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結婚 最終話
「やった~!おめでとう、リッキー。良かったわね、マリー。もう、どうなるかと思って、ドキドキしたわよ」
イザベラは、喜びのあまり駆け寄って来て、マリーに飛び付いた。
「ありがとう。ベラ」
「良かったな、リッキー」
エストニアンは、跪いたままのリッキーに、手を差し伸べた。
「ありがとう。こんなに緊張した事は、なかったよ」
リッキーは、素直にエストニアンの手を取り立ち上がると、声援を送ってくれていた観光客たちにも両手を上げて祝福に答えていた。
マリーは、嬉しそうに受け取った指輪を、眺めている。
「リッキーに、指輪を付けて貰ったら?」
「うん」
リッキーは、マリーに向き直ると、指輪を受け取り左手の薬指に付けたのだった。
台座には、小さなピンクサファイアが嵌められている。
高価な代物ではないが、愛と幸福の象徴という意味があり、恋人へ送るアクセサリーとして人気のある石なのだ。
リッキーは、マリーがいつも付けているネックレスが、ピンクダイヤだという事を知らない。
宝石店で、常にピンク色のネックレスを付けている事を店員に話したら、勧められたのがピンクサファイアだったのである。
後に、高価なピンクダイヤと知って、腰を抜かしたのは言うまでもない。
プロポーズの後、リッキーは、遠慮なくマリーに愛情表現をする様になっていった。
誰が見ても分かる程、マリーにベタ惚れなのである。
マリーはというと、アルフレッドへの想いがなくなった訳ではないのだが、リッキーの事が全く眼中にない訳でもなかった。
愛情表現は素直に嬉しく、愛されていると思うだけで、寂しかった心が少しずつだが癒されていったのだ。
イザベラや同僚とは違った優しさを、マリーは、リッキーから感じていたのである。
それからは、マリーもリッキーを一人の異性として見る様になり、アルフレッドへの想いは少しずつ良い思い出になっていった。
完全に忘れられる時は来ないと思うが、過去の初恋としてその思いは大切にしたいと考えている。
リッキーも、それでよいといっていた。
晴れてリッキーの婚約者となったマリーは、過去の失敗を繰り返さない様、自分の主張だけを押し付ける事をしない様に心掛けている。
常に相手の事を思い、喜んで貰う為の努力も惜しまなかった。
当然だが、リッキーもマリーが喜んでくれる事ならば、何でもやってのけたのだ。
マリーの全てを受け入れて、包み込んでくれるリッキーへと、愛情が徐々に移っていったのは必然だったのかもしれない。
そして出会ってから一年を待たずに、マリーとリッキーは、結婚式を挙げたのである。
帝都の小さな教会で、同僚たちから祝福されて式を挙げた二人は、とてもお似合いの夫婦となったのだ。
新婚生活は、見ている方が恥ずかしくなる程、甘く蕩けている。
先に目を覚ますのは、いつもリッキーである。
マリーに優しく口付けながら、起こすのが日課となっていた。
「おはよう、マリー。今朝も素敵だよ」
「おはよう、リッキー。貴方も素敵だけれど、まだ眠いわ」
目をこすりながら、もぞもぞとベッドから起き上がるマリーを、愛おしくリッキーが抱きしめる。
朝の洗顔を済ませると、二人でキッチンに立ち、朝食の用意をするのだった。
料理なんてした事もないリッキーは、マリーにとって邪魔な存在なのだが、一時も離れていたくないと言われれば邪険には出来なかったのである。
「じゃがいもと、たまねぎをちょうだい」
「はい、どうぞ」
「鍋にお水を入れて」
「はい、入れたよ」
「テーブルを拭いて」
「はい、拭いた」
「お皿を用意して」
「はい、終わったよ」
リッキーは、マリーの手伝いをしている時も、嬉しくて仕方がなかった。
準備が全て整うと、テーブルには美味しいスープとサラダにベーコンエッグ、白い焼き立てのパンが並んだ。
勿論、チキンも忘れてはいない。
護衛騎士のリッキーは、朝から食欲も旺盛なのである。
「美味しいよ、マリー。俺の頬は、何度落ちたのか、数え切れないよ」
