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なんでも人形ラボラトリー
第49話 俺の国
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「うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉおおおおおお!!!」
なんでも人形ラボラトリー上空10000m付近。凄まじい速度で上昇する物体が、雄叫びのような悲鳴をあげて飛んでいく。
「うっさいなあジャハル!大人なんだから我慢しなさい!」
「うおおおおおぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!」
今まで体感したことのない猛烈な加速。急激に下がる温度と気圧。息もできない程の風圧。数十秒とはいえ、この過酷な状況では流石の人道主義自己防衛軍No.2も死を覚悟せざるを得なかった。生身の人間であれば到底生きられない低気圧、低酸素濃度、低波導、低温。ラルバによる防御魔法の加護がなければ、あっという間に気を失い死に至る空間。ジャハルは置いてきたラデック達に引き止められた時のことを思い出し、ひどく後悔をした。
「はい、とうちゃーく。結局迎撃されなかったね」
ラルバが“空中に”立ち、抱えていたハザクラとジャハルを降ろした。3人は使奴研究所の屋上に立っているのだが、研究所は隠蔽魔法で透明になっているため、まるで空中に立っているような錯覚を覚えた。
肩でぜえぜえと荒く息をするジャハルの横で、異能で身体能力を強化していたハザクラが平然と辺りを見回している。
「ハザクラちゃんどったの?トイレ?」
声をかけられたハザクラは、思い出したかのように抗魔スカーフを取り出して自分とジャハルに巻く。
「入口を探している」
「気が早いね。ほい入口」
ラルバが勢いよく足を踏み鳴らすと、足元の“景色が砕け”研究所への穴が空いた。
「……侵入がバレるぞ」
「もうバレてるって。そんじゃあ行きまっしょーう」
2人が穴に飛び込むと、ジャハルも慌てて起き上がり後を追いかけた。
真っ暗な研究所は思ったより広く、ラルバ達は既に階段を4階分下っていた。ラルバが手当たり次第に通路の扉を開けるが、何も真っ暗でめぼしいものは何もなかった。
「ここもハズレ~。飽きてきちゃった」
手持ち無沙汰になり小躍りを始めるラルバをジャハルが睨む。
「もう少し緊張感を持てラルバ。敵はどこに潜んでいるか分からないんだぞ」
「さっきまでゲロゲロしてた人が何言ってるの」
「それとこれとは関係ない……!」
「静かに」
ラルバは突然立ち止まり、口元に人差し指を当てる。その直後――――
パァン!!!
発砲音とともにジャハルの眼前を銃弾が突き抜けていった。3人が顔を向けると、そこには脂汗とフケに塗れた肥満体の中年男性がこちらに銃を構えて立っていた。
「んふぅ~!んふぅ~!!ふいっ……ふぃぃぃ……!!!」
男は3人と目が合うと即座に逃げ出す。しかしラルバが一瞬で追い抜き進路を塞いだ。
「こんばんはぁ~!ちょいとお話しよろしくて?」
「んぃぃぃ~!!くくくくりしにぃでぃ!!ううううううりぎうぃるきってぃぃぃぃいいい……!!!」
「は?」
男は銃を放り投げて頭を抱え、ひどく怯えた様子で倒れ込む。まるでカブトムシの幼虫のように身を縮こまらせる男に、3人は困惑して顔を見合わせる。
「なんだコイツ……」
呆れ返るラルバの隣で、ハザクラがしゃがんで男に近づく。
「おい。起きろ。お前のしでかしたコトを詳しく話せ」
「うううう……!!くりしにぃでぃ……くりしにぃいでぃぃぃぃ……!!!」
ハザクラが言葉を理解しようと抗魔スカーフを外そうとするが、ラルバがそれを止めて男の顔を覗き込む。
「いや、なるほど。“殺さないで”か」
ラルバが男の顔を粘土を捏ねるようにぐにぐにと触診する。
「顎の筋肉が凝り固まっている。歯をずっと食いしばっていたせいでもう開かんのだろう。精神的にも病んでいるようだな。舌肥大も相まってストレスによる過呼吸が悪化している」
ジャハルは辺りを見回して他に敵がいないコトを確認してから、蹲る男に視線を落とす。
