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八 先生、咲桜になにしたんですか?
side咲桜3
しおりを挟む私は顔を隠したままなので、笑満がどんな風ににやにやしているかはわからない。にやにやしていることはわかるけど。
「ええと……発作を落ち着けるため、だと。……流夜くんからです」
「それで落ち着いたんだ? 流夜くんすごいね」
「うん……」
少しだけ肯く。
笑満も、私の発作を目の当たりにしたことはある。その折は、対処法を知るお隣のお姉さんを呼びに行ったり、結構迷惑をかけてしまった。それが抱きしめられて収まってしまうとは。……流夜くん、ほんとに何モノだ? そして笑満も『流夜くん』って呼ぶのか。
「あたしも流夜くんに師事しようかなー」
な、なんの弟子入りをする気だ? 私はまだ恥ずかしさが引かなくて、顔を隠していた。
「それで――抱きしめられていて、寝ちゃった、と?」
「そこまでしか憶えてない……」
「それでいいんじゃないの? 発作起こして、流夜くんの腕で安心して寝ちゃったってことじゃないの? なんてゆうか聞いた感じ、怖くて泣いちゃった子どもを寝かしつける親みたいだよ」
おおう、的確な指摘。笑満の感想に思わず肯きそうになってしまった。けど、続き、みたいなのがあるんだよ……。
「そうなんだけど……起きたとき、私流夜くんの右腕にしがみついてたんだよ。流夜くんが、それが解けなかったから一緒に寝た、って言ってて。私、そんなことした記憶がないのと、あと私が一緒に寝る羽目になったことを、『原因は自分だ』って言ったり、『もしかして忘れたか?』とも言ってたの。……私なにかやらかしたよ、絶対」
私の言葉に、笑満は唸った。
「ふむ。でも、危ないことではなさそうだよね? 一線超えちゃったとか」
「ないよ⁉」
「あったら流夜くん、在義パパに殺されてるでしょ。朝、一緒におうち行ったんでしょ?」
笑満は実にあっさりした口調だった。笑満のあまり騒がないところも私はすきだった。が、今は冷静すぎて恨めしい。
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