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ルーカス
マリーが帝国に来てから、数か月が過ぎた。
初めはなれない事ばかりで戸惑いも多かったが、同僚に恵まれ、仕事も随分と出来る様になってきた。
少しずつではあるが、料理も覚え始めている。
野宿をしていた時に、近衛騎士たちが作っているのを見て、自分ならもっと上手に出来る様な気がしたのだ。
あれを料理といえるのかは、疑問でしかないが…
公爵令嬢だったマリーが、料理を作っている姿を見たのは、初めての経験でもあった。
仕事に慣れた事もあり、時間を作っては厨房へ行き、料理人から料理を教えて貰う様になっていたのだった。
どうやらマリーは、貴族が口にする食べ物よりも、平民が口にする食べ物の方が美味しくいただける事に気付いたのである。
公爵令嬢だった頃は、好き嫌いも多く我儘ばかり言っていたが、ここでは出された物を残すと容赦なく怒声が飛んでくるのだ。
まだ来たばかりの頃は、怒られるのが怖くて好き嫌いを言えず、無理やり料理を口に入れていた。
しかし、食べ物に慣れると、案外美味しくいただける事に気付いたのである。
それからは、自分好みの味付けをしたりと、工夫する様になっていった。
マリーの日常は随分と変わってしまったが、想像していたよりも、ずっと楽しく過ごしていたのだった。
ルーカスの元に、実母であるキャサリンから、一通の手紙が届いた。
新しく使用人を雇った事が書いており、よく働いてくれる気立ての良い娘だと褒めている。
職場でも同僚と上手く付き合っており、毎日楽しそうに過ごしていると、マリーの近況報告が手紙には書いてあった。
ルーカスは、マルゲリーターの命を、どんな事をしてでも救ってあげたいと考えていた。
何度も国王へ直談判を行ったが、首を縦に振ってくれる事はなかったのである。
一国の王ともなれば、私情を挟めない事は、ルーカスも充分理解していたのだ。
それでも、マルゲリーターへの重すぎる判決には、従う事が出来なかったのだった。
国王が決めた事に異を唱えるのは、謀反と見做されても文句は言えない。
誰にも何も言わせずに、マルゲリーターを救う方法を考えた末、強盗に襲われ命を落としたと見せかけたのだった。
そんな見え透いた方法は、当然だが国王にも見抜かれている。
マルゲリーターを、国内に匿っていては、ルーカスも命を落としかねない。
そこで、帝国へ逃がす事にしたのだった。
皇弟妃であるキャサリンが首謀者であるならば、国王とて手を出せない事を知っていたからである。
処刑される筈の罪人が逃げたとなれば、王国は血眼になって探すだろう。
しかし、マルゲリーターは、オルターナ公爵夫妻の身勝手で犠牲になっただけなのだ。
重い罪を犯した訳ではないのである。
国王とて人の子の親である。
罪なき若い娘の命を、弄びたい訳ではなかったのだ。
ルーカスがキャサリンに頼んで、マルゲリーターの逃亡を企てたのだと感づいていても、それ以上は踏み込んでこなかったのである。
帝国へ逃げ延びたのならば、そこで幸せに生きて欲しいと願ってもいたのだった。
ルーカスは、そんな国王の心情も理解したうえで、マルゲリーターを逃がす算段を企てたのだ。
しかし、今まで公爵令嬢として生きてきたマルゲリーターが、平民として生きていけるのか心配で仕方がなかったのも事実である。
そこで豪華なドレスや高価な宝石は買えなくても、身の回りの世話をしてくれる使用人を雇い、遊んで暮らせるだけのお金は用意してあったのだ。
マルゲリーターが、隠し事や嘘を吐くのが苦手だという事も知っていた。
その為本人には何も知らせずに、計画を実行した事も気掛かりでしかなかった。
怖い思いをさせてしまい、一生消えない傷を心に抱えてしまうのではないかとも考えていたのである。
極力一人にならぬ様帝国まで連れて行き、キャサリンの使用人として一時的に匿って貰い、ほとぼりが覚めた頃合いを見て自立させる予定でいたのだった。
嫌がる様ならば、無理に下働きなどせずともよいと、キャサリンとは話しを付けてもいた。
全ては、大切な妹を救うための計画だったのだが、上手くいく保証はどこにもなかったのだ。
ルーカスは、不安で眠れない夜を何日も過ごしていた。
ところが想定外の事態が起こり、マリーは平民としての生活に馴染んでいると聞かされ、我が目を疑ったのである。
そして、持たせたお金に手を付ける事もなく、貰った給金だけで楽しそうに生活をしている様だとも書いてあった。
とても信じられないとルーカスは思うのだが、大人になった妹を、誇らしくも感じていた。
「変ったね、マリー」
ルーカスは、マリーは貴族令嬢としてではなく、平民として生きる方が性にあっていたのかもしれないと考えていた。
マリーを、幼い頃から我儘放題に育てていなければ、立派な淑女になっていたのではないかとも考えてみた。
しっかりと教育をしていたなら、アルフレッドから婚約を破棄される事もなく、国母としての未来があったかもしれない。
今更ではあるが、育った環境が悪かったのだと、思うのだった。
今は無理でも、いつかエレインにも真実を話し、二人でマリーに会いに行きたいとも考えている。
もう二度と会えないと覚悟はしていたが、淡い期待を捨て切れずにいる、ルーカスであった。
