36 / 129
第三章 強さを求めて
35.龍の墓場
しおりを挟むザクザクと踏みしめる土の地面。キラキラと輝く透明な石たちが、視界の端にチラチラ写る。
あれからどれくらい歩いただろうか。
リレイヌは空を見上げて息をこぼした。
なぜか白くなるそれに目を瞬いてからシアナを見れば、彼女は少女を振り返り、にこりと美しく微笑んでいた。
「少し休む?」
「ううん。大丈夫」
「そう。なら、もう少しだけ歩こっか」
「あと少しよ」と告げるシアナに頷き、足を動かす。
空は既に暗くなってしまっていた。
散りばめたような星たちがキラキラと輝くのを頭上、足下に注意しながら前へ前へ。そうして足を止めた先、そこに存在していたのは、一つの滝。巨大なそれは上から下へと真っ直ぐに落下し、細かな水飛沫をあげている。
「着いた。ココよ」
シアナは言った。
リレイヌはそっとシアナへと目を向ける。
そんな愛しき娘に笑みをひとつ。シアナは彼女の手を引き、ゆっくりとした足取りで滝に向かって歩いていく。
あと少しでそれに打たれるか打たれないかというところでギュッと目を瞑ったリレイヌ。だが、いつまで経ってもやって来ぬ重みと痛みに疑問を抱いて目を開ける。
ふわり。
優しい風が、頬を撫でた。
目を開けた視線の先、真っ白な石造りの建築物が建っている。
その間、ところどころに通わされた水が美しい透明度を保っていた。水の中を覗き込めば、そこには沈んだ街があり、それを背景に小さな白い魚が楽しそうに泳いでいる。
空を見上げれば巨大なマンタ。海を泳ぐように優雅に空を漂っているその周りには、やはり白い小魚たちが付き添うように泳いでいる。
「わ、ぁ……」
感動と動揺で声が漏れた。可愛らしいそれにクスリと笑う母親は、前方、少し遠い位置にある巨大なクリスタル状の大木を見て目を細める。
「ココはね、『龍の墓場』と呼ばれる神域なの」
「龍の墓場……?」
「そう。私たち一族が死に、そして眠る場所よ」
「ココならヒトはやって来ない」と、そう告げたシアナはリレイヌの手を握ったまま大木の方へ。慣れたように白い道を歩く彼女を、リレイヌは慌てながらも追いかける。
キラキラ キラキラ
小さななにかが舞っていた。
光り輝くそれに目を奪われながら前を見れば、近づいてきた大木の下に3つの石碑を発見する。
石碑にはそれぞれ、「二代目セラフィーユ」、「三代目セラフィーユ」、「アガラ・セラフィーユ」、と刻まれていた。
「……ただいま、母さん」
「アガラ・セラフィーユ」の石碑の前、シアナは小さくそう告げた。寂しそうに石碑を撫でる彼女をぼんやりと見やり、リレイヌもその前へ。透明なソレに、ぺこりと頭を下げてみせる。
「……今日はひとまず休みましょう。特訓は明日から。それでいいわね?」
問われたそれにこくりと頷く。シアナはそんなリレイヌににこりと笑い、もう一度、石碑を静かに撫でていた。
0
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる