上 下
95 / 784

16.夏とプールと日焼け止め(5)

しおりを挟む
「わぁ、いっぱい日焼け止めが入ってるー」

「プールだけじゃなくて、学校までの道のりとか、休みの日にお出かけする時なんかも日焼けするかなと思ってさ。その時のために、あらかじめ多めに買っておいたんだ」

「じゃあ、明日は学校に行く前に塗っておけばいいの?」

「そうだね。プールの授業がない日は、服で隠せない部分に塗るだけで大丈夫だと思うけど」

「なるほどー」

「俺も自分用に買ってあるから、晩ごはんを食べたら、後で一緒に日焼け止めを塗る練習をしてみよっか」

「うん。練習したーい」

 練習にワクワクしているのか、ミオは目を輝かせながら返事した。

 やる事は単純に日焼け止めの塗り方を予習しておくだけなのだが、子供にとっては、きっとこういう初めての体験も楽しみの一つになるんだろうな。

 というわけで俺たちは、少し遅めの晩ご飯を食べ、洗い物を済ませた後、さっそく日焼け止めを塗る練習を始めた。

 手始めにやったのは、腕と足への塗り方。

 ネットで詳しく調べてみたところ、日焼け止めの塗り方にも部位によって違いがあるらしく、手足には線状に長く付け、優しく伸ばすのがいいそうだ。

 この線状に付けた日焼け止めをストローに見立てて〝ストロー付け〟と呼ぶのだという。

「んー。ひんやりするぅー」

 左腕に日焼け止めを塗ったミオが、その冷感で小刻みに震える。

 クーラーの効いた部屋でやっているから、程よく冷やされた体には、尚更冷たく感じることだろう。

「はは、夏にはこのくらいが丁度いいかもな」

「ねぇお兄ちゃん。日焼け止めって、すごくいい匂いがするんだねー」

 ミオは日焼け止めを塗った腕に鼻を近づけ、すんすんと匂いを嗅いでいる。

「どれどれ?」

 俺もミオと同じように、自分の腕に付けた日焼け止めを顔に近づけ、その匂いを確かめてみた。

「おー、確かにそうだね。ミルクタイプって書いてあるから、牛乳っぽい匂いなのかな? って思ったけど、何だかほのかに花のような香りが……」

「うんうん。お花のいい匂いがするよね」

 俺は生まれてこの方、日焼け止めなんて一度も塗った事がなかったから分からないけど、こういうのは元々香り付きだったのかなぁ?

 たぶん無香料もありはするんだろうが、どうせならいい匂いがするものがいいよな。

 それがセールスポイントの一つになるのかも知れないわけだし。

 特に女の子は日焼け止めが欠かせないから、周りの人へのアピールとか影響なんかを考えて、商品選びをするはずだ。

 そう考えると、いい匂いがする日焼け止めというのは、やっぱり売りの一つになるんだろうな。

「ぬりぬりー」

 ミオは日焼け止めを両手足に付け、楽しそうに伸ばしている。

 ほんのりと花の香りがするショタっ娘か、こりゃますます女の子と間違えられそうだな。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

完結 穀潰しと言われたので家を出ます

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,668pt お気に入り:324

【完結】さよならのかわりに

恋愛 / 完結 24h.ポイント:10,543pt お気に入り:4,460

異世界迷宮のスナイパー《転生弓士》アルファ版

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:113pt お気に入り:584

旦那様は妻の私より幼馴染の方が大切なようです

恋愛 / 完結 24h.ポイント:101,572pt お気に入り:5,389

運命の番を見つけることがわかっている婚約者に尽くした結果

恋愛 / 完結 24h.ポイント:9,274pt お気に入り:258

王子の婚約者を辞めると人生楽になりました!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:8,555pt お気に入り:4,744

私が消えたその後で(完結)

恋愛 / 完結 24h.ポイント:22,578pt お気に入り:2,390

処理中です...