「この国、“なんでも人形ラボラトリー”はお前が作ったのか?」
男はコクコクと小刻みに頷く。
「1人で?」
再び頷く。
「一体何故?」
男はピクリと一瞬痙攣すると、全身から滝のように汗をだらだらと流して固まる。
「……ダメだ。話にならない」
「俺が話そう」
ハザクラは尻餅をついている男にしゃがんで目線を合わせる。
『質問にハッキリ答えろ。嘘偽りなく』
「うぃ、うぃきってぃ……しゃべ、喋る……あれ?」
「よし、全て話せ。この国が出来てから時系列順に」
「チャ、チャンスだと思ったんだ。ここの事故が起こった時」
「事故。使奴の解放に繋がった事故か」
「そ、そう。俺は“知識のメインギア”として扱き使われてたから……研究所に、復讐出来ると思った」
「“知識のメインギア”……」
「そ、そう。俺の“記憶を操る”異能。それ使って、自我のない使奴に色んなことを憶えさせる……色んな専門家の知識を俺に移して……目一杯憶えたら丸ごと使奴に憶えさせる……そうして“生まれた時から完璧な知識を持った人造人間”が出来上がる……」
「……そうか」
メインギア――――使奴を作る上で核となる4人の異能持ち奴隷。洗脳のメインギアであった自分の境遇を思い出し、ハザクラは哀しそうな、それでいて疑いや軽蔑の色が混じった感情に苛まれる。
「それで、どうした?」
「う……事故が起こった後、使奴が解放されたことを知って、隠れてた。そんで自由になった使奴が全員出て行ってから、残ってた研究員をみんなころ、殺し、て……でも……!!」
「でも?」
「使奴がその辺彷徨いてるんじゃあ……!!平穏はない……!!俺もいつか殺される……!!だから、だから、時間壁を……止めて、この国を作った……!!使奴に侵されない“俺の国”を……!!!まって、なんで……!?」
突然混乱するように顔を掻き毟る男。ハザクラは続きを聞くため男の目を見て呟く。
「続きを話せ」
「うう……!!い、異能で夜を作った……!!この国は元々小さな集落で……夜になるとみんなで踊る習慣があった……だから“夜になると踊り出す”という法則を、異能で“踊り出すと夜になる”法則に捻じ曲げた……!!使奴は偽物を嫌う……偽物の夜は上手くいくと、思ったし……上手く行った……ああっ違う!!なんでっ!!」
「落ち着け。続けろ」
「うううう……!!!そのっ異能に……連動して……言語不覚の魔法を撒いた……!!言葉はめちゃくちゃになるけど、意味は伝わる……混乱魔法と伝達魔法を混ぜて国中に……!!と、とこ、“常夜の呪い”は使奴を追い返すのに打って付けだった……!!ううううっ……!!!け、研究所が見つからないように、浮かして、透明にした……!!ああっ……!!違うっ違う……!!」
男は涎を撒き散らして頭を抱え、目を白黒させながら嘔吐した。異常に取り乱す男を不審に思っていたハザクラは、最後に薄々気付いていた質問を投げかける。
「……その“踊り出すと夜になる”という法則破壊の異能は……誰の異能だ?」
男は再び盛大に胃液を吐き出しながら必死に言葉を絞り出す。
「おお、おおおお、お、れ」
「……お前の異能は“記憶の操作”じゃないのか?」
「そそそ、そう。違、じゃない、くて……!!ああっ……!?あああああっ!!!」
男は何かに気付いたように瞳孔を揺らし、助けを求めるかのようにハザクラ達を見る。
「おおおお、おれ、な、何年……生きた……?」
ハザクラは気の毒そうに顔を伏せ、ポツリと呟く。
「多分。200年ちょいだ」
男はそのままの姿勢で硬直し、涙をぽつりぽつりと溢してその場に倒れ込んだ。
男は黒幕に身代わりとして取り残されていた。男が持っていた知識はほぼ“知識のメインギア”である黒幕と同様のものであり、説明の最中に自分で相反する記憶があったことに混乱し、そして全てに気付き事切れた。
先程の男の独白か懺悔にも似た説明に、ジャハルは顔を大きく歪ませる。
「……なんということだ。こいつは、黒幕に200年もの間手駒として扱われていたのか……!何度も、何度も記憶を消され、植え付けられ、終いには身代わり……!!」
ハザクラは立ち上がって膝の埃を払う。
「……預言者のあの子も黒幕に嵌められたんだろう。身に覚えのない犯罪行為。こいつと同じように記憶を弄られていたなら合点が行く」
