生は窓の外を見ながら呟いた。
怒っては……ない、かな? 声の感じは普段話しているときと変わらない。
雨降って来ちゃったし、ほんと、早くご飯作って先生を寝かせて帰ろう。
休み方がわからないとかこっちが前後不覚になりそうなこと言っていたけど、寝かせちゃえばなんとかなるでしょ。
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