白夜のからくりハウス

夕凪

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人身御供の箱庭

Siege

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「〈ハウス〉、今どんな感じかな。もう〈祝祭〉終わっちゃったかな」
「終わってるんじゃないか。かなりこの中彷徨ってるだろ」
 アスターは少しがっかりした。せっかくずっと準備してきたのに、残念だ。ソーニャ、来るならもっと前に来てくれれば良かったのに。生のタレイアも見たかった。
「でも、〈祝祭〉って言っても、どうせ騒ぐだけだろ。それに来年もあるんだからいいじゃないか」
 興味なさげにソーニャが言う。アスターはむっときたのもそうだが、その言い振りが気になって、ソーニャにたずね返した。
「君のとこじゃ、お祭りとかはなかったの?」
「なかった。あったのかもしれないけど、少なくともオレは知らない」
 そっけなくソーニャが答えた。何だ、それならとアスターは提案した。
「じゃ、もし〈祝祭〉に間に合ってたら、一緒に参加しようよ。せっかくだしさ」
「時間があればな。オレ、急いでるんだ」
 せかせかとソーニャが足を進めた。つれないなぁと思いながらも、アスターも歩調を合わせた。ふと、また疑問が生まれてきて、アスターはもう一度たずねた。
「そういや、訊くの忘れてたけど、何で〈ハウス〉のエネルギーが欲しいのさ?世界復活計画のためかい?」
「そんなところかな。でも、オレはそんな大層な目的のために動いちゃねぇよ。興味もないしな」
「じゃあ、何のために…」
 アスターが追求しようとしたとき、はっとしたようにソーニャが顔を上げた。左右で色の違う瞳が、鋭い光を帯びて光っている。どうしたのかたずねようとアスターは口を開きかけた。しかし、その理由はすぐにわかった。
 少し前の方にある部屋のドアを開け、金属剥き出しのたくさんの機械人形たちが、がちゃがちゃといううるさい物音とともに現れたからだ。こっちに走って向かってきている。驚きながらも、アスターはソーニャと一緒に急いで回れ右して走り出した。
「倒せそう?」
 アスターは走りながら振り返り、彼らが手にしている赤錆のついた金属棒をちらりと見た。あれで叩かれたらただでは済まなさそうだ。
「今の武器じゃ無理だな。オレのナイフは生身の人間様専用だ。金属に突き刺すなんてできない」
「そうだよねぇ」
 一旦どこかの部屋に立てこもって、その部屋にあるもので反撃する?でも、何もなかったら、袋の鼠になってしまう。けれど、このままずっと逃げ続けても、底なしの体力を持つ機械人形達に追いつかれるだけだ。アスターはしばらく考えて、答えを出した。
「立てこもろう。一か八かだ」
「認めたくねぇけど、それくらいしかなさそうだな」
 しつこく追ってくる機械人形たちの集団を振り返りながら、ソーニャが苦々しげにつぶやいた。
「で、どの部屋に入るんだ?」
「あの部屋!」
 アスターは少し先のドアを指さした。ソーニャがうなずいた。
「一応訊くけど、何でそれにしたんだ?オレにはどのドアも同じように見えるけど」
「ないよ」
 ただの勘で選んだだけだ。ソーニャがやれやれと首を振る。アスターは後方の機械人形の様子も気にしながら、急いでそのドアを開け、中に入った。ソーニャもそれに続く。ソーニャが入ったのを確認してから、アスターは素早く鍵をかけ、ついでに横にあった机を動かして、バリケードを作った。これでしばらくは大丈夫だ。
「何にもないな」
 油断のない目つきで部屋を観察しながら、ソーニャがつぶやいた。確かに、殺風景な部屋だ。アスターは改めて部屋を見回した。金属製の机と椅子、何個かの便器と手洗い場、そして天井の蛍光灯という、かなりディストピアを感じる部屋だ。おそらく、元々はお手洗いだったのだろう。
「こんなんで、機械人形撃退できるか?」
 懐疑と期待が半々といった様子のソーニャが、アスターの方に振り返った。アスターは、水の確認をしながらうなずいた。水はまだ通っている。電気もある。ならば大丈夫だ。一応、機械人形にも詳しそうな専門家に訊いておこう。
「あのさ、機械人形って感電したら壊れるよね?あと、あの機械人形たちって、オルロとかとは違うよね?」
「もちろん、壊れる。後の質問については、あの状態の機械人形は普通の機械と一緒だから、心配しなくていい。良心の呵責とかも感じる必要はないぞ。ただのプログラムの寄せ集めだからな。
 …あんた、何考えてんだ?すっごくわくわくしてるように見えるぜ」
「何でもないよ。たださ、物を壊すのって、背徳感も相まって楽しくない?なかなかできないしさ」
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