上 下
360 / 784

40.夏祭りを控えて(1)

しおりを挟む
 自宅マンションの裏にそびえる低山には、大昔に建立された、主に五穀豊穣の神様を祀っている嘉良詰からつめ神社がある。

 その神社では毎年八月になると、納涼祭を催すのが恒例行事になっていて、開催日は、八月初めの週の土日のみと定められている。

 休日期間内のお祭りという事もあり、毎年その二日間は、敷地内外がたくさんの人でごった返し、大賑わいを見せるのだそうだ。

 もちろんその大賑わいには、その日が晴れてさえいれば、という条件が付く。それは即ち、雨天では決行されないという事である。

 よって、少しでも雨が降ろうものなら、その時点で催しは中止となり、せっかくのお祭りがお流れになってしまうのだ。

 そんな納涼祭の初日を明日に控えた金曜日の夜。俺とミオは、自宅のリビングで作戦会議に当たっていた。

 その議題はもちろん、自分たちではどうにもできない天候の事である。

「まいったな。明日からの予報を何度更新しても、傘マークが消えないぞ」

「お兄ちゃん。テレビの天気予報でも、『土日は急な雨が降るおそれがあります』だって」

「そっか。んー、どうにもタイミングが悪いな……」

「ね。せっかくお祭りに行けるかなって思ってたんだけど、残念だなぁ」

 ソファーでテレビから情報を集めていたミオが、頭の後ろで腕を組み、背もたれに体を預ける。

 そういや、この間行ったリゾートホテルでも、宿泊前日と初日の夜は雨が降っていたよな。

 もはや、間が悪いどころの話ではない。どうしてここぞという場面で、俺たちは悪天候に見舞われてしまうんだろうか。

 俺が仕事中、雨に降られるだけなら好きにしてくれればいいけど、明日からの二日間は、ミオのお祭りデビューがかかっているんだぞ。

 そのために、デパートまで足を運んで浴衣を買いに行き、着付けの練習を何度も繰り返してきた。

 それが、たったの二日間雨模様になるだけでフイになるだなんて、あまりにも無慈悲すぎやしないか。

 こんな事は考えたくないけど、やっぱり俺が縁結びの神社で引いた、あの末小吉が今日こんにちまで響いているのかなぁ。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【本編完結】旦那様、政略結婚ですので離婚しましょう

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:5,928pt お気に入り:6,975

待ち遠しかった卒業パーティー

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,879pt お気に入り:1,291

王子様と僕

na
BL / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:15

秘密の男の娘〜僕らは可愛いアイドルちゃん〜 (匂わせBL)(完結)

Oj
BL / 完結 24h.ポイント:63pt お気に入り:8

あやかしの花嫁になることが、私の運命だったようです

キャラ文芸 / 完結 24h.ポイント:63pt お気に入り:77

処理中です...