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重なる記憶の中の彼
クリストフェルとの謁見が終わり、ひとまず少女はデュクスの屋敷で世話になることが決まった。
城内で暮らせばいい、というクリストフェルにデュクスは少女にはまず、人としての生活を学ぶ必要があると提案したのだ。
クリストフェルはその提案を一度は渋ったが、人の出入りが多い城よりデュクスの屋敷の方が特定の人間の出入りしかないから安全だ、という言葉に押し切られた形で了承していた。
皇帝という地位にあっても、すべての人間を制しているわけではない。
クリストフェル自身も、少女を害する者がいる可能性がある、と自ら口にしていた。
様々な立場の人間が一か所に集まると、どうしても人間同士の対立が生まれてくる。
最初は同じ思想の元で集った仲間だったとしても、個人の考えというのは空を流れる雲と一緒で、すぐに形を変え始める。
人間とは、そういう生き物だ。
「邸に戻る前に、私は少し仕事がある。その間、少し待ってもらうことになるのだが……」
城の廊下の窓から射し込む太陽光に照らされてキラキラと光る黄金色の髪をじっと見つめていたとき、デュクスが少女を振り返った。
ふわりと髪が揺れ、綺麗な青い瞳にかかる。
その前髪を煩わしそうに大きくしなやかな指でかきあげる仕草に、少女は思わず見惚れていた。
「レディ? どうかしたか?」
頭一つ分高い位置にある彼が、不思議そうに首を傾げた。その表情が、記憶の中にいる青年のものと重なる。
『どうかしたのか? 悲しそうな顔をしている……』
デュクスの今の表情は、あの青年に向けた己の恋心に気づいてしまったときの表情に似ていた。
人とは違う理で生きている少女にとって、誰かに心を寄せることは自殺行為に近い。
たまにやってくる青年を待ち焦がれ、そしてやっと来てくれた時に、その双眸で見つめてもらえることが嬉しいと感じるようになり、その感情の名前に気づいたとき、少女は悲しくなった。
あの青年は魔力を持たない普通の人間だった。
地下牢に閉じ込められている身では、たとえ彼と同じ時を生きていたとしても実らない恋だっただろうが、少女はそれ以上に、いつか彼を見送らないといけないのだということが、たまらず悲しかった。
恋など、叶わなくても良い。
そもそも想いを告げる勇気もなかった。
どんなに愛していたとしても、その想いを返してもらえないことを、知っていたから――。
「――いえ、何でもないわ」
デュクスの姿を見ていると、やはり彼を思い出す。あの時の淡く切ない感情まで、呼び起される。
よくよく思い出してみれば、背丈も体格もよく似ていた。
違うのは身に着けている制服だけだろうか。
「何か、不安なことでもあるのか?」
そっと、端正な顔が近づいてくる。
息がかかりそうなその距離に、少女は僅かに口を開きかけ、だがすぐに引き結んだ。
「――千年も寝ていたから、まだ寝ぼけているみたいね」
自嘲気味に笑い、ふと顔を背ける。
「それで、何の話だったかしら?」
視線を合わせないまま、彼に尋ねる。
するとデュクスは何を思ったのか、少しだけ眉間に皺を寄せると、わずかに口を開くが、不意に遠くから聞こえてくる甲高い声に意識は移っていた。
「デュクス様っ!」
長いストロベリーブロンドの髪を揺らしてひとりの少女がこちらに向かって走ってくる。オレンジ色の可愛らしいドレスを纏う彼女は、漆黒の少女の横を走り抜け、そのままの勢いでデュクスの胸に飛び込む。
「メアリー。どうしてここに?」
メアリーと呼ばれた少女を、デュクスは広い腕でしっかりと抱きしめている。
「もう! どうして私に一番に会いに来てくださらないんですか? ずっと、あなたのお帰りをお待ちしておりましたのに」
「あぁ……」
「ずっとずっと、不安で夜も眠れませんでした……っ」
大きな緑色の瞳から、ポロポロと涙が零れ落ちている。それをデュクスは優しく指の腹で拭った。
「すまない。心配をかけたな」
デュクスの声音が、わずかに甘い響きになった。
気難しそうな目元も、若干緩んでいる。
急に蚊帳の外に出され、少女はどこか遠くにいる"青年と少女"を眺めていた。
(……そっか……)
スーッと、胸の奥に冷たい空気が流れた。
それは次第に痛みとなり、漆黒の少女は瞼を閉じ、その痛みをやり過ごした。
