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八 先生、咲桜になにしたんですか?
side咲桜5
しおりを挟む「なにしたって……」
「別に咎めるわけじゃないですよ。ただ、咲桜が憶えてなくて不安そうだったから訊きにきただけです。あたしに隠し立てするようなことがなければいいんです。あ、別にあたしに隠し立てすることがあっても、咲桜が納得するんならいいですけど」
ね? と微笑んで見せた笑満。私が納得するんならいいのか。
「……わかった。咲桜に説明するから、松生は下がってもらってもいいか?」
「どこまで下がればいいですか? 教室の外? それとも自分のクラス?」
ここで教室の外、と答えたら、まあ盗み聞かれるんだろうな、と私もわかった。流夜くんもそこまでは見当がついているようで、苦い顔をした。
「出来ればクラスで待っていてくれ。本鈴までには帰すから」
「あたしに隠し立てたいことをしたんですね」
鋭い一言に、反射的に私の肩がびくっと震えた。ま、まさか……? 不安になる私の視線を受けてか、流夜くんは一度瞼を伏せた。
「そういうわけだ。頼まれてくれるか」
「……咲桜、頑張ってね」
流夜くんの応答を聞いて、笑満は私の肩に手を置いてから静かに出て行った。
残されて、もう泣きそうだった。自分なにしたんだよーっ! お願い笑満戻って来て―っ! 心の中で叫びまくっていると、流夜くんの視線を感じた。
「咲桜、」
「はうっ、ごめんなさいっ!」
「いや、だから謝るのは俺の方なんだって」
流夜くんは椅子を立って、私の傍まで歩み寄った。
「なんでそんな顔をする」
色々な不安が怯えに変わっている私に、流夜くんは不思議そうな顔だ。
「だ、って……私、流夜くんが淋しくなるようなことをしたんじゃ……?」
その答えが意外だったのか、流夜くんは目を見開いた。
「今朝、そんな風に見えて……」
離れた背中が、そう見えて。言うと、流夜くんはゆっくり喋り出した。
「そんな風に見えていたのか?」
「う、ん……」
私はびくつきながら肯く。流夜くんは手を口元にあてて何か思案している。
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