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3 動き出す当主
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しおりを挟む「……主殿の婚姻となれば、陰陽師一門には重大なことじゃろうて」
「そうだな。だから、簡単には決められない」
「………逃げ口を見つけたか」
「いや、そこまでではないんだけど、とりあえず今は放置かな、って」
「……わたしは主殿に厳しい態度をとらねばと思っておったが、祖父殿は許すのか?」
「わからない。俺の結婚の話は一度もしたことないし」
それは本当のことだった。
白桜に許嫁を置く置かない以前に、そういった話を祖父としたことがなかった。
だから白桜は周りに煽られて、勝手に一人で悩んでいた。
「冬湖が家に帰れるようになったら、本邸に行って一度話そうと思う。じい様と」
「……主殿は、作夜見の娘を疑っておらんのだな?」
(……疑う、か)
「疑っていない、とは言い切れないんだけど、疑いたくない、とは思うかな」
「それは疑っているということじゃ」
呆れたような桜苑の声。白桜は苦笑した。
「疑いたくないのならば百パーセントで信じろ、主殿。疑いたくない、という甘え言葉に逃げるつもりか」
「……そうだな」
桜苑の言葉は、白桜には強く響いた。
だが、と頭を切り換える。
「問題は涙雨殿の方から片付けよう」
「策は」
「あやかしの世界にはあやかしだ。――今ひとたび、天音に鬼神の名を使ってもらおう。外れていたらそれでいい。そうでなかったという情報を得られる」
「おや。主殿は最近、鬼の頭領と親しくなったのではなかったか?」
冬芽のことだろう。
基本的に桜苑には、白桜の動向はお見通しだ。
白桜はいや、と答える。
「鬼の頭領ではまだ足りない。この国に、鬼だけでなく妖異すべてにその名を行き渡らせた天音の名前の力を使ってやっとだろう。黒とその式をあざむく妖異だ」
「ほんに主殿は幼馴染がすきだのう」
「……桜苑」
白桜のとがった声にも、桜苑は動じない。
「なに。なにも言わなくてよい。わたしは主殿についていくだけだ。して、天音の名のもとに、何を問う?」
「涙雨殿を狙った妖異を知る者があるか」
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