「そちらのご令嬢はどなたですか?」
まだ目尻に涙を溜めたまま、メアリーのエメラルドのような瞳が漆黒の少女へと向けられる。
「あぁ……彼女は……」
「黒髪に黒曜石の瞳……」
デュクスが答える前に、メアリーは漆黒の少女を驚愕の表情で見つめ固まってしまった。
「闇の……魔女……?」
キラキラと光る宝石のような瞳が、徐々に見開かれていく。
その瞳は、明らかな恐怖に染まっていた。
そう、この目だ。
本来、漆黒の少女に向けられる眼差しは、恐怖に慄きこの世の終わりに絶望するのだ。
その眼差しを向けられる度、自分が『闇の魔女』なのだと自覚する。
「……私、お時間まで庭園を見て参ります。それでは」
メアリーのその瞳の色をみて内心安心してしまった自分自身に微苦笑を零し、漆黒の少女はくるりと踵を返し、歩き出す。
背中越しにデュクスが引き留める声がしたけれど、聞こえないフリをしてその場から立ち去った。
記憶の中のあの青年は、たまに婚約者の話をしてくれた。
感情の起伏が読み取りにくいが、とても照れ屋な女性なのだと、彼は言っていた。
その女性のことが本当に好きなのだと、言われなくてもわかったし、彼がこの先、その女性と幸せに添い遂げることを心から祝福した。
失恋の痛みより、いつもは吊り上がった彼の目元が、その女性の話をするときだけ優しく緩む。その表情を見られることが幸せだった。
愛しい者を見る目で、あの青年が少女に微笑みかけてくる瞬間。その瞳が自分を映していなくても、その眼差しを向けてもらえることが、長すぎる生を無意味に生きてきた少女に幸福を齎してくれたからだ。
「…………」
何を見るでもなく、漆黒の少女はひとり、庭園をゆっくりと歩いている。
皇帝の庭園はとても立派で広大だ。隅々まで手入れされた数多の植物の他、噴水や薔薇のアーチ、様々な像が建てられていたが、その何一つ、少女の気を紛らわせてはくれなかった。
「私、こういうものを愛でる心もないのね……」
綺麗、だとか、素敵だ、という感情が一切沸かない。
色とりどりバランスよく咲き誇る花々も、少女の瞳にはすべて灰色に見えた。
そういえば、この国に入ったときも、緑豊かな国だと知っても、それ以上何も感じなかった。
人は緑を愛でるモノだという。
花が咲き誇れば綺麗だと笑い、甘い蜜の香りに心をときめかせる――と。
「空っぽね……」
闇を司るせいなのか、何かに感動する、という経験は未だ皆無だ。
ずっと地下牢にいたせいもあるかもしれないが、外に出てみても何も感じない。
ただずっと、記憶の中のあの青年のことばかりを考えている。
「本当に、空っぽ……」
もういない人を他人に重ねて、その人と恋人との逢瀬を見て胸が苦しくなるなんて、何て愚かなのだろう。
デュクスは彼ではない。
何度も何度も、自分に言い聞かせているのに、あまりにも似すぎているから、気を抜くとあの青年と重ねてしまう。
「闇の魔女が、聞いて呆れる……」
世界をも滅ぼすだけの魔力を持ちながら、その中身はただの恋する乙女だなんて、そんなの笑い話でしかない。
「――いっそ、国の一つでも滅ぼしてみるかな……」
規模などどうでもいいから、手始めに城壁のずっと奥に聳える山の一つでも吹き飛ばしてみようか。
すっと目についた山に向かって手を伸ばす。
バチッ、と黒い稲妻が弾け、標的にした山の上に暗雲が立ち込め始める。
この手を握れば、あの山は一瞬にして消滅する。
山を覆いつくそうとする黒い闇を無感情に見つめた後、そっとその手を降ろした。すると、黒い闇は霧散し、山の上に渦巻いていた暗雲も姿を消していく。
「――バカバカしい」
何かを滅ぼすことなんて、本当に一瞬でできる。
だが己の感情のままそれをすることに何の意味があるだろう。
何かを滅ぼしても、何も変わりはしない。
生まれた瞬間から、自分がすること、できることを実行したとしても変化などないことを知っていた。
自分を殺そうとした父を逆に殺しても、結果的に赤子は当時の王の元へ連れて行かれただろうし、腕を斬り落としてきた王を殺しても地下牢に放り込まれただろう。その地下牢から本気で逃げ出したとしても、また別の牢に入れられるだけ。
そして誰かに恋をしても、また実らず終わるだけだ。仮に実ったとしても、結局は置いて逝かれてしまう。
想いが通じていてもそうではなくても、結局別れの時は訪れる。