「……ただ、ただ異能を持っていたという理由だけで……何故……黒幕も“知識のメインギア”として、その境遇の辛さを嫌という程知っている筈ではないか!!それなのに……彼は満足に言葉も話せない程恐怖して……何故……!!」
「……ジャハルはもう少し“世の中の人間は大概が悪だ”ということを理解した方がいい。……お前は少し、幸せに育ちすぎた」
その言葉に何も言い返せず歯を食いしばっていたジャハルが顔を上げると、ラルバは既に通路の奥で曲がり角に姿を消す直前だった。2人は男を1人残して慌ててラルバを追いかける。
「おっおいラルバ!!1人で進むな!!」
追いついたジャハルがラルバに文句を言うが、ラルバは気にせず歩みを進める。
「おい!!あの男はどうするんだ!!」
「置いてく。別にもう要らないし」
「はぁ……!?」
ラルバはそのまま真っ直ぐ通路を進み、ある部屋の前で立ち止まる。
「……ここだけ足元の埃が異様に少ない。出入りが激しいんだろう」
3人が扉を開くとそこには――――
20基もの培養カプセルに浮かぶ使奴達。不快なモーター音が部屋中を駆け巡り、ぼんやりと発光するカプセルがラルバ達を照らした。20人の死体の如く動かない使奴に圧倒された2人を置き去りに、ラルバは正面の1番大きい操作パネルに近づいてマジマジと画面を覗き込む。
「…………なるほど、言うなれば“使奴燃料”だ」
そして、独り言のように呟く。
「我々使奴は使奴細胞で無限に近い魔力を作り、それで生き延びている。自我を持つ前の使奴をこうして繋げば、200年もの間、使奴研究所という巨大な施設を浮遊させ、透明化し、常夜の呪いを国内に蔓延させ続ける莫大な量の魔力を生成できる」
ジャハルは呆然とラルバの言葉を聞き続けていたが、ハッと我に帰りハザクラの方を見た。そこでは、感情表現の乏しいハザクラが目を見開いて瞳孔を細かく揺らし、魂が抜け人形になったかのように立ち尽くしていた。
しかし、ラルバは構わず説明を続ける。
「この使奴燃料を使えば200年もの間延命することも出来るだろう。病気だって治し放題だ」
ダァン!!!と、壁を殴りつける音がラルバの話を遮る。そこには、ラルバのすぐ隣まで来ていたハザクラが、俯いたまま培養カプセルに拳を突き立てていた。しかし、カプセルは傷一つつかずに淡く発光し続けている。中に浮かぶ使奴はピクリともせず、バイタル画面にハッキリと“生“の文字を表示させるのみで剥製の如く微動だにしない。
「……ラルバ、頼みがある。」
「やだ」
「どうせ元凶を拷問するんだろう。俺にやらせてくれ」
「言うと思ったよ。やだ」
「ハ、ハザクラ……!!」
ジャハルが宥めるようにハザクラの肩を触るが、ハザクラは突き放すように手を払う。
「慰めるなジャハル。ラルバ、耳を貸せ」
「えー……」
ラルバは渋々ハザクラに顔を寄せる。しかしハザクラが耳打ちをすると、ラルバの表情は段々と明るくなり、爛々と輝き始めた。
「ほう、はい?はあ、ほう、ほう!ほうほう!いやあ良いじゃない!許可する!」
「ハザクラ!ダメだ!」
ジャハルは再びハザクラを制止し、両肩を掴んで顔を向き合わせる。
「確かに悪には相応の罰が必要だ!しかし……それは更生や抑制のためだ!今回の件は誰の見せしめにもならない!!お前が、お前がそっち側に立ってしまったら……!!!」
「ジャハル」
ハザクラは自分の両肩を掴むジャハルの手をそっと握り、ゆっくりと降ろす。
「俺は冷静だ」
「ハザクラ……」
「あー2人ともー、しんみりしてるところ悪いんだけどさー」
ラルバは気怠そうに後頭部を掻きながら口を挟む。
「黒幕、逃げたよ」
「はあっ……はあっ……!!!」
1人の老人が階段を勢いよく駆け上がっている。その小柄でひ弱な見た目とは裏腹に、一段飛ばしで階段を登りぜえぜえと荒く呼吸を繰り返している。
「くそっ……!!!くそっ……!!!」
今まで都合の良い手駒として扱ってきた中年男を身代わりにと置き去りにしたしたが、ここまであっさりと見抜かれると思ってはおらず、僅かに期待していた心を蔑ろにされ募った苛立ちで余計に呼吸を乱す。
しかし、老人には最後の手段があった。老人は自身の“異能”に全てを賭けており、状況次第ではラルバどころかイチルギやバリアでさえも支配下に置けると画策していた。そのために必要なのは、たった一回の奇襲。そして今の状況は老人に大きく有利に働いていた。