初めはなれない事ばかりで戸惑いも多かったが、同僚に恵まれ、仕事も随分と出来る様になってきた。
少しずつではあるが、料理も覚え始めている。
野宿をしていた時に、近衛騎士たちが作っているのを見て、自分ならもっと上手に出来る様な気がしたのだ。
あれを料理といえるのかは、疑問でしかないが…
公爵令嬢だったマリーが、料理を作っている姿を見たのは、初めての経験でもあった。
仕事に慣れた事もあり、時間を作っては厨房へ行き、料理人から料理を教えて貰う様になっていたのだった。
どうやらマリーは、貴族が口にする食べ物よりも、平民が口にする食べ物の方が美味しくいただける事に気付いたのである。
公爵令嬢だった頃は、好き嫌いも多く我儘ばかり言っていたが、ここでは出された物を残すと容赦なく怒声が飛んでくるのだ。
まだ来たばかりの頃は、怒られるのが怖くて好き嫌いを言えず、無理やり料理を口に入れていた。
しかし、食べ物に慣れると、案外美味しくいただける事に気付いたのである。
それからは、自分好みの味付けをしたりと、工夫する様になっていった。
マリーの日常は随分と変わってしまったが、想像していたよりも、ずっと楽しく過ごしていたのだった。
ルーカスの元に、実母であるキャサリンから、一通の手紙が届いた。
新しく使用人を雇った事が書いており、よく働いてくれる気立ての良い娘だと褒めている。
職場でも同僚と上手く付き合っており、毎日楽しそうに過ごしていると、マリーの近況報告が手紙には書いてあった。
ルーカスは、マルゲリーターの命を、どんな事をしてでも救ってあげたいと考えていた。
何度も国王へ直談判を行ったが、首を縦に振ってくれる事はなかったのである。
一国の王ともなれば、私情を挟めない事は、ルーカスも充分理解していたのだ。
それでも、マルゲリーターへの重すぎる判決には、従う事が出来なかったのだった。
国王が決めた事に異を唱えるのは、謀反と見做されても文句は言えない。
誰にも何も言わせずに、マルゲリーターを救う方法を考えた末、強盗に襲われ命を落としたと見せかけたのだった。
そんな見え透いた方法は、当然だが国王にも見抜かれている。
マルゲリーターを、国内に匿っていては、ルーカスも命を落としかねない。
そこで、帝国へ逃がす事にしたのだった。
皇弟妃であるキャサリンが首謀者であるならば、国王とて手を出せない事を知っていたからである。
処刑される筈の罪人が逃げたとなれば、王国は血眼になって探すだろう。
しかし、マルゲリーターは、オルターナ公爵夫妻の身勝手で犠牲になっただけなのだ。
重い罪を犯した訳ではないのである。
国王とて人の子の親である。
罪なき若い娘の命を、弄びたい訳ではなかったのだ。
ルーカスがキャサリンに頼んで、マルゲリーターの逃亡を企てたのだと感づいていても、それ以上は踏み込んでこなかったのである。
帝国へ逃げ延びたのならば、そこで幸せに生きて欲しいと願ってもいたのだった。
ルーカスは、そんな国王の心情も理解したうえで、マルゲリーターを逃がす算段を企てたのだ。
しかし、今まで公爵令嬢として生きてきたマルゲリーターが、平民として生きていけるのか心配で仕方がなかったのも事実である。
そこで豪華なドレスや高価な宝石は買えなくても、身の回りの世話をしてくれる使用人を雇い、遊んで暮らせるだけのお金は用意してあったのだ。
マルゲリーターが、隠し事や嘘を吐くのが苦手だという事も知っていた。
その為本人には何も知らせずに、計画を実行した事も気掛かりでしかなかった。
怖い思いをさせてしまい、一生消えない傷を心に抱えてしまうのではないかとも考えていたのである。
極力一人にならぬ様帝国まで連れて行き、キャサリンの使用人として一時的に匿って貰い、ほとぼりが覚めた頃合いを見て自立させる予定でいたのだった。
嫌がる様ならば、無理に下働きなどせずともよいと、キャサリンとは話しを付けてもいた。
全ては、大切な妹を救うための計画だったのだが、上手くいく保証はどこにもなかったのだ。
ルーカスは、不安で眠れない夜を何日も過ごしていた。
ところが想定外の事態が起こり、マリーは平民としての生活に馴染んでいると聞かされ、我が目を疑ったのである。
そして、持たせたお金に手を付ける事もなく、貰った給金だけで楽しそうに生活をしている様だとも書いてあった。
とても信じられないとルーカスは思うのだが、大人になった妹を、誇らしくも感じていた。
「変ったね、マリー」
ルーカスは、マリーは貴族令嬢としてではなく、平民として生きる方が性にあっていたのかもしれないと考えていた。
マリーを、幼い頃から我儘放題に育てていなければ、立派な淑女になっていたのではないかとも考えてみた。
しっかりと教育をしていたなら、アルフレッドから婚約を破棄される事もなく、国母としての未来があったかもしれない。
今更ではあるが、育った環境が悪かったのだと、思うのだった。
今は無理でも、いつかエレインにも真実を話し、二人でマリーに会いに行きたいとも考えている。
もう二度と会えないと覚悟はしていたが、淡い期待を捨て切れずにいる、ルーカスであった。
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