「全部、意味なんかないのに……」
下手にこの身体が人間だから、あの青年に出会ってしまったから、叶わない恋なんかしてしまったから、意味のない感情に捕らわれてしまっている。
「このままじゃ、ダメだ……」
もうあの青年はいない。
どんなにそっくりな人間がいたとしても、彼ではない。
いい加減、その事実を受け止めるべきだ。
そして、諦めなければならない。
闇の中に、すべてを溶かしてしまわなければ――、そうしなければいけない。
「さもなければ、今度こそ……」
庭園でぼんやりしていた漆黒の少女をデュクスの屋敷に招いたのは、その家主ではなかった。
初老の老紳士、と言った風情の男は、城下街の外れにある物静かな森の奥に聳える邸を前に言った。
「ようこそお越し下さいました。お嬢様を歓迎いたします」
好々爺と微笑む老人に、少女は軽く会釈をしながらも、灰色の瞳の奥の色をうかがっていた。
「お嬢様にお名前がないことは存じ上げております。先に名を名乗る無礼をお許しください。私はロドリゲスと申します。ロドリーとお呼びくださいませ」
ロドリゲスは、そう言いながらも少女を部屋へと案内してくれる。
邸の中は落ち着いた雰囲気で、華美な装飾はなく、必要なものが必要最低限に配置されていた。
そしてロドリゲスはこの屋敷の管理を任されているのだという。
「旦那様はとてもお忙しい方で、あまりこちらにはお立ち寄りにはならないのですが、困ったことがあればわたくしめにお申し付けください」
「…………」
ひとり話し続ける老人に、少女は黙ってうなずく。
廊下を歩いている途中、この屋敷には年若い者はおらず、いたとしても初老の兵士や、腰が曲がった老侍女ばかりだった。
彼等の瞳には、恐怖の色はない。
見た目だけ少女である闇の魔女を目の当たりにして悲鳴を上げもしない。
屋敷に居るすべての者が、少女を見ても恐れることなく、優しい眼差しを向けて話しかけてきた。
「お気づきでしょうが、この屋敷には私のような老いぼればかりでございます。年寄り臭さはご容赦くださいませ」
目尻を下げて申し訳なさそうにそう言ったロドリゲスに、少女は小さく笑い、初めて口を開いた。
「私の見た目に騙されないでください。私はあなたたちより、はるかに年寄りよ? 『坊や』」
ロドリゲスを『坊や』と呼ぶと、老人はしばし眼を瞬かせた。
少女にとって人間の老人は、ようやく幼児を卒業する子供も同然だ。
このくらいの歳になって、やっとまともに会話ができる。そのくらいの認識でしかなかった。
「そのように呼ばれるのは照れ臭いものですね。亡き母を思い出します」
「なら私のことを『ママ』と呼んでくださっても構わないわよ」
するとロドリゲスはクスクスと声を立てて上品にほほ笑む。
「ありがとうございます」
ロドリゲスの瞳には、どこか懐かしさが滲み出ていた。
「とても光栄なことでございますが、やはりお嬢様、と呼ばせてください」
「――好きにすればいいわ」
本当に『ママ』と呼ばれたかったわけではない。軽い冗談のつもりで言っただけだ。それをちゃんと「冗談」として流せるようになるには、やはりこれくらいの年齢にならなければ難しいだろう。
どうでもいい会話をしながら、少女はある一室へと案内された。
部屋の中に案内されると、そこは若い女性が好きそうな淡い桃色を基調とした装飾がなされており、他の部屋と違って無駄に物が多い印象を受けた。
五人くらい座れるであろう革張りのソファには花柄のクッションが多く置かれ、広めのローテーブルがその前にあり、壁際の白い衣装棚の中にはたくさんの色とりどりのドレスが用意されている。化粧台の鏡は無駄に大きく、ネックレスやイヤリング、指輪などの宝石類がその引き出しの中に納まっていた。
そしてこの部屋の中で一番目立つ寝台は天蓋付きで、目隠しの淡い桃色のカーテンには白いフリルやレースがふんだんにあしらわれており、枕元にはクマやウサギのぬいぐるみが置かれていた。
「…………」
絶句した少女の様子に、ロドリゲスは皺まみれの顔に更に皺を作り、「お気に召しませんか?」と尋ねてくる。
「――可愛らしいお部屋ね」
やっと言葉を絞り出すと、ロドリゲスは僅かに頭を下げた。
「申し訳ございません。お嬢様のお気に召すよう用意させていただいたのでございますが、問題があればすぐにご希望通りに模様替えをさせていただきます」
