435 / 871
43.ロングドライブの果てに(5)
しおりを挟む
「えっと……」
俺の解説で何かに気付いたミオが、次なる質問を投げかけようとしたのだが、突如として言い淀んでしまった。
おそらく、今さっき飛び出した、あのキーワードが心に引っかかるのだろう。
ただ、このまま質問を続ければ、俺の食事の手を止めてしまいかねない。心優しいミオのことだから、それが申し訳なくて、とっさに言葉を飲み込んでしまったのだと思われる。
その優しさはとてもありがたいんだが、俺たちはもう立派な恋人同士なんだから、そんなに気を遣わなくてもいいんだよ。
「言いたいことは分かるよ。何でゴールデンタイムって呼ぶのか、その理由を知りたいんだろ?」
「うん。でも、ずっと聞いてばっかりじゃ悪いかなって思って……」
「はは。いいんだよ、気にしなくて。俺もミオとお話しするの楽しいからさ」
その言葉を聞いたミオは控えめな笑みを浮かべたが、まだどこか、遠慮しているようにも見える。
こういう場合は俺が率先して、話を続けてあげた方が、ミオも少しは気が楽になるだろう。
「要はタイムが付く場合の、ゴールデンの意味だよな。日本語訳は、さっきミオが言った通りで黄金になるんだけど、実を言うと、その語源まではハッキリとしていないんだ」
「そうなの? じゃあ、ゴールデンの意味も分かんないよね」
「確かにね。ただ分かっているのは、日本のテレビ業界では、夜の七時から十時までがゴールデンタイムに設定されてるって事だな」
実は、この時間帯の別名として「ゴールデンアワー」なる用語もあるのだが、今ミオが尋ねているのは、「一体何がゴールデンなのか」であるわけだし、新しい単語が飛び出したところで、ますます混乱のタネになるだけだから、あえて黙っておく事にした。
「とにかくその時間帯は、皆家に居て、テレビを見る割合が高かったんだ。だからゴールデンタイムは、CMを流すのにてき面なんだよ」
「ふーん。て事は、CMでアピール、ピーアール? あれ? どっちだっけ」
「まぁ、どっちでも意味合いは似たようなもんだな。とにかく売りたい商品の宣伝を、テレビを介してよく見てもらえるから、ゴールデンタイムにCMを打つのは企業にとって大切な事なのさ」
盆休みにおける渋滞の話に始まり、ゴールデンウィークを経て、ついに放送用語にまで話が広がってしまったが、不思議と疲れは感じない。
頭の柔らかいミオが目を輝かせながら、雑学をどんどん吸収して賢くなっていく。俺はその手応えを、心のどこかで楽しんでいるのかも知れないな。
俺の解説で何かに気付いたミオが、次なる質問を投げかけようとしたのだが、突如として言い淀んでしまった。
おそらく、今さっき飛び出した、あのキーワードが心に引っかかるのだろう。
ただ、このまま質問を続ければ、俺の食事の手を止めてしまいかねない。心優しいミオのことだから、それが申し訳なくて、とっさに言葉を飲み込んでしまったのだと思われる。
その優しさはとてもありがたいんだが、俺たちはもう立派な恋人同士なんだから、そんなに気を遣わなくてもいいんだよ。
「言いたいことは分かるよ。何でゴールデンタイムって呼ぶのか、その理由を知りたいんだろ?」
「うん。でも、ずっと聞いてばっかりじゃ悪いかなって思って……」
「はは。いいんだよ、気にしなくて。俺もミオとお話しするの楽しいからさ」
その言葉を聞いたミオは控えめな笑みを浮かべたが、まだどこか、遠慮しているようにも見える。
こういう場合は俺が率先して、話を続けてあげた方が、ミオも少しは気が楽になるだろう。
「要はタイムが付く場合の、ゴールデンの意味だよな。日本語訳は、さっきミオが言った通りで黄金になるんだけど、実を言うと、その語源まではハッキリとしていないんだ」
「そうなの? じゃあ、ゴールデンの意味も分かんないよね」
「確かにね。ただ分かっているのは、日本のテレビ業界では、夜の七時から十時までがゴールデンタイムに設定されてるって事だな」
実は、この時間帯の別名として「ゴールデンアワー」なる用語もあるのだが、今ミオが尋ねているのは、「一体何がゴールデンなのか」であるわけだし、新しい単語が飛び出したところで、ますます混乱のタネになるだけだから、あえて黙っておく事にした。
「とにかくその時間帯は、皆家に居て、テレビを見る割合が高かったんだ。だからゴールデンタイムは、CMを流すのにてき面なんだよ」
「ふーん。て事は、CMでアピール、ピーアール? あれ? どっちだっけ」
「まぁ、どっちでも意味合いは似たようなもんだな。とにかく売りたい商品の宣伝を、テレビを介してよく見てもらえるから、ゴールデンタイムにCMを打つのは企業にとって大切な事なのさ」
盆休みにおける渋滞の話に始まり、ゴールデンウィークを経て、ついに放送用語にまで話が広がってしまったが、不思議と疲れは感じない。
頭の柔らかいミオが目を輝かせながら、雑学をどんどん吸収して賢くなっていく。俺はその手応えを、心のどこかで楽しんでいるのかも知れないな。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話
あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ハンター ライト(17)
???? アル(20)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後半のキャラ崩壊は許してください;;
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる