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第七章 地下世界
98.願いと代償
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「なんで、アイツばっか苦しむんだろうな」
睦月は言った。呟くように、ただぽつりと。
大量の薪を抱えたアジェラを背後、流れる小川で水を汲むアガラを眺めていた睦月。そんな彼は、ぼんやりと……ただそう、ぼんやりとしながら、今しがたの発言をしてみせた。
アガラが振り返り、アジェラが抱えた薪の上から目元を覗かせ、静かに呟いた睦月を見やる。
「……アイツ、なんにも悪いことしてないのに」
再び口を開けて言葉を紡いだ睦月に、アガラがそっと視線を他所へ。向けてから、彼女は水の入ったバケツを足元に置くと、新たなバケツへと手を伸ばし、こう告げる。
「してるよ、悪いこと」
「は?」
「リレイヌは……あの子は罪を犯してる。それこそずっとね」
睦月は眉間にシワを寄せて問うた。どんな罪だと。
優しい彼女が犯した罪とはなんなのか。問うた彼に、アガラは答える。
「──産まれたこと」
「……は?」
「産まれたことこそ、あの子の罪だ」
「……ふざけてんのか」
グルル、と喉を鳴らし、睦月は怒った。静かなその怒りに、アガラはしかし反応しない。
ただ黙々と水汲みを続けている。
「……リレイヌ様は、許されないのですか?」
薪を抱え直しながら、アジェラが問うた。 不安げなその問いかけに、答える者は誰もいない。
静かな静寂が当たりを包んだ。小川を流れる水の音だけが、この場にいやに響いている。
「……リレイヌは、ただ生きたいだけだ。幸せに、ただ、生きていたいだけだ」
睦月が言う。
アガラはそれに、「そうだね」と一言。小さく返した。
「なにか、なにか方法があるはずだろ……リレイヌが、アイツが、幸せになる方法が……罪とか罰だとか、そんなの言われない方法がなにか──」
「……そうだね」、と返したアガラが、水の入ったバケツを手に立ち上がる。睦月はそんなアガラに言った。「教えてくれよ」と。
どうすれば、あの悲しくて優しい少女を救えるのか。それを教えてくれと強請る睦月に、アガラは少しだけ黙った後に、こう言った。
「生きなさい」
「……は?」
「……生きるんだ。長い時が経とうとも、あの子の傍で、みんな生き続けるんだ。その為に、どんな犠牲を払おうとも──ただ、生きなさい」
それがきっと、いつしか希望となり得るから……。
アガラの言葉に、睦月は沈黙。ゆっくりと拳を握ると、やがてそれをそっと解いた。そして、アジェラが不安そうに見つめる中、顔を上げた彼は言うのだ。
「師匠、頼みがある」
アガラは振り返り、困ったように笑う。
睦月はそんな彼女に、己の頼みを聞き入れてもらわんと、そっと願いを口にした。
睦月は言った。呟くように、ただぽつりと。
大量の薪を抱えたアジェラを背後、流れる小川で水を汲むアガラを眺めていた睦月。そんな彼は、ぼんやりと……ただそう、ぼんやりとしながら、今しがたの発言をしてみせた。
アガラが振り返り、アジェラが抱えた薪の上から目元を覗かせ、静かに呟いた睦月を見やる。
「……アイツ、なんにも悪いことしてないのに」
再び口を開けて言葉を紡いだ睦月に、アガラがそっと視線を他所へ。向けてから、彼女は水の入ったバケツを足元に置くと、新たなバケツへと手を伸ばし、こう告げる。
「してるよ、悪いこと」
「は?」
「リレイヌは……あの子は罪を犯してる。それこそずっとね」
睦月は眉間にシワを寄せて問うた。どんな罪だと。
優しい彼女が犯した罪とはなんなのか。問うた彼に、アガラは答える。
「──産まれたこと」
「……は?」
「産まれたことこそ、あの子の罪だ」
「……ふざけてんのか」
グルル、と喉を鳴らし、睦月は怒った。静かなその怒りに、アガラはしかし反応しない。
ただ黙々と水汲みを続けている。
「……リレイヌ様は、許されないのですか?」
薪を抱え直しながら、アジェラが問うた。 不安げなその問いかけに、答える者は誰もいない。
静かな静寂が当たりを包んだ。小川を流れる水の音だけが、この場にいやに響いている。
「……リレイヌは、ただ生きたいだけだ。幸せに、ただ、生きていたいだけだ」
睦月が言う。
アガラはそれに、「そうだね」と一言。小さく返した。
「なにか、なにか方法があるはずだろ……リレイヌが、アイツが、幸せになる方法が……罪とか罰だとか、そんなの言われない方法がなにか──」
「……そうだね」、と返したアガラが、水の入ったバケツを手に立ち上がる。睦月はそんなアガラに言った。「教えてくれよ」と。
どうすれば、あの悲しくて優しい少女を救えるのか。それを教えてくれと強請る睦月に、アガラは少しだけ黙った後に、こう言った。
「生きなさい」
「……は?」
「……生きるんだ。長い時が経とうとも、あの子の傍で、みんな生き続けるんだ。その為に、どんな犠牲を払おうとも──ただ、生きなさい」
それがきっと、いつしか希望となり得るから……。
アガラの言葉に、睦月は沈黙。ゆっくりと拳を握ると、やがてそれをそっと解いた。そして、アジェラが不安そうに見つめる中、顔を上げた彼は言うのだ。
「師匠、頼みがある」
アガラは振り返り、困ったように笑う。
睦月はそんな彼女に、己の頼みを聞き入れてもらわんと、そっと願いを口にした。
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