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2 御門の朝
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しおりを挟む……本来なら、時空の妖異は陰陽師が式にしてはいけない存在だ。
神格を式にする陰陽師も過去には存在したが、強大な力を持った者だけにゆるされた行為。
そして今、それに匹敵する存在を式とした陰陽師、影小路黒藤。
歴史に名を残してきた英傑たちに遜色がない存在になろうとしている。
……つきんと痛む胸。
これは……嫉妬だろうか。
同年代で、昔は同じ跡継ぎという立場だった幼馴染。
だがその強さは、白桜では遠く及ばない。
御門は血統重視で、白桜の籍がある本家が当主を継いできた。
白桜は己の力ゆえ、当主になれたわけではない。
小路は実力重視。
一度直系が絶たれているためもあるだろう、流派内でその時最も強い者が次代となってきた。
黒藤は母・紅緒の後継者だったが、それに親子であることは関係なかった。
紅緒が最も強い存在で、黒藤はそれをしのぐ強さを持っていたため、跡継ぎとされていた。
昔は同じだったのに。
……白桜はおいて行かれてしまった。
まあ黒藤のことだから、「そんなの俺の嫁になれば万事解決!」とか、ちっとも解決じゃないことを言い出しそうだから絶対にこんな弱音は吐かないけれど。
「黒」
庭園の四阿(あずまや)には、既に黒藤がいた。
呼びかけると、黒藤がこちらを見る。
……なんかものすごく顔色が悪いんだが。
「白! 涙雨ぅうううううううう!」
うわ、びっくりした。こちらを見た途端、黒藤が突進してきた。
それに呼応するように、肩の上の涙雨が目を覚ました。
『む? あ、主さ――ひいっ!』
むんずとつかまれた涙雨は、鬼の形相の黒藤に息をのんだ。
「涙雨ぅうううう! 心配したんだぞコラ! 縁なんか白から式届くまで死にそうだったんだからな!? もう勝手な散歩禁止にするぞコラ!」
必死に羽をばたつかせる涙雨。
黒藤の心配もわかるだけに、白桜は涙雨をかばうだけはできなかった。でも、
「黒、怒る気持ちもわかるけど、涙雨殿つぶれるからそれくらいにしてやれ」
黒藤の両手につかまれた涙雨、圧死しそう。
妖異だって死はある。死なないものはない。
「怒ってんじゃなくて心配してんの!」
「あ、うん。訂正する」
黒藤にギッと睨まれた。
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