まず一つ、今回乗り込んできた3人のうち使奴が1人しかいないこと。使奴1人さえ味方につければ、残りの2人などいないも同然である。次に自分の現在位置。ラルバ達を手駒の中年男で騙せなかったにしても、最下層に置き去りにすることができた。そして老人はもう屋上に出ようかという直前。どう足掻いてもラルバが先に屋上へ出ることは出来ず、奇襲の大前提を死守することができた。
そして最後になによりも“常夜の呪い”。現在時刻はもう日没をとっくに過ぎてはいるものの、偽物の夜空は使奴にとって気色悪い贋作であり、視界に入るだけで気が散る汚物そのもの。その状況下であれば、完璧な人造人間の使奴といえど奇襲への反撃に一瞬の遅れが生じる。老人はそこに賭けていた。
失敗すれば即死。しかし、成功すれば天地無双の大願成就。ラルバに触れる瞬間に異能を発動できるかどうか、その一瞬。老人は覚悟を決め屋上への扉に手をかける――――
「…………あ?」
砂漠のど真ん中にあるなんでも人形ラボラトリーだが、常夜の呪いによって国境をすっぽり覆う障壁が暑さ寒さを遮り、雨風さえ通さず気候は年中安定している。時折わざと常夜の呪いを解いて雨を国内に取り入れはしているものの、災害時は必ず常夜の呪いを張って国を守っている。
「な、なんだ…………!?」
故に、こんなことは通常あり得ない。
「何でっ…………!!!」
ましてや砂漠のど真ん中で。
「何でっ呪いはどうした…………!!!」
”暴風雪“など。
「一体……一体何が起こってる!!!」
~なんでも人形ラボラトリー 繁華街~
「外に出るなー!!家に入って戸締りを!!」
「防寒着のない方はこちらへー!!」
「4班は28番地へ!!手が回ってない!!」
「クッソ!やんの早いっつーの!!」
なんでも人形ラボラトリーの各地では、地下街下層にいた賊達が総出で防災活動に奮闘している。常夜の呪いの維持を担っていた踊り手達も、堪らず家屋に逃げ込み散り散りになった。
生まれて初めての暴風雪に、流石の賊達も不安そうに顔を見合わせる。
「これやり過ぎじゃねぇ?明日になったら全員凍死とかしてねぇよな……」
「……あの子が考えた作戦なんだから大丈夫だろ。信じろよ」
「お前ら!!呪いが解けるぞ!!さっさと家入れ!!」
「やべぇ!ウチらも逃げるぞ!」
~なんでも人形ラボラトリー 中央広場~
「こんなもんかしらねぇ。バリアー?そっちどおー?」
「おっけー」
なんでも人形ラボラトリー国の広場では、イチルギとバリアが巨大な魔法陣を描いて詠唱を行なっている。
イチルギが描いた風魔法の陣を中心に巨大な雲が形成され空一面を覆い、バリアが描いた氷魔法の陣からは何本もの光の柱が天へ伸び雲を貫いている。魔法で生み出した雲はどこまでも濃く広がっていき、使奴研究所のある上空15000mまで喰らい尽くした。
「はー疲れた。あなた、いい加減家に入ってたら?」
イチルギが家屋の方を指さすと、横にいたティエップは防寒着で必死に身を守りながらぶんぶんと首を振る。
「ふーん。ま、いいけど」
イチルギは空を見上げ、真っ黒な曇天を駆け回る雷光を満足そうに眺める。
「常夜の呪い、解けた見たいねー。やっぱこんな悪天候でも本物の空の方がいいわ」
既にイチルギもバリアも魔法陣を停止させていたが、天候は変わらず猛吹雪のままであった。ティエップの作戦通り、ただでさえ冷え込む砂漠の夜は吹雪を受け入れその勢いを増していく。翌日になれば日が昇り、今夜の積雪もあっという間に溶けてしまうが、“今晩に限り常夜の呪いを解く”というティエップの目的は達成された。
ティエップはラルバ達の勝利を祈り、不安そうに空を見上げている。イチルギは炎魔法で焚き火を作りつつ、ティエップの体にこびりついた雪を払う。
「ラルバ達なら大丈夫よ。ほら、風邪ひいちゃうからどっかに入りましょ」
~なんでも人形ラボラトリー 使奴研究所~
常夜の呪いが解けた今、使奴研究所屋上の気温はマイナス60度を下回り、いつもなら眼下に広がる雲にすっぽりと包まれ、更には氷粒の弾丸まで飛び交っている。もしラルバ達が侵入する時もこの状況であったなら、ハザクラとジャハルは到底生きて帰ることはできなかったであろう地獄絵図。