「心配しなくてもいいよ。頬は、落ちたりなんかしないわ」
かなりの量の朝食を、ペロリと平らげて、零れ落ちそうな笑顔をリッキーは見せている。
マリーは、照れくさそうに笑っていた。
食後の片づけはリッキーの担当なので、マリーはゆっくりと化粧をするのだった。
身支度が整うと、二人で仲良く仕事に向かうのである。
マリーは皇宮へ、リッキーは侯爵邸へ行くので、暫くのお別れでもあった。
「マリー。寂しいけれど、行って来ます。今日は、遅くなるから迎えに行けないけれど、気を付けて帰ってくるんだよ」
「心配しないで。皇宮は、直ぐ目の前じゃない」
マリーが心配過ぎて、新居は皇宮から近いところに借りていたのだった。
リッキーが辻馬車に乗るのを見送って、マリーは自身の職場へと向かう。
毎日がとても幸せで、充実した日々を送っていた。
緩やかに時が流れていき、2人の愛の結晶である子をマリーが身籠ると、リッキーの過保護に磨きが掛かった。
「マリー!駄目だ、安静にしていないと、命に関わる!」
「大丈夫だよ、食事の支度くらいで大袈裟なんだから!ちょっとくっつき過ぎ、離れてよ!邪魔だな~」
「駄目だ!もしもの事があってからでは遅いんだ」
「そんなの心配し過ぎだって、何度言えば分かるのよ!も~う!あっちに行って!!!」
「マリー!!!」
リッキーは、寝室に追いやられてしまうのだった。
マリーは、しつこくついて回るリッキーに、少々うんざりしながらも幸せを感じているのだ。
そして第一子となる女の子が無事に誕生すると、その二年後には男の子が誕生したのである。
二人目が産まれた時、子育てに専念する為、マリーは惜しまれながら退職したのだった。
リッキーは、心から妻であるマリーを愛し、マリーもいつの間にかリッキーを心から愛する様になっていたのである。
アルフレッドの事は、遠い過去の出来事となり、思い出す事は殆どなくなっていた。
子煩悩で愛妻家の夫と、愛くるしい子供たちとの生活は、マリーにとって何よりも大切な宝物になったのだった。
おしまい。
最後まで読んで下さった読者の皆様、感謝感激、ありがとうございます<m(__)m>
イザベラは、喜びのあまり駆け寄って来て、マリーに飛び付いた。
「ありがとう。ベラ」
「良かったな、リッキー」
エストニアンは、跪いたままのリッキーに、手を差し伸べた。
「ありがとう。こんなに緊張した事は、なかったよ」
リッキーは、素直にエストニアンの手を取り立ち上がると、声援を送ってくれていた観光客たちにも両手を上げて祝福に答えていた。
マリーは、嬉しそうに受け取った指輪を、眺めている。
「リッキーに、指輪を付けて貰ったら?」
「うん」
リッキーは、マリーに向き直ると、指輪を受け取り左手の薬指に付けたのだった。
台座には、小さなピンクサファイアが嵌められている。
高価な代物ではないが、愛と幸福の象徴という意味があり、恋人へ送るアクセサリーとして人気のある石なのだ。
リッキーは、マリーがいつも付けているネックレスが、ピンクダイヤだという事を知らない。
宝石店で、常にピンク色のネックレスを付けている事を店員に話したら、勧められたのがピンクサファイアだったのである。
後に、高価なピンクダイヤと知って、腰を抜かしたのは言うまでもない。
プロポーズの後、リッキーは、遠慮なくマリーに愛情表現をする様になっていった。
誰が見ても分かる程、マリーにベタ惚れなのである。
マリーはというと、アルフレッドへの想いがなくなった訳ではないのだが、リッキーの事が全く眼中にない訳でもなかった。
愛情表現は素直に嬉しく、愛されていると思うだけで、寂しかった心が少しずつだが癒されていったのだ。
イザベラや同僚とは違った優しさを、マリーは、リッキーから感じていたのである。
それからは、マリーもリッキーを一人の異性として見る様になり、アルフレッドへの想いは少しずつ良い思い出になっていった。
完全に忘れられる時は来ないと思うが、過去の初恋としてその思いは大切にしたいと考えている。
リッキーも、それでよいといっていた。