「結構よ。あなたたち、魔力持ちではないでしょう」
魔力が多少なりともあれば、模様替えなどそう時間はかからないだろう。しかしこの屋敷にいる使用人たちは皆、魔力を持たない普通の人間だった。
足腰が弱りつつある老体だ。それに鞭打たせるのも忍びない。
それに少女は、この部屋を使うつもりは一切なかった。
部屋など、必要ないのだ。
ただ人と暮らす中で、定位置が必要なのは知っている。
綺麗な木の下には死体が埋まっているものだし、墓場には行き場を失った魂が彷徨っているものだ。
実際にそこにいなくとも、特定の場所には特定の何かがある。
そういう認識で人間たちも自分たちの部屋を持っているのだと解釈している少女は、これからがここが自分の定位置なのだと、半ば無理矢理納得した。
「それではお嬢様。何かありましたらこのベルでお呼びください」
ロドリゲスはローテーブルの上に置かれたベルを指しそう言い残すと、部屋を出て行った。
パタン、と扉が閉じ、少女はふぅ、と息を吐く。
改めて部屋の中を見回し、今度は大きく溜息を吐いたのだった。
夜の帳が落ちた頃、一台の馬車が屋敷の前に着いた。その中から出てきたのは、この屋敷の家主だ。
使用人たちは主を出迎え、その様子を部屋の大きな窓から少女は見下ろしていた。
「…………」
月明りの下でも、デュクスの鮮やかな金髪は目立つ。
本心ではずっと見つめていたかったのだが、少女は意図的にその視線を剥がし、カーテンを閉めてソファに腰かけた。
部屋の天井には魔力で点く照明具が設置されていたが、少女はあえてそれを使っていない。月明りで照らされる薄暗い部屋の中、ひんやりと冷たい革張りのソファの上で足を抱え、ぼんやりと宙を見つめる。
耳を澄ませると、玄関の開閉音や主が帰ってきたことで使用人たちの足音が多く聞こえてくる。
音のない静寂の闇の中に引き籠っていた千年間が、どこか遠く感じた。
外に世界に出てまだ一日しか経っていないのに、今まで生きてきた千年以上の歳月より時間の密度が高い気がする。
「あの頃みたい……」
記憶の中の青年が地下牢に訪れるようになったとき、時の流れが長く感じた。いつもは瞬きの間に過ぎていく時が、彼と出会ったことで動きを鈍くし、一日が、一分一秒がことさら長く感じたのだ。
『普通は嫌なことがあると時間が長く感じるものなんだがな』
不意に、また記憶の中の青年の言葉を思い出した。
今と似た感覚に陥ったことを何の気なしに彼に言ったことがある。
『あなたとお喋りするのは楽しくて、待ち遠しくなるのよ』
『それは嬉しいな』
『あら、優しいのね』
まだ出会ってそう時間が経っていない頃の会話だ。
目的は聞かなかったが、あの青年は度々少女のいる地下牢へとやってきた。誰かの命令で様子を見に来ていたにしても、彼は今まで地下牢に訪れる者たちより多くの時間を少女に割いてくれた。
『いつもひとりで何をしているんだ?』
『何も? 昔は魔力を使って色々遊んでいたけど、もう飽きてしまったの』
『ひとりでつまらなくはないのか?』
『つまらない……、そうねぇ……』
その感覚はもはや失われていることを言うと、あの青年は眉根を寄せて口を引き結んでしまった。
『私は闇の魔女でしょう? ここにいることが普通で、闇の中に溶け込んでいることが、私だから』
闇を少女は恐れてはいなかった。
闇とは少女を現す言葉だ。
その言葉のまま光のない世界にいることが、その言葉を具現することが、本来の少女の役割なのだと理解していた。
『では、このランタンの明かりの中で私と話しているキミは、本来のキミではない、ということか?』
『どうかしら。あなたは騎士なのでしょう? でもずっと騎士だった? 子供の頃も、騎士だった?』
『…………』
『いつだって、あなたはあなたでしょう?』
『――それとは少し違う次元の話をしている』
『まぁそうね。あなたにとって、私は人知を超えた存在でしょうし』
普通の人間の感覚と比べること自体が間違っていた。だが青年の問いに正確に答えることも難しくて、彼が何を聞きたいのかも、よくわからなかった。
『でも――そうね……。私はあなたたちから恐れられる存在で、気まぐれで天変地異を起こして世界を滅ぼすものだから……。本来、こうして明かりの中で誰かと楽しくお喋りをする私は、闇の魔女ではない、と言えなくもないのかしら』
『キミは、闇の魔女以外の名を持つべきじゃないか?』
