どうしたらヤンキーになれますか!?-六花の恋6-【完】

桜月真澄

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突撃2 side作之助

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藤沢さんが肩を落としながら言った。

よかった……ちゃんと通じた……。

「でも」

ん? 今度は強い眼差しで俺を見上げて来た。

「私にヤンキーになるなって言うんなら、コガサクくんももう喧嘩しないでください」

「………は?」

俺に……喧嘩するな? なんでそんな話になるんだ?

「後悔してるってわかってるなら、もう喧嘩しないでください」

「……いや、それとこれとは……っ!?」

ぐいっと、藤沢さんにネクタイを引っ張られた。

「ふじさっ……!?」

今度はなんだっ? 首元を引っ張られて、目線が藤沢さんとかち合った。

「そうしたら出来るかもしれないじゃないですか。友達」

「は? 友達?」

「言ったじゃないですか。普通に友達いたのかな、って」

……あ、言ったわ。

「もうとっくに諦めてるよ、そういうのは。今更求めてない」

「それでも友達といるのは楽しいですよ」

「………」

「―――」

……俺と睨みあった女子って初めてだ。

「私、友達というより幼馴染が四人いるんです」

「多いな」

「そのうち女の子は羽咲ちゃんだけであとの三人は一つ年上なんですけど、友達と一緒に過ごす時間はいつも楽しいです。だから、コガサクくんが今まで友達いなかったって言うのなら、これからその楽しさを知ってほしいです」

「………」

友達といる楽しさ。

……憧れていたのは、もう過去の自分だ。

今の俺はただ出来るだけ平穏に過ごすことを望んでいる。

「いらないよ、そういうのは」

「なんでそんな頑固なんですか」

「藤沢さんに言われたくないよ。なんでそんな勧めて来るの」

「コガサクくんが後悔してるって言ったからです」

「………」

墓穴だった。

「……わかった。俺の落ち度は認める。でも正直友達とかもう考えてない」

「なんでですか」

いや少し考えればわかるだろう。

……またため息が出る。

「俺なんかの友達になってみろ。俺に嫌がらせするために巻き込まれたりすることだってあるだろう」

え、と藤沢さんが息を呑んだ。

……藤沢さんはそういう後ろ暗いところとは縁遠くきた――

『父様と母様の―――』

よみがえった藤沢さんの言葉に、頭の中で自分の思考を否定した。

……そんな人はいないだろう。

場所や深さは違えど、ささくれのような傷がない人はいないかもしれない。

どんなに幼くたって。

「……そうですか。コガサクくんに偉そうなこと言いましたが、実は私も友達いないんです。羽咲ちゃんだけなんです」

「………え?」

藤沢さんが、友達いない? 俺に気遣って言っているのかな……?

んー……でもなあ……。

「あの、その手のからかいはちょっとタチが悪いかと……」

なだめるように言うと、藤沢さんは真剣な顔で俺を見上げて来る。

「からかいじゃありません。私、ずっと羽咲ちゃんと一緒にいたから、羽咲ちゃんさえいればいいって考えになっちゃってて、羽咲ちゃん以外の友達とか作らなかったんです」

「そう、なんだ……」

幼馴染と仲良過ぎてほかを求めなかったってことか? 俺とは境遇が違うけど……。

「でも羽咲ちゃん、高校の入学式の日に友達が出来たんです。私がヤンキーの代表のコガサクくんの情報を集めている間に、こう、スチャッと? 仲いい人が出来たんですよ! おめでとうって気持ちと羽咲ちゃんを取られて悔しいって気持ちがない交ぜになって今めちゃくちゃぐるぐるしてるんです」

な、なぜそこまで……。仲いいのはよくわかったけど……。

「だから、と言っていいのかですけど、友達が出来なくて淋しかった過去のコガサクくんの気持ち、少しはわかるつもりでいます」

そですか。

でも、俺は今更どうしようとも思わな――

「だから、私にヤンキーになるなって言うんなら、コガサクくんも不良やめてください。わたし、取引なら応じます」

……すげえこと言うな、この人。

なんか藤沢さんに呆れを通り越した感情になってきた。

「俺も辞めれるんなら辞めたいよ」

「じゃあ――」

「一、俺に恨みを持ってる奴がいます」

「へ?」

「二、俺を傷めつけるために色々画策してきます」

「あ、はい?」

「三、俺が喧嘩しなくなっても人質とかとられます。そしたら俺は助けに行きます。結果、喧嘩になります。わかった?」

そういうことだ。

一度足を踏み入れてしまったからにはついてまわるものがある。

藤沢さんは眉根にシワを作って難しい顔になる。

「つまり……コガサクくんが辞めても巻き込まれてしまう、と?」

「そういうことだね。だから言ったろ、あのとき相手してなければ、って。後悔してるのは友達いないとこじゃなくてそっち」

まあ、結果として同級生からも遠巻きになられてしまったから、すべての原因ってことになるんだけど。

「……じゃあ、人質? にとられても自分で逃げ出せるくらい強い人なら友達になれるんですかね?」

………はい? なんでそうなる?

「どういうこと?」

驚きともなんとも言えない感情で間抜けな声が出てしまった俺の返しに、藤沢さんはハッとしたように瞬く。

「あ、いえ。今のは気にしないでください。思い付きで言っただけなんで」

「そう……? とりあえずわかったろ?」

確認のために問うと、藤沢さんは大きく肯いた。

「とりあえずわかりました。コガサクくんがヤンキー辞める気ないのなら私も諦めません」

いや諦めろよ。全然わかってねえよ。

……なんだこの押し問答は。疲れてきた。

………。これ、一人で帰して大丈夫かな? なんかまたナンパされて喧嘩ふっかけそう……。

「藤沢さんの家、遠い?」

「徒歩圏内ですけど?」

よかった。電車使うとかだったらちょっと二の足踏んでいた。

「送ってく」

これ以上被害者を出してはいけない気がする。

危ないのは藤沢さんじゃなくて声かけた方だ。

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