上 下
27 / 93
2 御門の朝

22

しおりを挟む

「お前らの中に犯人はいない、と」

『ああ』

「なら、犯人を知っているか?」

『如何ようにも答えられぬ』

「……。戻っていいぞ」

腕を軽く上へはらうと、烏は羽ばたいて次の瞬間には姿を消した。

窓辺に背を預けて腕を組む。

答えられない、か……しかも『如何様にも』ってことは、烏は答えを持っているってことだろう。

否とも是とも、知っているが答えられない。

「黒」

「うん?」

呼ばれた方を向くと、白桜が黒藤を見ていた。

「白!」

「うん、飛びつかなくていいから」

「あー」

顔面に白桜の校内履きの裏を喰らってしまった。

白桜に飛びつこうとしたら蹴りの恰好で足を突き出された。

「痛い……顔にあざついちゃう……」

「だったら変態行動やめてくれよ」

「変態控えたら俺じゃないだろ」

「なんでだろう。否定できないことが哀しい……」

白桜が哀愁を漂わせてしまった。

「んで? どしたん?」

「いや、今なんか知らない気配がしたから……」

白桜が黒藤の隣に立って窓辺に背をもたれさせる。

「ああ、俺の使役。ちょっと訊きたいことあったから呼んだんだ」

「お前使役どんだけいるんだよ」

「んー? 出先でシメた奴は大体、かな……?」

「お前行動範囲広いな」

「白ほどじゃないよ」

「俺はじい様について歩いただけだ。お前みたいに一人で歩いてみたいとも思うよ」

「俺がどこへなりとも案内するよ?」

とか黒藤がいつも通りたわごとを言えば、白桜からは――

「いいかもな」

しおりを挟む

処理中です...