晴れてリッキーの婚約者となったマリーは、過去の失敗を繰り返さない様、自分の主張だけを押し付ける事をしない様に心掛けている。
常に相手の事を思い、喜んで貰う為の努力も惜しまなかった。
当然だが、リッキーもマリーが喜んでくれる事ならば、何でもやってのけたのだ。
マリーの全てを受け入れて、包み込んでくれるリッキーへと、愛情が徐々に移っていったのは必然だったのかもしれない。
そして出会ってから一年を待たずに、マリーとリッキーは、結婚式を挙げたのである。
帝都の小さな教会で、同僚たちから祝福されて式を挙げた二人は、とてもお似合いの夫婦となったのだ。
新婚生活は、見ている方が恥ずかしくなる程、甘く蕩けている。
先に目を覚ますのは、いつもリッキーである。
マリーに優しく口付けながら、起こすのが日課となっていた。
「おはよう、マリー。今朝も素敵だよ」
「おはよう、リッキー。貴方も素敵だけれど、まだ眠いわ」
目をこすりながら、もぞもぞとベッドから起き上がるマリーを、愛おしくリッキーが抱きしめる。
朝の洗顔を済ませると、二人でキッチンに立ち、朝食の用意をするのだった。
料理なんてした事もないリッキーは、マリーにとって邪魔な存在なのだが、一時も離れていたくないと言われれば邪険には出来なかったのである。
「じゃがいもと、たまねぎをちょうだい」
「はい、どうぞ」
「鍋にお水を入れて」
「はい、入れたよ」
「テーブルを拭いて」
「はい、拭いた」
「お皿を用意して」
「はい、終わったよ」
リッキーは、マリーの手伝いをしている時も、嬉しくて仕方がなかった。
準備が全て整うと、テーブルには美味しいスープとサラダにベーコンエッグ、白い焼き立てのパンが並んだ。
勿論、チキンも忘れてはいない。
護衛騎士のリッキーは、朝から食欲も旺盛なのである。
「美味しいよ、マリー。俺の頬は、何度落ちたのか、数え切れないよ」
「心配しなくてもいいよ。頬は、落ちたりなんかしないわ」
かなりの量の朝食を、ペロリと平らげて、零れ落ちそうな笑顔をリッキーは見せている。
マリーは、照れくさそうに笑っていた。
食後の片づけはリッキーの担当なので、マリーはゆっくりと化粧をするのだった。
身支度が整うと、二人で仲良く仕事に向かうのである。
マリーは皇宮へ、リッキーは侯爵邸へ行くので、暫くのお別れでもあった。
「マリー。寂しいけれど、行って来ます。今日は、遅くなるから迎えに行けないけれど、気を付けて帰ってくるんだよ」
「心配しないで。皇宮は、直ぐ目の前じゃない」
マリーが心配過ぎて、新居は皇宮から近いところに借りていたのだった。
リッキーが辻馬車に乗るのを見送って、マリーは自身の職場へと向かう。
毎日がとても幸せで、充実した日々を送っていた。
緩やかに時が流れていき、2人の愛の結晶である子をマリーが身籠ると、リッキーの過保護に磨きが掛かった。
「マリー!駄目だ、安静にしていないと、命に関わる!」
「大丈夫だよ、食事の支度くらいで大袈裟なんだから!ちょっとくっつき過ぎ、離れてよ!邪魔だな~」
「駄目だ!もしもの事があってからでは遅いんだ」
「そんなの心配し過ぎだって、何度言えば分かるのよ!も~う!あっちに行って!!!」
「マリー!!!」
リッキーは、寝室に追いやられてしまうのだった。
マリーは、しつこくついて回るリッキーに、少々うんざりしながらも幸せを感じているのだ。
そして第一子となる女の子が無事に誕生すると、その二年後には男の子が誕生したのである。
二人目が産まれた時、子育てに専念する為、マリーは惜しまれながら退職したのだった。
リッキーは、心から妻であるマリーを愛し、マリーもいつの間にかリッキーを心から愛する様になっていたのである。
アルフレッドの事は、遠い過去の出来事となり、思い出す事は殆どなくなっていた。
子煩悩で愛妻家の夫と、愛くるしい子供たちとの生活は、マリーにとって何よりも大切な宝物になったのだった。
おしまい。
最後まで読んで下さった読者の皆様、感謝感激、ありがとうございます<m(__)m>
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