死にたがりの神様へ。

ヤヤ

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第八章 世界大戦

113.説明と頼み事

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「よく寝て起きて、満腹とまではいかないが腹も膨れた。ちょうどいい頃合いだし、早速説明させていただこうかね」

 告げるリオルに皆の視線が向けられる。これから起こるであろう戦いに若干の不安をその顔に浮かべる面々を見回し、彼は表情を消すように笑むのを止めた。そして、口を開く。

「現在、俺らの軍は西に存在するベパイス帝国、そして東に存在するバルキア共和国と争いを続けている。要は挟み撃ちになってるわけ。帝国には数多の魔導兵器が鎮座し、バルキア共和国には魔法使いがうじゃうじゃ。コレは普通の人間の力ではどうすることもできないものだ」

「そこで俺らの出番ってか?」

「ああ。話が早くて助かるよ」

 頷いたリオルは、どこからとも無く地図を取り出しそれを机の上に広げてみせた。そして、その上でパチン、と軽やかに指を鳴らす。
 鳴らされた指に呼応するように、幾つかの光が地図上に現れた。それらはチカチカ点滅すると、やがて危険を表す赤色に染まっていく。

「今光ってる場所は各軍が配置されてる場所だ。東に一軍、西に二軍。そして俺らが今いるココは最後の砦として存在している、要は作戦本部っつーもんだ」

「なるほど?」

「……お前たち四人には、西と東、二手に分かれて各国に攻撃を仕掛けてもらいたい」

 アジェラが戸惑い、睦月が眉を寄せた。リックがその向かい側で「無謀では?」と腕を組み、リレイヌはじっと地図上を見つめている。
 三者三様ならぬ四者四様。それぞれが異なる反応を見せる中、リオルは努めて冷静に言葉を紡いだ。

「別に勝ちに行けとは言っていない。あくまでお前ら四人がやるのは陽動。無理だと思ったら撤退しても構わないし、お前らの命を最優先にするよう各隊には通達してある」

「でも、さすがにその……それは、なんというか……」

「……人質がいるんだ」

 重苦しく口を開いたリオルに、四人は目を向けた。驚いたようなその視線に耐え兼ねるように下を向き、彼は告げる。

「おおよそ百の人質が、各国に捕らえられている。俺が今やりたいのはその人質の奪還。それをクリアするためには、多少の犠牲もやむ無しと考えている」

「……人質の命は保証されてんのか?」

「いや。されてない。だからこそ、早い解放が必要なんだ」

 頼む、と頭を下げる友人の言葉に、睦月とアジェラ、リックは難しい顔でお互いを見やった。気持ちはわかるが、しかしそれでもリスクが大きいと悩む彼らの横、リレイヌが地図上を指さし、口を開けた。

「ベパイス帝国は山に囲まれた国で、反対にバルキア共和国は海に囲まれた国なんだろう? なら、その立地を上手く利用すれば、犠牲の数も格段に減ると思うよ」

「……というと?」

「リックと睦月の二人をバルキア共和国に向かわせるといい。リックの魔導があれば海を荒らすことが可能だ。ベパイス帝国も同様に。こちらは私とアジェラが居れば事足りる。ヒトは自然災害に弱いからね。それを上手く使えばいいのさ」

「敵陣には魔法使いもいれば強力な武器もわんさかある。それはどうクリアするつもりだ?」

「簡単さ。魔法で対抗すればいい。魔法には魔法をぶつければ自ずと道は開かれる。武器もしかり。それに、群がった魔法使いほど自身の力を過信する。単体になった途端、それらの力は半減するんだ。余程鍛えていなければね。つまり──」

「魔法使いをバラけさせれば勝機はある、か?」

 でもどうやって、とリオルは悩む。
 それに、睦月が「そういうことなら俺とリレイヌの出番だな」と腕を組んだ。リオルが不審そうに彼を見ている。

「囮作戦、ってーの? 地下世界でよくやってたからさ。おびき寄せるのは得意だぜ、俺ら。バラけさせるのもまあぼちぼち……」

「はは! そりゃあ不安だな!」

 カラカラ笑い、リオルは無言に。「本当にやれるんだな?」と問う彼に、睦月とリレイヌはすぐに首肯。当然だと言いたげに小さく笑う。

「……よし。なら、リレイヌの案を採用しよう。各隊長たちにはお前らのフォローをするように通達するよ。少し待っててくれ」

 そう言い立ち上がり、リオルは食堂の外へ。出ていく彼を見届けてから、「ほんとに良かったのか……?」とリックが睦月、そしてリレイヌを振り返る。その瞳には不安と心配の色が浮かんでおり、この作戦に対し不満があることを告げていた。

「んならどうするよ。最善の方法なんて、きっととっくの昔に試されて終わってるぜ。んなのリオルの顔見りゃすぐわかる」

「そうは言っても、お前はまだしもリレイヌが囮役など……」

「大丈夫だって。お前も知ってんだろ。リレイヌに俺ら、一度も勝てた試しねえんだぞ」

「それはそうだが……」

 もごもごと口籠もるリック。睦月が「もうこの話は終わり。終了」とそっぽを向くので、彼は不安げにリレイヌを見つめた。しかし、リレイヌはその視線に反応することは無く、目の前の水を丁寧な動作で飲んでいるだけ。

「……不安だ」

 思わず呟くリックの隣、睡魔に抗えなかったアジェラが額から机に突っ伏した。
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