『必要ないわよ、だって……』
城内で暮らせばいい、というクリストフェルにデュクスは少女にはまず、人としての生活を学ぶ必要があると提案したのだ。
クリストフェルはその提案を一度は渋ったが、人の出入りが多い城よりデュクスの屋敷の方が特定の人間の出入りしかないから安全だ、という言葉に押し切られた形で了承していた。
皇帝という地位にあっても、すべての人間を制しているわけではない。
クリストフェル自身も、少女を害する者がいる可能性がある、と自ら口にしていた。
様々な立場の人間が一か所に集まると、どうしても人間同士の対立が生まれてくる。
最初は同じ思想の元で集った仲間だったとしても、個人の考えというのは空を流れる雲と一緒で、すぐに形を変え始める。
人間とは、そういう生き物だ。
「邸に戻る前に、私は少し仕事がある。その間、少し待ってもらうことになるのだが……」
城の廊下の窓から射し込む太陽光に照らされてキラキラと光る黄金色の髪をじっと見つめていたとき、デュクスが少女を振り返った。
ふわりと髪が揺れ、綺麗な青い瞳にかかる。
その前髪を煩わしそうに大きくしなやかな指でかきあげる仕草に、少女は思わず見惚れていた。
「レディ? どうかしたか?」
頭一つ分高い位置にある彼が、不思議そうに首を傾げた。その表情が、記憶の中にいる青年のものと重なる。
『どうかしたのか? 悲しそうな顔をしている……』
デュクスの今の表情は、あの青年に向けた己の恋心に気づいてしまったときの表情に似ていた。
人とは違う理で生きている少女にとって、誰かに心を寄せることは自殺行為に近い。
たまにやってくる青年を待ち焦がれ、そしてやっと来てくれた時に、その双眸で見つめてもらえることが嬉しいと感じるようになり、その感情の名前に気づいたとき、少女は悲しくなった。
あの青年は魔力を持たない普通の人間だった。
地下牢に閉じ込められている身では、たとえ彼と同じ時を生きていたとしても実らない恋だっただろうが、少女はそれ以上に、いつか彼を見送らないといけないのだということが、たまらず悲しかった。
恋など、叶わなくても良い。
そもそも想いを告げる勇気もなかった。
どんなに愛していたとしても、その想いを返してもらえないことを、知っていたから――。
「――いえ、何でもないわ」
デュクスの姿を見ていると、やはり彼を思い出す。あの時の淡く切ない感情まで、呼び起される。
よくよく思い出してみれば、背丈も体格もよく似ていた。
違うのは身に着けている制服だけだろうか。
「何か、不安なことでもあるのか?」
そっと、端正な顔が近づいてくる。
息がかかりそうなその距離に、少女は僅かに口を開きかけ、だがすぐに引き結んだ。
「――千年も寝ていたから、まだ寝ぼけているみたいね」
自嘲気味に笑い、ふと顔を背ける。
「それで、何の話だったかしら?」
視線を合わせないまま、彼に尋ねる。
するとデュクスは何を思ったのか、少しだけ眉間に皺を寄せると、わずかに口を開くが、不意に遠くから聞こえてくる甲高い声に意識は移っていた。
「デュクス様っ!」
長いストロベリーブロンドの髪を揺らしてひとりの少女がこちらに向かって走ってくる。オレンジ色の可愛らしいドレスを纏う彼女は、漆黒の少女の横を走り抜け、そのままの勢いでデュクスの胸に飛び込む。
「メアリー。どうしてここに?」
メアリーと呼ばれた少女を、デュクスは広い腕でしっかりと抱きしめている。
「もう! どうして私に一番に会いに来てくださらないんですか? ずっと、あなたのお帰りをお待ちしておりましたのに」
「あぁ……」
「ずっとずっと、不安で夜も眠れませんでした……っ」
大きな緑色の瞳から、ポロポロと涙が零れ落ちている。それをデュクスは優しく指の腹で拭った。
「すまない。心配をかけたな」
デュクスの声音が、わずかに甘い響きになった。
気難しそうな目元も、若干緩んでいる。
急に蚊帳の外に出され、少女はどこか遠くにいる"青年と少女"を眺めていた。
(……そっか……)
スーッと、胸の奥に冷たい空気が流れた。
それは次第に痛みとなり、漆黒の少女は瞼を閉じ、その痛みをやり過ごした。
「そちらのご令嬢はどなたですか?」
まだ目尻に涙を溜めたまま、メアリーのエメラルドのような瞳が漆黒の少女へと向けられる。
「あぁ……彼女は……」
