463 / 871
45.一家団欒(6)
しおりを挟む
「じゃあ、俺たちひとっ風呂浴びてくるから。行こう、ミオ」
「はーい!」
「二人とも、ボディソープとシャンプーを間違えないようにねー」
*
――およそ一時間後。
風呂場で体を洗い、湯舟に浸かって内側から温まってきた俺たちは、洗面所、兼脱衣所にあるバスタオルで念入りに体を拭き、ドライヤーで髪を乾かした。
お袋は、俺たちが風呂から上がったのを物音で察したらしく、閉まった洗面所にやって来て、戸口越しに声をかけてくるのだった。
「汗拭き用のタオルを持って出るようにね」
いかに適温とは言え、そこそこ熱い風呂に浸かってきて芯から温まった体は、熱を冷まそうとして汗を流す。
で、その汗をほったらかしにしておくと、衣類を濡らしてしまうし、ひいては湯冷めをして、それが風邪を引く原因にもなりかねない。
だからこそ、特に夏場の風呂上がりは、吹き出る汗をこまめに拭く必要があるのだ。
もちろん、ただ汗を拭うだけでは体がカラッカラになってしまうため、適度な水分補給も忘れてはならない。
ということで俺たちは、各々の汗拭きタオルを首に下げ、クールダウンのために冷蔵庫へと直行した。
「お。あったあった、お袋手作りの麦茶だ。ミオも飲み物は麦茶でいい?」
「うん。ボク、麦茶大好きー」
「そっかそっか。それじゃあ、クーラーの利いた居間で、よく冷えた麦茶をいただくことにしよう」
居間のテーブルに麦茶のボトルを置いた俺は、食器棚から二人分のグラスを確保し、なみなみと注いでいく。
「んん? ねぇお兄ちゃん。この麦茶、いつもお家で飲んでる麦茶と色が違うね」
「お、さすが。目ざといじゃん。お袋が麦茶を作る時は、ヤカンに麦の粒を入れて、しばらく煮立たせるんだよ」
「麦の粒?」
「そう。まぁ要するに、大麦の種子……分かりやすく言うとタネだな。そのタネを、自分が決めた量放り込んで、濃い味が出るまで煮立たせたら、ちょうどこんな色になるのさ」
「煮立たせるのって、どのくらいかかるの?」
「え。えーと、俺もただ飲んでただけだからよく知らないんだけど、たぶん約十分くらいじゃないかな」
「そうなんだ。麦茶をおいしく作るのも大変なんだね」
自分のうろ覚えな知識を披露した後の、ミオの何気ない一言によって、俺は今更ながら、この麦茶作りに、相当手間暇がかかっている事を再認識させられた。
まるで自分の功績であるかのように説明してはいるが、ここまでたどり着いて極上の一品に仕上げたのは、誰あろうお袋本人なのである。
「はーい!」
「二人とも、ボディソープとシャンプーを間違えないようにねー」
*
――およそ一時間後。
風呂場で体を洗い、湯舟に浸かって内側から温まってきた俺たちは、洗面所、兼脱衣所にあるバスタオルで念入りに体を拭き、ドライヤーで髪を乾かした。
お袋は、俺たちが風呂から上がったのを物音で察したらしく、閉まった洗面所にやって来て、戸口越しに声をかけてくるのだった。
「汗拭き用のタオルを持って出るようにね」
いかに適温とは言え、そこそこ熱い風呂に浸かってきて芯から温まった体は、熱を冷まそうとして汗を流す。
で、その汗をほったらかしにしておくと、衣類を濡らしてしまうし、ひいては湯冷めをして、それが風邪を引く原因にもなりかねない。
だからこそ、特に夏場の風呂上がりは、吹き出る汗をこまめに拭く必要があるのだ。
もちろん、ただ汗を拭うだけでは体がカラッカラになってしまうため、適度な水分補給も忘れてはならない。
ということで俺たちは、各々の汗拭きタオルを首に下げ、クールダウンのために冷蔵庫へと直行した。
「お。あったあった、お袋手作りの麦茶だ。ミオも飲み物は麦茶でいい?」
「うん。ボク、麦茶大好きー」
「そっかそっか。それじゃあ、クーラーの利いた居間で、よく冷えた麦茶をいただくことにしよう」
居間のテーブルに麦茶のボトルを置いた俺は、食器棚から二人分のグラスを確保し、なみなみと注いでいく。
「んん? ねぇお兄ちゃん。この麦茶、いつもお家で飲んでる麦茶と色が違うね」
「お、さすが。目ざといじゃん。お袋が麦茶を作る時は、ヤカンに麦の粒を入れて、しばらく煮立たせるんだよ」
「麦の粒?」
「そう。まぁ要するに、大麦の種子……分かりやすく言うとタネだな。そのタネを、自分が決めた量放り込んで、濃い味が出るまで煮立たせたら、ちょうどこんな色になるのさ」
「煮立たせるのって、どのくらいかかるの?」
「え。えーと、俺もただ飲んでただけだからよく知らないんだけど、たぶん約十分くらいじゃないかな」
「そうなんだ。麦茶をおいしく作るのも大変なんだね」
自分のうろ覚えな知識を披露した後の、ミオの何気ない一言によって、俺は今更ながら、この麦茶作りに、相当手間暇がかかっている事を再認識させられた。
まるで自分の功績であるかのように説明してはいるが、ここまでたどり着いて極上の一品に仕上げたのは、誰あろうお袋本人なのである。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話
あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ハンター ライト(17)
???? アル(20)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後半のキャラ崩壊は許してください;;
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる