月華の陰陽師2-白桜の花嫁-【完】

桜月真澄

文字の大きさ
75 / 93
4 目論見

しおりを挟む

「いるだろう、ときたま。心の安定が保てず妖異の里に迷い込んでしまう者が」

『ある。……だが、わざわざ帰してやる道理もない』

どうでもいいといった口調。

争う気はないと言ったが、それですまないこともあると白桜は知っている。

「そうか――ならば、貴様ら全員ここで果てるか」

白桜が手にしていた扇が光包まれ刀に姿を変える。

『……我らと交戦するつもりか』

「そちらが要求飲めないってんなら、そうなるな。まあその前に? そちらの、俺に要求したいことを提示してもいいけどな?」

俺に、を強調した白桜。

双葉の烏天狗の目的は、黒藤と接触をはかり対である一葉の烏天狗を取り返すこと。

黒藤への要求を白桜がのむことは出来ないから、自分に望むことはあるか、という意味だった。

刀を突きつけながらのセリフだが。

『……ぬしは人の子……小路の者と親しいのか?』

「人間の言葉で言うのなら、幼馴染だ」

『……ならば、ぬしに用はない』

ざっと双葉の烏天狗たちが抜刀した。

『一葉を返さぬのなら、ぬしらを人質として小路と交渉させてもらおう――』

「なるほど、そうくるか。ならばぬかったな」

はっと、交渉の烏天狗が冷笑する。

『当主ともあろうものがそのような態度とは』

「おや、ぬかったのは俺たちの方か? 御門と小路の関係を知らない貴殿らだ」

『ぬ……』

「御門の当主が死んで怒る者はいない。あの程度だったか、と一族に笑われる程度だ。小路はなんら関心を示さない」

『……幼馴染、とはかように軽い存在か?』

「小路の若君は、あくまで陰陽師だ。感情を排することが出来る。俺が死んでもその程度だったかと思うだけで貴殿らに接触などせぬよ」

不穏な言葉とは裏腹に、にこっと笑う白桜。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

彼女が望むなら

mios
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の婚約は円満に解消された。揉めるかと思っていた男爵令嬢リリスは、拍子抜けした。男爵令嬢という身分でも、王妃になれるなんて、予定とは違うが高位貴族は皆好意的だし、王太子殿下の元婚約者も応援してくれている。 リリスは王太子妃教育を受ける為、王妃と会い、そこで常に身につけるようにと、ある首飾りを渡される。

捨てられた王妃は情熱王子に攫われて

きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。 貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?  猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。  疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り―― ざまあ系の物語です。

婚約破棄された王太子妃候補ですが、私がいなければこの国は三年で滅びるそうです。

カブトム誌
恋愛
王太子主催の舞踏会。 そこで私は「無能」「役立たず」と断罪され、公開の場で婚約を破棄された。 魔力は低く、派手な力もない。 王家に不要だと言われ、私はそのまま国を追放されるはずだった。 けれど彼らは、最後まで気づかなかった。 この国が長年繁栄してきた理由も、 魔獣の侵攻が抑えられていた真の理由も、 すべて私一人に支えられていたことを。 私が国を去ってから、世界は静かに歪み始める。 一方、追放された先で出会ったのは、 私の力を正しく理解し、必要としてくれる人々だった。 これは、婚約破棄された令嬢が“失われて初めて価値を知られる存在”だったと、愚かな王国が思い知るまでの物語。 ※ざまぁ要素あり/後半恋愛あり ※じっくり成り上がり系・長編

水神様の巫女

藤ノ千里
恋愛
オリジナル小説「タバコと木札」の続編 美菜月が受けてしまった水神様の呪いを解くべく、美菜月と弘成は京都へ向かう。 徐々に明かされていく弘成の過去。そして、美菜月が受けた呪いの正体とは何だったのか。 普通の女子大生のはずの美菜月が経験する、恋人弘成との不思議な夏休みの物語。 ※「タバコと木札」本編より少し大人向けの内容となっています。

【完結】悪役令嬢は何故か婚約破棄されない

miniko
恋愛
平凡な女子高生が乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまった。 断罪されて平民に落ちても困らない様に、しっかり手に職つけたり、自立の準備を進める。 家族の為を思うと、出来れば円満に婚約解消をしたいと考え、王子に度々提案するが、王子の反応は思っていたのと違って・・・。 いつの間にやら、王子と悪役令嬢の仲は深まっているみたい。 「僕の心は君だけの物だ」 あれ? どうしてこうなった!? ※物語が本格的に動き出すのは、乙女ゲーム開始後です。 ※ご都合主義の展開があるかもです。 ※感想欄はネタバレ有り/無しの振り分けをしておりません。本編未読の方はご注意下さい。

【完結】前代未聞の婚約破棄~なぜあなたが言うの?~【長編】

暖夢 由
恋愛
「サリー・ナシェルカ伯爵令嬢、あなたの婚約は破棄いたします!」 高らかに宣言された婚約破棄の言葉。 ドルマン侯爵主催のガーデンパーティーの庭にその声は響き渡った。 でもその婚約破棄、どうしてあなたが言うのですか? ********* 以前投稿した小説を長編版にリメイクして投稿しております。 内容も少し変わっておりますので、お楽し頂ければ嬉しいです。

処理中です...