「黒髪に黒曜石の瞳……」
デュクスが答える前に、メアリーは漆黒の少女を驚愕の表情で見つめ固まってしまった。
「闇の……魔女……?」
キラキラと光る宝石のような瞳が、徐々に見開かれていく。
その瞳は、明らかな恐怖に染まっていた。
そう、この目だ。
本来、漆黒の少女に向けられる眼差しは、恐怖に慄きこの世の終わりに絶望するのだ。
その眼差しを向けられる度、自分が『闇の魔女』なのだと自覚する。
「……私、お時間まで庭園を見て参ります。それでは」
メアリーのその瞳の色をみて内心安心してしまった自分自身に微苦笑を零し、漆黒の少女はくるりと踵を返し、歩き出す。
背中越しにデュクスが引き留める声がしたけれど、聞こえないフリをしてその場から立ち去った。
記憶の中のあの青年は、たまに婚約者の話をしてくれた。
感情の起伏が読み取りにくいが、とても照れ屋な女性なのだと、彼は言っていた。
その女性のことが本当に好きなのだと、言われなくてもわかったし、彼がこの先、その女性と幸せに添い遂げることを心から祝福した。
失恋の痛みより、いつもは吊り上がった彼の目元が、その女性の話をするときだけ優しく緩む。その表情を見られることが幸せだった。
愛しい者を見る目で、あの青年が少女に微笑みかけてくる瞬間。その瞳が自分を映していなくても、その眼差しを向けてもらえることが、長すぎる生を無意味に生きてきた少女に幸福を齎してくれたからだ。
「…………」
何を見るでもなく、漆黒の少女はひとり、庭園をゆっくりと歩いている。
皇帝の庭園はとても立派で広大だ。隅々まで手入れされた数多の植物の他、噴水や薔薇のアーチ、様々な像が建てられていたが、その何一つ、少女の気を紛らわせてはくれなかった。
「私、こういうものを愛でる心もないのね……」
綺麗、だとか、素敵だ、という感情が一切沸かない。
色とりどりバランスよく咲き誇る花々も、少女の瞳にはすべて灰色に見えた。
そういえば、この国に入ったときも、緑豊かな国だと知っても、それ以上何も感じなかった。
人は緑を愛でるモノだという。
花が咲き誇れば綺麗だと笑い、甘い蜜の香りに心をときめかせる――と。
「空っぽね……」
闇を司るせいなのか、何かに感動する、という経験は未だ皆無だ。
ずっと地下牢にいたせいもあるかもしれないが、外に出てみても何も感じない。
ただずっと、記憶の中のあの青年のことばかりを考えている。
「本当に、空っぽ……」
もういない人を他人に重ねて、その人と恋人との逢瀬を見て胸が苦しくなるなんて、何て愚かなのだろう。
デュクスは彼ではない。
何度も何度も、自分に言い聞かせているのに、あまりにも似すぎているから、気を抜くとあの青年と重ねてしまう。
「闇の魔女が、聞いて呆れる……」
世界をも滅ぼすだけの魔力を持ちながら、その中身はただの恋する乙女だなんて、そんなの笑い話でしかない。
「――いっそ、国の一つでも滅ぼしてみるかな……」
規模などどうでもいいから、手始めに城壁のずっと奥に聳える山の一つでも吹き飛ばしてみようか。
すっと目についた山に向かって手を伸ばす。
バチッ、と黒い稲妻が弾け、標的にした山の上に暗雲が立ち込め始める。
この手を握れば、あの山は一瞬にして消滅する。
山を覆いつくそうとする黒い闇を無感情に見つめた後、そっとその手を降ろした。すると、黒い闇は霧散し、山の上に渦巻いていた暗雲も姿を消していく。
「――バカバカしい」
何かを滅ぼすことなんて、本当に一瞬でできる。
だが己の感情のままそれをすることに何の意味があるだろう。
何かを滅ぼしても、何も変わりはしない。
生まれた瞬間から、自分がすること、できることを実行したとしても変化などないことを知っていた。
自分を殺そうとした父を逆に殺しても、結果的に赤子は当時の王の元へ連れて行かれただろうし、腕を斬り落としてきた王を殺しても地下牢に放り込まれただろう。その地下牢から本気で逃げ出したとしても、また別の牢に入れられるだけ。
そして誰かに恋をしても、また実らず終わるだけだ。仮に実ったとしても、結局は置いて逝かれてしまう。
想いが通じていてもそうではなくても、結局別れの時は訪れる。
「全部、意味なんかないのに……」
下手にこの身体が人間だから、あの青年に出会ってしまったから、叶わない恋なんかしてしまったから、意味のない感情に捕らわれてしまっている。
「このままじゃ、ダメだ……」
もうあの青年はいない。
どんなにそっくりな人間がいたとしても、彼ではない。
いい加減、その事実を受け止めるべきだ。
そして、諦めなければならない。
闇の中に、すべてを溶かしてしまわなければ――、そうしなければいけない。
「さもなければ、今度こそ……」
庭園でぼんやりしていた漆黒の少女をデュクスの屋敷に招いたのは、その家主ではなかった。
初老の老紳士、と言った風情の男は、城下街の外れにある物静かな森の奥に聳える邸を前に言った。
「ようこそお越し下さいました。お嬢様を歓迎いたします」
好々爺と微笑む老人に、少女は軽く会釈をしながらも、灰色の瞳の奥の色をうかがっていた。
「お嬢様にお名前がないことは存じ上げております。先に名を名乗る無礼をお許しください。私はロドリゲスと申します。ロドリーとお呼びくださいませ」
ロドリゲスは、そう言いながらも少女を部屋へと案内してくれる。
邸の中は落ち着いた雰囲気で、華美な装飾はなく、必要なものが必要最低限に配置されていた。
そしてロドリゲスはこの屋敷の管理を任されているのだという。
「旦那様はとてもお忙しい方で、あまりこちらにはお立ち寄りにはならないのですが、困ったことがあればわたくしめにお申し付けください」
「…………」
ひとり話し続ける老人に、少女は黙ってうなずく。
廊下を歩いている途中、この屋敷には年若い者はおらず、いたとしても初老の兵士や、腰が曲がった老侍女ばかりだった。
彼等の瞳には、恐怖の色はない。
見た目だけ少女である闇の魔女を目の当たりにして悲鳴を上げもしない。
屋敷に居るすべての者が、少女を見ても恐れることなく、優しい眼差しを向けて話しかけてきた。
「お気づきでしょうが、この屋敷には私のような老いぼればかりでございます。年寄り臭さはご容赦くださいませ」
目尻を下げて申し訳なさそうにそう言ったロドリゲスに、少女は小さく笑い、初めて口を開いた。
「私の見た目に騙されないでください。私はあなたたちより、はるかに年寄りよ? 『坊や』」
ロドリゲスを『坊や』と呼ぶと、老人はしばし眼を瞬かせた。
少女にとって人間の老人は、ようやく幼児を卒業する子供も同然だ。
このくらいの歳になって、やっとまともに会話ができる。そのくらいの認識でしかなかった。
「そのように呼ばれるのは照れ臭いものですね。亡き母を思い出します」
「なら私のことを『ママ』と呼んでくださっても構わないわよ」
するとロドリゲスはクスクスと声を立てて上品にほほ笑む。
「ありがとうございます」
ロドリゲスの瞳には、どこか懐かしさが滲み出ていた。
「とても光栄なことでございますが、やはりお嬢様、と呼ばせてください」
「――好きにすればいいわ」
本当に『ママ』と呼ばれたかったわけではない。軽い冗談のつもりで言っただけだ。それをちゃんと「冗談」として流せるようになるには、やはりこれくらいの年齢にならなければ難しいだろう。
どうでもいい会話をしながら、少女はある一室へと案内された。
部屋の中に案内されると、そこは若い女性が好きそうな淡い桃色を基調とした装飾がなされており、他の部屋と違って無駄に物が多い印象を受けた。
五人くらい座れるであろう革張りのソファには花柄のクッションが多く置かれ、広めのローテーブルがその前にあり、壁際の白い衣装棚の中にはたくさんの色とりどりのドレスが用意されている。化粧台の鏡は無駄に大きく、ネックレスやイヤリング、指輪などの宝石類がその引き出しの中に納まっていた。
そしてこの部屋の中で一番目立つ寝台は天蓋付きで、目隠しの淡い桃色のカーテンには白いフリルやレースがふんだんにあしらわれており、枕元にはクマやウサギのぬいぐるみが置かれていた。
「…………」
絶句した少女の様子に、ロドリゲスは皺まみれの顔に更に皺を作り、「お気に召しませんか?」と尋ねてくる。
「――可愛らしいお部屋ね」
やっと言葉を絞り出すと、ロドリゲスは僅かに頭を下げた。
「申し訳ございません。お嬢様のお気に召すよう用意させていただいたのでございますが、問題があればすぐにご希望通りに模様替えをさせていただきます」
「結構よ。あなたたち、魔力持ちではないでしょう」
魔力が多少なりともあれば、模様替えなどそう時間はかからないだろう。しかしこの屋敷にいる使用人たちは皆、魔力を持たない普通の人間だった。