ラルバはそこへ悠々と現れ、防御魔法を貫かれ気を失っている老人を見つけて担いだ。そして満足そうに空を見上げ、荒れ狂う暴風雪の中を鼻歌を歌いながら後にした。
なんでも人形ラボラトリー上空10000m付近。凄まじい速度で上昇する物体が、雄叫びのような悲鳴をあげて飛んでいく。
「うっさいなあジャハル!大人なんだから我慢しなさい!」
「うおおおおおぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!」
今まで体感したことのない猛烈な加速。急激に下がる温度と気圧。息もできない程の風圧。数十秒とはいえ、この過酷な状況では流石の人道主義自己防衛軍No.2も死を覚悟せざるを得なかった。生身の人間であれば到底生きられない低気圧、低酸素濃度、低波導、低温。ラルバによる防御魔法の加護がなければ、あっという間に気を失い死に至る空間。ジャハルは置いてきたラデック達に引き止められた時のことを思い出し、ひどく後悔をした。
「はい、とうちゃーく。結局迎撃されなかったね」
ラルバが“空中に”立ち、抱えていたハザクラとジャハルを降ろした。3人は使奴研究所の屋上に立っているのだが、研究所は隠蔽魔法で透明になっているため、まるで空中に立っているような錯覚を覚えた。
肩でぜえぜえと荒く息をするジャハルの横で、異能で身体能力を強化していたハザクラが平然と辺りを見回している。
「ハザクラちゃんどったの?トイレ?」
声をかけられたハザクラは、思い出したかのように抗魔スカーフを取り出して自分とジャハルに巻く。
「入口を探している」
「気が早いね。ほい入口」
ラルバが勢いよく足を踏み鳴らすと、足元の“景色が砕け”研究所への穴が空いた。
「……侵入がバレるぞ」
「もうバレてるって。そんじゃあ行きまっしょーう」
2人が穴に飛び込むと、ジャハルも慌てて起き上がり後を追いかけた。
真っ暗な研究所は思ったより広く、ラルバ達は既に階段を4階分下っていた。ラルバが手当たり次第に通路の扉を開けるが、何も真っ暗でめぼしいものは何もなかった。
「ここもハズレ~。飽きてきちゃった」
手持ち無沙汰になり小躍りを始めるラルバをジャハルが睨む。
「もう少し緊張感を持てラルバ。敵はどこに潜んでいるか分からないんだぞ」
「さっきまでゲロゲロしてた人が何言ってるの」
「それとこれとは関係ない……!」
「静かに」
ラルバは突然立ち止まり、口元に人差し指を当てる。その直後――――
パァン!!!
発砲音とともにジャハルの眼前を銃弾が突き抜けていった。3人が顔を向けると、そこには脂汗とフケに塗れた肥満体の中年男性がこちらに銃を構えて立っていた。
「んふぅ~!んふぅ~!!ふいっ……ふぃぃぃ……!!!」
男は3人と目が合うと即座に逃げ出す。しかしラルバが一瞬で追い抜き進路を塞いだ。
「こんばんはぁ~!ちょいとお話しよろしくて?」
「んぃぃぃ~!!くくくくりしにぃでぃ!!ううううううりぎうぃるきってぃぃぃぃいいい……!!!」
「は?」
男は銃を放り投げて頭を抱え、ひどく怯えた様子で倒れ込む。まるでカブトムシの幼虫のように身を縮こまらせる男に、3人は困惑して顔を見合わせる。
「なんだコイツ……」
呆れ返るラルバの隣で、ハザクラがしゃがんで男に近づく。
「おい。起きろ。お前のしでかしたコトを詳しく話せ」
「うううう……!!くりしにぃでぃ……くりしにぃいでぃぃぃぃ……!!!」
ハザクラが言葉を理解しようと抗魔スカーフを外そうとするが、ラルバがそれを止めて男の顔を覗き込む。
「いや、なるほど。“殺さないで”か」
ラルバが男の顔を粘土を捏ねるようにぐにぐにと触診する。
「顎の筋肉が凝り固まっている。歯をずっと食いしばっていたせいでもう開かんのだろう。精神的にも病んでいるようだな。舌肥大も相まってストレスによる過呼吸が悪化している」
ジャハルは辺りを見回して他に敵がいないコトを確認してから、蹲る男に視線を落とす。
「この国、“なんでも人形ラボラトリー”はお前が作ったのか?」
男はコクコクと小刻みに頷く。
「1人で?」
再び頷く。
「一体何故?」
男はピクリと一瞬痙攣すると、全身から滝のように汗をだらだらと流して固まる。
「……ダメだ。話にならない」
「俺が話そう」
