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4 目論見

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「お前、知ってたのか」

「………」

「容認できない。己の式が危険な目に遭うことを、むざむざと許すなど」

「うーっ、ごめん白―っ。お前首絞めるのうまいからこれ以上はやめてー!」

白桜に襟首掴まれて持ち上げられかけている黒藤は涙目で懇願する。

背丈は黒藤の方があるが、白桜、腕力あった。

「白桜様! さすがに黒藤様が死にますわ!」

「いっぺん殺さないといけないみたいだ」

「だめですわー!」

天音に止められて、白桜は手を離した。

「またお前に担がれていたとか腹立たしすぎるんだか?」

「いや、そこを俺に責められても……担いでないし」

「ああ?」

「さすがに俺にも予想外でした! ごめんなさい!」

「何が予想内で何が予想外だった?」

「俺の使役が勝手するのは許していましたが涙雨に手を出したり作夜見の娘が巻き込まれるのは予想外でした!」

「殺すぞ」

「ごめんなさい!」

『あのー……主殿、我ら勝手にしていた身で何を言うでもないのだが……本気で死ぬぞ?』

「弁明して! お前らがしたこと俺も知らないんだから言い訳して!」

『う、うむ……。御門殿、時空の妖異の力を奪ったのは我らが勝手にやったこと。主殿はあずかり知らぬところだった』

「……なぜ、そのようなことを?」

『……双葉に、力を取り戻してほしかったのだ』

「力?」

『我ら一葉が影小路の始祖の転生を殺めようとしたのは、衰えてきた我らを立て直すため。だが、主殿の使役となることで我らは妖力を保持することが出来た。しかし我らが対の双葉を、我らは置いてきてしまった。……衰退の道をたどっていたのは、同じだったというのに……』

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