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32.イカ料理を食べよう!(10)

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 が、まだ十歳やそこらの女の子たちが、自分の胸の成長を案じているのは、一体どういう理由からなのだろうか。

 まだ性教育も受けていない子らとミオが、普段、学校でバストサイズについて、どんな話をしているのかは気になるところだ。

「で、その女の子たちは、大きい方が良いって言ってるの?」

「そだよ。大きい方が男の子にモテるんだって、里香りかちゃんが教えてくれたのー」

「里香ちゃんって、ミオが髪を切りに行く時に出会った子だっけ」

「そうそう。その里香ちゃんだよ」

 俺はあの時会った里香ちゃんをまじまじと見たわけではないので、あの子のバストサイズに関しては分からない。

 が、その里香ちゃんが言う「男にモテる云々」といった話は、たぶん子供ならではの独自ネットワークによる伝聞で広まったのだろう。

 男の子たちが、ゲームの攻略情報やウラ技を人づてに仕入れていたのが全国レベルの常識であったように、女の子には女の子らしい情報網が存在するのだと思われる。

 ショタっ娘であるミオは、どちらかと言うと女の子たちとの仲がいいみたいなので、学校でそういう情報や噂なんかを難なく教えてもらえたのだろう。

 そりゃ確かに大きい方がいいけどさぁ、バストサイズだけで男の気を引けるわけじゃあないって事を知っておいて欲しいよな。

 いくら外見が百点でも、肝心の性格がゼロ点だったら、俺はその子とは付き合えないから。

「ねぇお兄ちゃん」

「何だい?」

「ボクも胸、大きくなれるかな?」

「な!? い、いやぁ、それはちょっと無理じゃないかな」

「えー。どうして?」

 ハッキリ無理と答えたのがよほどショックだったのか、ミオは悲しそうな顔で俺を見上げてくる。

「ミオが男の子だからだよ。男の子は女の子と体のつくりが違うから、大きくなっても、大人の女性みたいに、胸は膨らまないんだ」

「そうなんだ。がっかりだなぁ」

 まだ性教育を受けていない子供でも理解できるよう、発育について分かりやすく説明すると、先程言ったような事になる。

 しかし、その説明を受けたミオは納得するというより、シュンとした様子だった。

「ミオ、そんなに大きくしたかったの?」

「うん。だってその方が、お兄ちゃんに喜んでもらえるかもって……」

 そうか。ミオも、クラスメートの女の子たちの間でまことしやかに囁かれている〝あの噂〟を信じていたんだ。

 つまりミオは、自分が大好きな人を喜ばせたくて、胸の発育に期待を寄せていたって事になる。

 だとしたら、シュンとするのも合点がいく話だ。何しろ、俺がさっきの発言をした事で、ミオの夢を壊してしまったのだから。

 でも、その場しのぎのウソをついてぬか喜びさせるのも、それはそれで、里親のあるべき姿として正しくないと思うしなぁ。

 この状況下でどうするのが最善なのかは分からないが、とにかく俺は、ミオに、今の自分の正直な気持ちを伝える事にした。
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