ハザクラは尻餅をついている男にしゃがんで目線を合わせる。
『質問にハッキリ答えろ。嘘偽りなく』
「うぃ、うぃきってぃ……しゃべ、喋る……あれ?」
「よし、全て話せ。この国が出来てから時系列順に」
「チャ、チャンスだと思ったんだ。ここの事故が起こった時」
「事故。使奴の解放に繋がった事故か」
「そ、そう。俺は“知識のメインギア”として扱き使われてたから……研究所に、復讐出来ると思った」
「“知識のメインギア”……」
「そ、そう。俺の“記憶を操る”異能。それ使って、自我のない使奴に色んなことを憶えさせる……色んな専門家の知識を俺に移して……目一杯憶えたら丸ごと使奴に憶えさせる……そうして“生まれた時から完璧な知識を持った人造人間”が出来上がる……」
「……そうか」
メインギア――――使奴を作る上で核となる4人の異能持ち奴隷。洗脳のメインギアであった自分の境遇を思い出し、ハザクラは哀しそうな、それでいて疑いや軽蔑の色が混じった感情に苛まれる。
「それで、どうした?」
「う……事故が起こった後、使奴が解放されたことを知って、隠れてた。そんで自由になった使奴が全員出て行ってから、残ってた研究員をみんなころ、殺し、て……でも……!!」
「でも?」
「使奴がその辺彷徨いてるんじゃあ……!!平穏はない……!!俺もいつか殺される……!!だから、だから、時間壁を……止めて、この国を作った……!!使奴に侵されない“俺の国”を……!!!まって、なんで……!?」
突然混乱するように顔を掻き毟る男。ハザクラは続きを聞くため男の目を見て呟く。
「続きを話せ」
「うう……!!い、異能で夜を作った……!!この国は元々小さな集落で……夜になるとみんなで踊る習慣があった……だから“夜になると踊り出す”という法則を、異能で“踊り出すと夜になる”法則に捻じ曲げた……!!使奴は偽物を嫌う……偽物の夜は上手くいくと、思ったし……上手く行った……ああっ違う!!なんでっ!!」
「落ち着け。続けろ」
「うううう……!!!そのっ異能に……連動して……言語不覚の魔法を撒いた……!!言葉はめちゃくちゃになるけど、意味は伝わる……混乱魔法と伝達魔法を混ぜて国中に……!!と、とこ、“常夜の呪い”は使奴を追い返すのに打って付けだった……!!ううううっ……!!!け、研究所が見つからないように、浮かして、透明にした……!!ああっ……!!違うっ違う……!!」
男は涎を撒き散らして頭を抱え、目を白黒させながら嘔吐した。異常に取り乱す男を不審に思っていたハザクラは、最後に薄々気付いていた質問を投げかける。
「……その“踊り出すと夜になる”という法則破壊の異能は……誰の異能だ?」
男は再び盛大に胃液を吐き出しながら必死に言葉を絞り出す。
「おお、おおおお、お、れ」
「……お前の異能は“記憶の操作”じゃないのか?」
「そそそ、そう。違、じゃない、くて……!!ああっ……!?あああああっ!!!」
男は何かに気付いたように瞳孔を揺らし、助けを求めるかのようにハザクラ達を見る。
「おおおお、おれ、な、何年……生きた……?」
ハザクラは気の毒そうに顔を伏せ、ポツリと呟く。
「多分。200年ちょいだ」
男はそのままの姿勢で硬直し、涙をぽつりぽつりと溢してその場に倒れ込んだ。
男は黒幕に身代わりとして取り残されていた。男が持っていた知識はほぼ“知識のメインギア”である黒幕と同様のものであり、説明の最中に自分で相反する記憶があったことに混乱し、そして全てに気付き事切れた。
先程の男の独白か懺悔にも似た説明に、ジャハルは顔を大きく歪ませる。
「……なんということだ。こいつは、黒幕に200年もの間手駒として扱われていたのか……!何度も、何度も記憶を消され、植え付けられ、終いには身代わり……!!」
ハザクラは立ち上がって膝の埃を払う。
「……預言者のあの子も黒幕に嵌められたんだろう。身に覚えのない犯罪行為。こいつと同じように記憶を弄られていたなら合点が行く」
「……ただ、ただ異能を持っていたという理由だけで……何故……黒幕も“知識のメインギア”として、その境遇の辛さを嫌という程知っている筈ではないか!!それなのに……彼は満足に言葉も話せない程恐怖して……何故……!!」
「……ジャハルはもう少し“世の中の人間は大概が悪だ”ということを理解した方がいい。……お前は少し、幸せに育ちすぎた」
