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3 動き出す当主
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しおりを挟む(手慣れている理由も、冬湖に訊いても答えるとは思えない。天音がことを起こしてくれる前に確認しておきたいな……)
思い立った白桜は携帯している紙片に書き付け、蝶の姿に変えて飛ばした。
結果、次期当主の少年の補佐役をしている青年と会える手はずになった。
もともと、白桜とは面識のあった青年だ。
放課後に冬湖の学校の近くの公園で落ち合う。
百合緋は天音についてもらって先に帰した。
「そうでしたか、お嬢様が御門様に……」
「冬湖嬢本人から聞いたわけじゃないから、確認しておきたくてな」
ベンチに間を空けて座る白桜と作夜見の青年。
白桜の問いかけに、作夜見の青年はぽつぽつと答える。
「お嬢様は……ご自分から家のことをされておいででした」
「自分から?」
「はい。霊力がないため、そうすることで、作夜見の中で自分の居場所を作ろうとしていたようです」
「………」
「ですが、ご当主様がお嬢様のご結婚のお話を進めておられると知って、混乱してしまったようです……」
「結婚の話の是非より、家を追い出されると考えてしまった、と?」
「お嬢様と詳しく話をしたわけではないのですべてはわかりませんが、日ごろからお嬢様は負い目を感じているように見えていました……。弟君のことは可愛がっておられましたが……」
「そうか……」
秋生の真意まではわかりそうにないが、冬湖の方はだんだんわかってきた。
おそらく、白桜たちが冬湖を助けてからの彼女の言動に嘘はないのだろう。
秋生は政略結婚に使われる前に冬湖を一族から解放しようとしたと書いてあったが、冬湖はそんなことを考える前に、厄介払いされると考えてしまったのかもしれない。
結婚を強いるという形で、家を追い出される。
こればかりは秋生に味方は出来ない白桜だ。
白桜個人としては冬湖の身の上からの心情に心が寄るし、御門が当主としては秋生の采配は軽率だと思ってしまう。
秋生は作夜見が当主だ。
冷徹さも必要だとわかるが、子に対して思いがあっての選択ならば、冬湖が傷つかない方法を選ぶべきだったと。
それを成しえてこその当主だと考えるから。
「わかった。冬湖嬢は、本人が帰れると思うまではうちに置こうと思うが……ほかに俺に話せることはあるか?」
「……その、お嬢様のことなのですが……」
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