異世界好きの異世界行商人

雷ネム

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第一巻

序章 おわりとはじまりの世界

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新しい人生を歩んで早一年、誰にも読まれることはないと思うが、折角だから今までの記録を書いてみようと思う。
僕のこれまで、そしてこれからの記録。

僕は今とは少し違う姿で人生を歩んでいた。
東京という街の秋葉原というところでショップ店員をしながら、毎日ファンタジー系の小説や漫画を読んだり、ファンタジー系のアニメを見たり、ファンタジー系のゲームをしたりして充実した日々を過ごしていた。
「今日からだな、あのゲームのサービス開始!」
あの日、仕事中に楽しみにしていたゲームの広告を見て、その楽しみはより膨れ上がった。
僕は膨れ上がった楽しみを抱えたまま、仕事を終えると我先にと走り出した。
途中で信号が赤になり、立ち止まる。
その間もずっと気持ちが膨れ続け、青になった瞬間に再び走り出した。
だけどそれがまずかった。
走り出したせいで僕は他の人よりも速く車道の中心に出た。
そこにブレーキを掛けながら猛スピードで突っ込んで来る車があった。恐らくよそ見でもしていて、信号を見ていなかったのだろう。
そして僕は……車に轢かれた。
身体が勢いによって吹き飛び、硬い道路が全身を殴打した。
突然全身が痛みを感じ、動けなくなっていた僕は最初何が起きたのか全く分からなかった。
しかし、直ぐに車に轢かれたのだと理解した。
目の前が真っ暗になって、周りから声が聞こえたが、何を言っているのか分からない。
身体の感覚がどんどんと薄れて、声もどんどん聞こえなくなる。
ああ、死んでしまうんだな。
そんな事が頭を過った。
「……………………いや。」無意識に口が動いた。
「まだだ、まだ僕は死ねない。」そう言うと、動かなかった身体が動くようになった。
ゆっくりと目を開け、身体を起こす。
途轍(とてつ)もない痛みが全身に走ったが、膝をつく訳にはいかなかった。
「死ぬなら、家の中で好きなものに囲まれながらって決めてるんだ!」
それに、あのゲームのオープニングぐらいは見たいっと思った。
そして、痛みに耐えながら歩き始めた。
誰かに腕を捕まれたが「大丈夫です。」と言って振り払った。
電車に乗り、道を歩き、家に着いた。
家の中は、小説や漫画、ゲーム機やゲームソフト、フュギュアやぬいぐるみに囲まれていた。
ゲーム機を起動させ、楽しみにしていたゲームをダウンロードする。
その間、部屋のあちこちから【ファンタジー】の小説やフュギュアなどを取り、僕の周りに置いた。
そしてゲームを起動し、オープニングを見終わると、まるで電源を抜いたかのように身体から力が急激に抜け、好きなものに囲まれた部屋の中心に倒れた。
そして気が付くと、白い光で囲まれた空間に僕はいた。
「面白いな、汝。」不意に何処かから、声が聞こえた。
「一度死んでも、一時的とはいえ【好き】の為に自力で蘇るとは。」性別不詳の声は、興味深そうにしていた。
「では、汝に次の人生を歩ませたい。喜べ、汝の大好きなファンタジーの世界だぞ?」
何が何だかその時の僕には理解出来なかった。
しかし、一つだけ確かな事があった。
「つまり、異世界転生が出来るって事か?」
「その通り。ま、転生するかどうかは汝に任せ…」
「するに決まってる。夢にまで見た異世界転生、しない理由なんて無い。」段々と興奮してきた僕は謎の声が言いきる前に答えを出した。
「良かろう、では【自分のキャラを作れ。】」
「……え、どゆこと?」この時、脳内は非常に混乱していた。(確かに自分のオリキャラに転生とかたまにあるけど、そういうの含めてその辺は大体世界や神様側が決めるんじゃ無いの!?ていうかそもそもオリキャラとか全然創ったことないし。)
などと考えていると目の前に、顔も、性別的特徴も、服も、何も無いマネキンのような身体が現れた。
「これから、汝には新たな身体を創ってもらう。
折角の転生、自分の理想の姿で行いたいだろう?」
この時正直、気前良すぎて代償とか求められないか覚悟した。
「まぁ、そのままの姿で良いならいいが、まずは試してみたらどうだ?頭でイメージすれば、その身体に反映される。」
それを聞いて、僕は透き通るようなエメラルドグリーンの瞳をイメージしてみる。
すると、イメージした通りの瞳が新たな身体に現れた。
「因みに、今言う事では無いと思うが、このキャラクリシステムはMMORPGを参考にしてみたのだ。」
(自由過ぎない?この声さん。)そんな事を思いながら、僕は自分を創った。
肩まで伸びた青みがかった黒髪の左横と後ろを縛り、右横のみをストレートにしたアシンメトリーをヘアーにし、上半身には白い長袖のシャツの上からサンドカラーのコートを着け、下半身にはグリーンのカーゴパンツのようなボトムスを着けた。
身体は170cmで、体格は少し細めにした。
そして性別は、今と変わらない男性にした。
「よし。」完成した姿を細かく観察した僕は、満足そうに頷きながら言った。
「あまり異世界感のある服装じゃないが、良いのか?」
「うん。こういう服装の方が動きやすくて、色んな場所に対応出来そうだから。」声の質問に僕はそう答えた。
「それなら良い。授けようとしていた能力ともマッチしそうだ。」
「!、どんな能力が貰えるんです!?」僕は興奮気味に訊いた。
「まぁ、そう焦るな。まずはその完成した身体に触れてみよ。」
能力はとても気になったが、ひとまず声に従い創った身体に触れた。
すると、目の前が光で満ち、思わず目を閉じた。
再び目を開けると、僕の身体は僕が創った身体になっていた。
「新たな身体になったな。では、先程言った能力を授けよう。」
声がそう言うと、虹に光る玉のようなものが上から降って来て、僕の身体へと入った。
「それは、異世界を渡る能力。そうだな、【異渡】(いと)とでも呼ぶが良い。まぁ、詳しくは使って試せ。」
「急になげやり!?」そう僕が言った途端、僕の身体が徐々に薄れ始めた。
「さぁ、新たな人生のはじまりだ。汝はどんな人生を歩むのか、我はそれを見させてもらおう。」
僕の身体に起こった事と声の発言から僕はもうすぐこの空間から去るんだと悟った。
「最後に、貴方は一体誰何です?」
「うーん、神様のようなもの……かな。」声は歯切れ悪く言った。
「ああ、それと能力を使う際は手を前にかざしてみよ。後は感覚でわかるはずだ。」
その言葉を最後に、目の前は真っ白になった。
そして目覚めると、そこは薄暗い森の中だった。
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