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九 たまにでいいから、こうしてもいいか?
side流夜9
しおりを挟む「じゃなくて。話したいこととか、泣きたいこととか、あったらおいで。さっきの距離を俺にくれるんなら、なんだって聞いてやるから」
「………」
ぽかんとした咲桜の顔。しばし真正面から見つめていると、急に火を噴いたみたいに紅くなった。
「あ、ありがとう……」
消え入りそうな声で礼を言われ、いつものように咲桜の頭を撫でた。
恋人が出来るまで。
この距離に、誰も近づけないでほしいと思ってしまうのは……少々危ないだろうか。
+
「あら、お帰りですか」
「神出鬼没ですか、朝間先生」
華取家の門を出たところで、朝間先生に出くわした。手には鉄製の熊手を持っている。……なにをする気だったんだ。
「いつでも乗り込む準備です」
「好戦的過ぎです」
学校での朝間先生を思い返して、戸惑うしかない。保健室の天使とか言われていたのは俺の幻聴だったか? ……自分だって口調もツラも変えているんだから非難できたものではないが。
「咲桜ちゃん、大丈夫でしたか?」
朝間先生の声も、今まで聞いていた張りのあるものから変わっていた。さっきは俺を絶対的に敵視していたのに、沈んでいるような響きだ。
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