足腰が弱りつつある老体だ。それに鞭打たせるのも忍びない。
それに少女は、この部屋を使うつもりは一切なかった。
部屋など、必要ないのだ。
ただ人と暮らす中で、定位置が必要なのは知っている。
綺麗な木の下には死体が埋まっているものだし、墓場には行き場を失った魂が彷徨っているものだ。
実際にそこにいなくとも、特定の場所には特定の何かがある。
そういう認識で人間たちも自分たちの部屋を持っているのだと解釈している少女は、これからがここが自分の定位置なのだと、半ば無理矢理納得した。
「それではお嬢様。何かありましたらこのベルでお呼びください」
ロドリゲスはローテーブルの上に置かれたベルを指しそう言い残すと、部屋を出て行った。
パタン、と扉が閉じ、少女はふぅ、と息を吐く。
改めて部屋の中を見回し、今度は大きく溜息を吐いたのだった。
夜の帳が落ちた頃、一台の馬車が屋敷の前に着いた。その中から出てきたのは、この屋敷の家主だ。
使用人たちは主を出迎え、その様子を部屋の大きな窓から少女は見下ろしていた。
「…………」
月明りの下でも、デュクスの鮮やかな金髪は目立つ。
本心ではずっと見つめていたかったのだが、少女は意図的にその視線を剥がし、カーテンを閉めてソファに腰かけた。
部屋の天井には魔力で点く照明具が設置されていたが、少女はあえてそれを使っていない。月明りで照らされる薄暗い部屋の中、ひんやりと冷たい革張りのソファの上で足を抱え、ぼんやりと宙を見つめる。
耳を澄ませると、玄関の開閉音や主が帰ってきたことで使用人たちの足音が多く聞こえてくる。
音のない静寂の闇の中に引き籠っていた千年間が、どこか遠く感じた。
外に世界に出てまだ一日しか経っていないのに、今まで生きてきた千年以上の歳月より時間の密度が高い気がする。
「あの頃みたい……」
記憶の中の青年が地下牢に訪れるようになったとき、時の流れが長く感じた。いつもは瞬きの間に過ぎていく時が、彼と出会ったことで動きを鈍くし、一日が、一分一秒がことさら長く感じたのだ。
『普通は嫌なことがあると時間が長く感じるものなんだがな』
不意に、また記憶の中の青年の言葉を思い出した。
今と似た感覚に陥ったことを何の気なしに彼に言ったことがある。
『あなたとお喋りするのは楽しくて、待ち遠しくなるのよ』
『それは嬉しいな』
『あら、優しいのね』
まだ出会ってそう時間が経っていない頃の会話だ。
目的は聞かなかったが、あの青年は度々少女のいる地下牢へとやってきた。誰かの命令で様子を見に来ていたにしても、彼は今まで地下牢に訪れる者たちより多くの時間を少女に割いてくれた。
『いつもひとりで何をしているんだ?』
『何も? 昔は魔力を使って色々遊んでいたけど、もう飽きてしまったの』
『ひとりでつまらなくはないのか?』
『つまらない……、そうねぇ……』
その感覚はもはや失われていることを言うと、あの青年は眉根を寄せて口を引き結んでしまった。
『私は闇の魔女でしょう? ここにいることが普通で、闇の中に溶け込んでいることが、私だから』
闇を少女は恐れてはいなかった。
闇とは少女を現す言葉だ。
その言葉のまま光のない世界にいることが、その言葉を具現することが、本来の少女の役割なのだと理解していた。
『では、このランタンの明かりの中で私と話しているキミは、本来のキミではない、ということか?』
『どうかしら。あなたは騎士なのでしょう? でもずっと騎士だった? 子供の頃も、騎士だった?』
『…………』
『いつだって、あなたはあなたでしょう?』
『――それとは少し違う次元の話をしている』
『まぁそうね。あなたにとって、私は人知を超えた存在でしょうし』
普通の人間の感覚と比べること自体が間違っていた。だが青年の問いに正確に答えることも難しくて、彼が何を聞きたいのかも、よくわからなかった。
『でも――そうね……。私はあなたたちから恐れられる存在で、気まぐれで天変地異を起こして世界を滅ぼすものだから……。本来、こうして明かりの中で誰かと楽しくお喋りをする私は、闇の魔女ではない、と言えなくもないのかしら』
『キミは、闇の魔女以外の名を持つべきじゃないか?』
『必要ないわよ、だって……』
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