ショタっ娘のいる生活

松剣楼(マッケンロー)

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26.夏のマリンアクティビティ(5)

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「ボート楽しかったねー。自分で好きなように動かすの、すごく面白かったよ」

「そうだね。ああいう屋根なしのペダルボートも、開放感があっていいもんだよな」

 次に乗るグラスボートの発着場へと向かう道すがら、俺たちは、先ほどまで遊んでいたペダルボートの感想を話し合う。

「屋根のあるペダルボートもあるの?」

「あるよ。スワンボートなんかがそうだね」

「スワンボート……」

 また聞いた事のない横文字が出てきたものだから、ミオが首をかしげて考え込む。

「あ、えーと。スワンボートのスワンは、簡単に言うと白鳥なんだよ」

「白鳥って、『みにくいアヒルの子』に出てきたあの鳥?」

「そう、その白鳥だね」

「白鳥ボートって屋根があるの?」

「うん。ボート自体が白鳥の形をしているんだよ。んで屋根がついているから、雨の日でも安心して乗れるんだろうな」

 もっとも、わざわざ雨の日に、強行軍でスワンボートに乗りに来るカップルや家族連れなんて、めったにいないんだろうけど。

 たぶんスワンボートは、見た目と日除け、それから船体の剛性を保つために、あえて屋根を取り付けて一体化させているのだろう。

「じゃあ、今日雨が降ってたら、あのボートには乗れなかったんだね」

「まぁ乗れないだろうな。屋根がないからびしょ濡れにはなるし、もし海が荒れていたら、強い波でボートがひっくり返るかも知れないしね」

「そんなに危ないんだ! 晴れてよかったぁ」

「昨日と今日は、ずっとミオがいい子にしてたから、神様がお天気にしてくれたんだよ、きっと」

「えぇ? そんな事ないよー。ボク、いつもお兄ちゃんに甘えてばっかりだもん」

「甘えてもいいじゃん。ミオ、俺の恋人になりたいんだろ?」

「……うん。お兄ちゃんの彼女になりたいの」

 彼女になりたいって事は、ミオはあくまでも、女の子の立場として恋仲になりたい、という願望があるんだな。

 ミオ本人はショタっ娘だという自覚のない男の子だと思っていたけど、こと恋愛に関しては、持ち前の乙女心でもって、俺の事を好きでいてくれているらしい。

「それなら、これからもいっぱい甘えておいでよ。彼女ならそれくらい普通にやるだろ?」

「そうなの?」

「たぶん」

「えぇー。『たぶん』なんだ?」

「いや、何と言うか、俺の元カノは全然そういう事しない娘だったからさ」

「ねぇ。さっきもお話聞いたけど、お兄ちゃんの元カノの人って、ほんとにお兄ちゃんが好きだったの?」

「う……そう言われると自信がないな」

 あの娘は常にツンケンとしてて、やれあそこに行きたいとか、あれが食べたいとか言って、さんざん振り回されたんだよなぁ。

 その彼女のわがままを、嫌な顔ひとつせずに、我慢して聞いてた俺も俺なんだけど。
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