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30.さらば、リゾートホテル(6)

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「あの。柚月さんと未央さんは、縁結びの神様にお参りをしてきたんですか?」

「うん。してきたよー」

「まぁ、一応ね。おまじない程度だけど」

「そ、それって、もう好きな人がいるって事ですよね?」

 普段は物静かなレニィ君が珍しく、背伸びをして、俺の顔を見上げながら尋ねてきた。

 俺はミオに悪い虫がつかないように、って禁厭きんえんをかけてもらっただけだから、特に好きな人がいるわけではない。

 でも、ミオはお参りの時、思いっきり声を出して、俺と結婚できますようにってお願いしてたからなぁ。

 それから恋みくじの件もあったし。

 そのあたりから、俺もミオの事を彼女として意識するようになったのは事実なわけで、だとすると、やっぱり好きな人はいるって事になっちゃうんだろうか。

 何より、ミオとは以前に結婚の約束までしちゃったしなぁ。

 ただ、レニィ君にこの話をすると、俺とミオが普通の親子から、恋愛関係にまで発展している事をつまびらかにしてしまう事になるのだ。

 ただでさえ、ミオの親権を持つ俺がお兄ちゃんと呼ばれているのも不思議に思っているだろうに、お互いが愛し合っているなんて聞かされたら、この子たちがどんな反応を示すか分かったもんじゃない。

 なので、ここは当たり障りのない、至極しごく月並みな回答で茶をにごす事にした。

「えっと。俺は、素敵なお嫁さんをもらえますようにってお願いをしてきたんだよ」

「そうなの? お兄ちゃん」

「あ、そういやミオにはお願い事の内容を話してなかったっけね。ははは」

「お兄ちゃん、〝素敵なお嫁さん〟って誰の事?」

 しまった! せっかくレニィ君たちをごまかすべく言い訳をつくろったのに、事態はむしろ、厄介な方向へと進みつつある。

 この話をする前に、あらかじめミオと示し合わせておけばよかった。

「いや、その、誰っていうか……」

 言葉に詰まり、ほとほと困り果ててしまった俺は、ミオと目を合わせ、高速でウインクする。

 今、ここで俺とミオの恋人関係を打ち明けるのはまずいんだ。

 頼む、このアイコンタクトで伝わってくれ!

「……あっ! そっか。今、探してるってお話なんだよね?」

「そ、そうそう! 今の俺は、嫁さん探しの真っ最中なんだよ」

「なるほどー。柚月さんは、いつかはお嫁さんが欲しいって意味でお参りしたんですね」

「うん。分かってもらえてよかったよ」

 ふぅ、何とか急場はしのげたか。

「じゃあ、僕にもチャンスがあるのかな……」

「え?」

「ええっ!?」

 レニィ君の口からまさかの爆弾発言が飛び出し、俺とミオは思わず耳を疑ってしまった。
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