その言葉に何も言い返せず歯を食いしばっていたジャハルが顔を上げると、ラルバは既に通路の奥で曲がり角に姿を消す直前だった。2人は男を1人残して慌ててラルバを追いかける。
「おっおいラルバ!!1人で進むな!!」
追いついたジャハルがラルバに文句を言うが、ラルバは気にせず歩みを進める。
「おい!!あの男はどうするんだ!!」
「置いてく。別にもう要らないし」
「はぁ……!?」
ラルバはそのまま真っ直ぐ通路を進み、ある部屋の前で立ち止まる。
「……ここだけ足元の埃が異様に少ない。出入りが激しいんだろう」
3人が扉を開くとそこには――――
20基もの培養カプセルに浮かぶ使奴達。不快なモーター音が部屋中を駆け巡り、ぼんやりと発光するカプセルがラルバ達を照らした。20人の死体の如く動かない使奴に圧倒された2人を置き去りに、ラルバは正面の1番大きい操作パネルに近づいてマジマジと画面を覗き込む。
「…………なるほど、言うなれば“使奴燃料”だ」
そして、独り言のように呟く。
「我々使奴は使奴細胞で無限に近い魔力を作り、それで生き延びている。自我を持つ前の使奴をこうして繋げば、200年もの間、使奴研究所という巨大な施設を浮遊させ、透明化し、常夜の呪いを国内に蔓延させ続ける莫大な量の魔力を生成できる」
ジャハルは呆然とラルバの言葉を聞き続けていたが、ハッと我に帰りハザクラの方を見た。そこでは、感情表現の乏しいハザクラが目を見開いて瞳孔を細かく揺らし、魂が抜け人形になったかのように立ち尽くしていた。
しかし、ラルバは構わず説明を続ける。
「この使奴燃料を使えば200年もの間延命することも出来るだろう。病気だって治し放題だ」
ダァン!!!と、壁を殴りつける音がラルバの話を遮る。そこには、ラルバのすぐ隣まで来ていたハザクラが、俯いたまま培養カプセルに拳を突き立てていた。しかし、カプセルは傷一つつかずに淡く発光し続けている。中に浮かぶ使奴はピクリともせず、バイタル画面にハッキリと“生“の文字を表示させるのみで剥製の如く微動だにしない。
「……ラルバ、頼みがある。」
「やだ」
「どうせ元凶を拷問するんだろう。俺にやらせてくれ」
「言うと思ったよ。やだ」
「ハ、ハザクラ……!!」
ジャハルが宥めるようにハザクラの肩を触るが、ハザクラは突き放すように手を払う。
「慰めるなジャハル。ラルバ、耳を貸せ」
「えー……」
ラルバは渋々ハザクラに顔を寄せる。しかしハザクラが耳打ちをすると、ラルバの表情は段々と明るくなり、爛々と輝き始めた。
「ほう、はい?はあ、ほう、ほう!ほうほう!いやあ良いじゃない!許可する!」
「ハザクラ!ダメだ!」
ジャハルは再びハザクラを制止し、両肩を掴んで顔を向き合わせる。
「確かに悪には相応の罰が必要だ!しかし……それは更生や抑制のためだ!今回の件は誰の見せしめにもならない!!お前が、お前がそっち側に立ってしまったら……!!!」
「ジャハル」
ハザクラは自分の両肩を掴むジャハルの手をそっと握り、ゆっくりと降ろす。
「俺は冷静だ」
「ハザクラ……」
「あー2人ともー、しんみりしてるところ悪いんだけどさー」
ラルバは気怠そうに後頭部を掻きながら口を挟む。
「黒幕、逃げたよ」
「はあっ……はあっ……!!!」
1人の老人が階段を勢いよく駆け上がっている。その小柄でひ弱な見た目とは裏腹に、一段飛ばしで階段を登りぜえぜえと荒く呼吸を繰り返している。
「くそっ……!!!くそっ……!!!」
今まで都合の良い手駒として扱ってきた中年男を身代わりにと置き去りにしたしたが、ここまであっさりと見抜かれると思ってはおらず、僅かに期待していた心を蔑ろにされ募った苛立ちで余計に呼吸を乱す。
しかし、老人には最後の手段があった。老人は自身の“異能”に全てを賭けており、状況次第ではラルバどころかイチルギやバリアでさえも支配下に置けると画策していた。そのために必要なのは、たった一回の奇襲。そして今の状況は老人に大きく有利に働いていた。
まず一つ、今回乗り込んできた3人のうち使奴が1人しかいないこと。使奴1人さえ味方につければ、残りの2人などいないも同然である。次に自分の現在位置。ラルバ達を手駒の中年男で騙せなかったにしても、最下層に置き去りにすることができた。そして老人はもう屋上に出ようかという直前。どう足掻いてもラルバが先に屋上へ出ることは出来ず、奇襲の大前提を死守することができた。
