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第六章 研究施設
80.勝てない相手
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「リレイヌ……?」
朝、起きてみたらベッド上に彼女の姿がなかった。
いつもならすやすやと眠っているか、起きてぼうっとしているかのどちらかなのに……、と思いながらリックはひとり部屋を出る。そうして静かな廊下を進む彼は、少し歩いたところで曲がり角に彼女の姿を見つけた。どこか気落ちしたような暗い表情の彼女の隣には、睦月の姿も存在する。
そういえばアイツも居なかったなと、そう思いながら2人に近づこうとしたリックは、そこでそっと足を止めた。理由は明白。リレイヌがポロリと涙を零したからだ。
ギョッとするリックの視線の先、リレイヌはボロボロと涙を流しながらその場にしゃがみ込んだ。そうしてえぐえぐと嘆く彼女を、同じくしゃがみ込んだ睦月がそっと宥める。
「別に、お前は悪くないだろ」
告げる睦月に、リレイヌは首を横に振る。
「最低だ。こんなんじゃ化け物だ」
「そんなことない。お前は化け物でもなんでもない」
「睦月は知らない。知らないからそう言えるんだ。私が、あ、あんな、おぞましいことしてるの知らないからっ」
「……知ってるよ。少なくとも俺は」
「じゃあなんでそんな冷静に……っ」
「……お前が龍神だからだ」
びくり、と肩を跳ねさせたリレイヌ。そんな彼女に、睦月は努めて静かに声を発す。
「龍神は人を喰う。そうして己を保つんだ。これは必要なことで、仕方がないこと。お前がお前でいるために、必要なことなんだ」
「で、でも……っ」
「わかれ、リレイヌ。これは必要なことだ」
ショックを受けたことがわかる表情のリレイヌに、「それに!」と睦月は明るく言った。ポスポスとその小さな肩を叩く彼は、ひどく優しく言葉を紡ぐ。
「人間だって、俺らだって家畜食べてんだ。命を平等にいただいてることは、俺らもお前も変わんねーよ」
「……でも……」
「あーもう! ウジウジすんな! お前がそんなだと、その、どうすればいいかわかんなくなるだろ!」
「……」
「……嫌かもしんないけど、必要なことは必要なこととして受け入れろ。お前も化け物なんかになりたくないだろ?」
こくり、と頷くリレイヌに、「よし!」と笑う睦月。ガシガシと彼女の頭を撫でやった彼は、「ほら立て!」としゃがみ込む彼女を立たせる。
「飯食い行こうぜ! 最近のお前は意識朦朧としてたからわかんねーかもだけど、案外ここの飯美味いんだ! なんでも機械にやらせてるとか言ってたか?」
「機械に? それホントに美味しいの?」
「少なくともお前の母ちゃんよりはマシなの作るぜ」
「母様の料理は独創的なだけ」
「独創的で人死んだら訳ないよな」
なはは!、と響く声に、リレイヌの顔にようやっと綻びができる。どこか安堵したような彼女の様子にそっと息を吐いた睦月はそのまま彼女を引き連れ食堂へ。リックはそんな2人の背中を目で追いかけながら、静かにその場で踵を返す。
「……勝てない」
嫌な程に、自覚した。
朝、起きてみたらベッド上に彼女の姿がなかった。
いつもならすやすやと眠っているか、起きてぼうっとしているかのどちらかなのに……、と思いながらリックはひとり部屋を出る。そうして静かな廊下を進む彼は、少し歩いたところで曲がり角に彼女の姿を見つけた。どこか気落ちしたような暗い表情の彼女の隣には、睦月の姿も存在する。
そういえばアイツも居なかったなと、そう思いながら2人に近づこうとしたリックは、そこでそっと足を止めた。理由は明白。リレイヌがポロリと涙を零したからだ。
ギョッとするリックの視線の先、リレイヌはボロボロと涙を流しながらその場にしゃがみ込んだ。そうしてえぐえぐと嘆く彼女を、同じくしゃがみ込んだ睦月がそっと宥める。
「別に、お前は悪くないだろ」
告げる睦月に、リレイヌは首を横に振る。
「最低だ。こんなんじゃ化け物だ」
「そんなことない。お前は化け物でもなんでもない」
「睦月は知らない。知らないからそう言えるんだ。私が、あ、あんな、おぞましいことしてるの知らないからっ」
「……知ってるよ。少なくとも俺は」
「じゃあなんでそんな冷静に……っ」
「……お前が龍神だからだ」
びくり、と肩を跳ねさせたリレイヌ。そんな彼女に、睦月は努めて静かに声を発す。
「龍神は人を喰う。そうして己を保つんだ。これは必要なことで、仕方がないこと。お前がお前でいるために、必要なことなんだ」
「で、でも……っ」
「わかれ、リレイヌ。これは必要なことだ」
ショックを受けたことがわかる表情のリレイヌに、「それに!」と睦月は明るく言った。ポスポスとその小さな肩を叩く彼は、ひどく優しく言葉を紡ぐ。
「人間だって、俺らだって家畜食べてんだ。命を平等にいただいてることは、俺らもお前も変わんねーよ」
「……でも……」
「あーもう! ウジウジすんな! お前がそんなだと、その、どうすればいいかわかんなくなるだろ!」
「……」
「……嫌かもしんないけど、必要なことは必要なこととして受け入れろ。お前も化け物なんかになりたくないだろ?」
こくり、と頷くリレイヌに、「よし!」と笑う睦月。ガシガシと彼女の頭を撫でやった彼は、「ほら立て!」としゃがみ込む彼女を立たせる。
「飯食い行こうぜ! 最近のお前は意識朦朧としてたからわかんねーかもだけど、案外ここの飯美味いんだ! なんでも機械にやらせてるとか言ってたか?」
「機械に? それホントに美味しいの?」
「少なくともお前の母ちゃんよりはマシなの作るぜ」
「母様の料理は独創的なだけ」
「独創的で人死んだら訳ないよな」
なはは!、と響く声に、リレイヌの顔にようやっと綻びができる。どこか安堵したような彼女の様子にそっと息を吐いた睦月はそのまま彼女を引き連れ食堂へ。リックはそんな2人の背中を目で追いかけながら、静かにその場で踵を返す。
「……勝てない」
嫌な程に、自覚した。
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