朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】

桜月真澄

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八 先生、咲桜になにしたんですか?

side咲桜5

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「なにしたって……」

「別に咎めるわけじゃないですよ。ただ、咲桜が憶えてなくて不安そうだったから訊きにきただけです。あたしに隠し立てするようなことがなければいいんです。あ、別にあたしに隠し立てすることがあっても、咲桜が納得するんならいいですけど」

ね? と微笑んで見せた笑満。私が納得するんならいいのか。

「……わかった。咲桜に説明するから、松生は下がってもらってもいいか?」

「どこまで下がればいいですか? 教室の外? それとも自分のクラス?」

ここで教室の外、と答えたら、まあ盗み聞かれるんだろうな、と私もわかった。流夜くんもそこまでは見当がついているようで、苦い顔をした。

「出来ればクラスで待っていてくれ。本鈴までには帰すから」

「あたしに隠し立てたいことをしたんですね」

鋭い一言に、反射的に私の肩がびくっと震えた。ま、まさか……? 不安になる私の視線を受けてか、流夜くんは一度瞼を伏せた。

「そういうわけだ。頼まれてくれるか」

「……咲桜、頑張ってね」

流夜くんの応答を聞いて、笑満は私の肩に手を置いてから静かに出て行った。

残されて、もう泣きそうだった。自分なにしたんだよーっ! お願い笑満戻って来て―っ! 心の中で叫びまくっていると、流夜くんの視線を感じた。

「咲桜、」

「はうっ、ごめんなさいっ!」

「いや、だから謝るのは俺の方なんだって」

流夜くんは椅子を立って、私の傍まで歩み寄った。

「なんでそんな顔をする」

色々な不安が怯えに変わっている私に、流夜くんは不思議そうな顔だ。

「だ、って……私、流夜くんが淋しくなるようなことをしたんじゃ……?」

その答えが意外だったのか、流夜くんは目を見開いた。

「今朝、そんな風に見えて……」

離れた背中が、そう見えて。言うと、流夜くんはゆっくり喋り出した。

「そんな風に見えていたのか?」

「う、ん……」

私はびくつきながら肯く。流夜くんは手を口元にあてて何か思案している。

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