そして最後になによりも“常夜の呪い”。現在時刻はもう日没をとっくに過ぎてはいるものの、偽物の夜空は使奴にとって気色悪い贋作であり、視界に入るだけで気が散る汚物そのもの。その状況下であれば、完璧な人造人間の使奴といえど奇襲への反撃に一瞬の遅れが生じる。老人はそこに賭けていた。
失敗すれば即死。しかし、成功すれば天地無双の大願成就。ラルバに触れる瞬間に異能を発動できるかどうか、その一瞬。老人は覚悟を決め屋上への扉に手をかける――――
「…………あ?」
砂漠のど真ん中にあるなんでも人形ラボラトリーだが、常夜の呪いによって国境をすっぽり覆う障壁が暑さ寒さを遮り、雨風さえ通さず気候は年中安定している。時折わざと常夜の呪いを解いて雨を国内に取り入れはしているものの、災害時は必ず常夜の呪いを張って国を守っている。
「な、なんだ…………!?」
故に、こんなことは通常あり得ない。
「何でっ…………!!!」
ましてや砂漠のど真ん中で。
「何でっ呪いはどうした…………!!!」
”暴風雪“など。
「一体……一体何が起こってる!!!」
~なんでも人形ラボラトリー 繁華街~
「外に出るなー!!家に入って戸締りを!!」
「防寒着のない方はこちらへー!!」
「4班は28番地へ!!手が回ってない!!」
「クッソ!やんの早いっつーの!!」
なんでも人形ラボラトリーの各地では、地下街下層にいた賊達が総出で防災活動に奮闘している。常夜の呪いの維持を担っていた踊り手達も、堪らず家屋に逃げ込み散り散りになった。
生まれて初めての暴風雪に、流石の賊達も不安そうに顔を見合わせる。
「これやり過ぎじゃねぇ?明日になったら全員凍死とかしてねぇよな……」
「……あの子が考えた作戦なんだから大丈夫だろ。信じろよ」
「お前ら!!呪いが解けるぞ!!さっさと家入れ!!」
「やべぇ!ウチらも逃げるぞ!」
~なんでも人形ラボラトリー 中央広場~
「こんなもんかしらねぇ。バリアー?そっちどおー?」
「おっけー」
なんでも人形ラボラトリー国の広場では、イチルギとバリアが巨大な魔法陣を描いて詠唱を行なっている。
イチルギが描いた風魔法の陣を中心に巨大な雲が形成され空一面を覆い、バリアが描いた氷魔法の陣からは何本もの光の柱が天へ伸び雲を貫いている。魔法で生み出した雲はどこまでも濃く広がっていき、使奴研究所のある上空15000mまで喰らい尽くした。
「はー疲れた。あなた、いい加減家に入ってたら?」
イチルギが家屋の方を指さすと、横にいたティエップは防寒着で必死に身を守りながらぶんぶんと首を振る。
「ふーん。ま、いいけど」
イチルギは空を見上げ、真っ黒な曇天を駆け回る雷光を満足そうに眺める。
「常夜の呪い、解けた見たいねー。やっぱこんな悪天候でも本物の空の方がいいわ」
既にイチルギもバリアも魔法陣を停止させていたが、天候は変わらず猛吹雪のままであった。ティエップの作戦通り、ただでさえ冷え込む砂漠の夜は吹雪を受け入れその勢いを増していく。翌日になれば日が昇り、今夜の積雪もあっという間に溶けてしまうが、“今晩に限り常夜の呪いを解く”というティエップの目的は達成された。
ティエップはラルバ達の勝利を祈り、不安そうに空を見上げている。イチルギは炎魔法で焚き火を作りつつ、ティエップの体にこびりついた雪を払う。
「ラルバ達なら大丈夫よ。ほら、風邪ひいちゃうからどっかに入りましょ」
~なんでも人形ラボラトリー 使奴研究所~
常夜の呪いが解けた今、使奴研究所屋上の気温はマイナス60度を下回り、いつもなら眼下に広がる雲にすっぽりと包まれ、更には氷粒の弾丸まで飛び交っている。もしラルバ達が侵入する時もこの状況であったなら、ハザクラとジャハルは到底生きて帰ることはできなかったであろう地獄絵図。
ラルバはそこへ悠々と現れ、防御魔法を貫かれ気を失っている老人を見つけて担いだ。そして満足そうに空を見上げ、荒れ狂う暴風雪の中を鼻歌を歌いながら後にした。
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